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第5話
「あのね、何?あんたが俺のモノってどういう意味?」
俺は俺の指をしゃぶりうまそうに舐めている男に奮えながら聞く。
舌が唇が歯がヤらしく俺の指をしごく。
まるでまるで、性器をそうしてるんじゃないかというヤらしさで。
「そのままだ。オレの全部がお前のモノだ。オレの金も命も、勿論身体もだ」
男は唾液が糸を引くまま、指から唇を離してそう言ったが、また俺の指を愛撫することに夢中になってる。
指の股まで舐められて、おかしな気分になってる。
いやいやいやいや!!!!!
「要らないから!!!」
俺は絶叫した。
要らない。
要らない。
こんな男、要らない。
昔話みたいに助けた動物が可愛い女の子になって現れて「あの時助けで頂いた・・・」みたいなことならともかく、タトゥーだらけのデカい男は要らない!!!
心からの叫びだった。
「ダメだ」
男は俺にキスするほど顔を近づけて言った。
オレンジ色の瞳に見据えられて、身動きができなくなる。
野生動物に威嚇されてるみたいだった。
恐怖で身体が硬直していた。
ええ?
拒否できないの?
この恩返し!!
「オレの全部はお前のためにある。受け取れ」
男は椅子から腕を伸ばし、俺を抱きしめる。
デカい男の身体は俺を包み込む。
俺はそれほど大きいわけではないが、小さいってわけでもないのに!!
いやいやいやいやいやいやいやいや
そういう問題じゃない。
「要らない要らない要らない要らない要らない!!!」
俺は絶叫した。
看護士さん達が飛んできて、でも男を見ると凍りつき、ドアからは入ってこない。
だよね。
だよね。
怖いよね。
「オレはお前を守り抜く」
男は低く甘く囁いてくる。
硬直している俺の背中を撫でながら。
「守ってくれなくてもいいです。俺にはそんな敵はいません!!」
半泣きで訴えるが聞いてくれない。
俺を何から守るの?
あんたみたいな男に守ってもらわないといけないような人生おくってません。
頭のてっぺんに音を立ててキスされた。
顎をつかんで顔を上に向けさせられる。
「誓いのキスだ」
男は言った。
「そんな誓い要らないし、キスする必要性全く感じないんですけど」
俺は必死で言い募る。
嫌。
やめて。
実は俺、超奥手でキスも女の子としたことないんだよ。
「お前だけだ。オレがそんなもの言い許すのは」
男が笑った。
笑った顔が意外と幼くて驚いた。
もしかしたら同じ年頃なのかも?
いやいやいやいやいやいやいやいや
そんなこと考えてる場合じゃあ・・・
なんでキスされないと・・・
「やめてぇ!!」
俺の抵抗も虚しく、俺は凍りついた看護士さん達の目の前で男にキスされたのだ。
しかも、舌までねじ込まれ、唾液まで飲まされたのだった。
熱い舌が俺の口腔を貪るのを俺は呆然と受け入れていた。
いや、苦しくて。
息が。
息が出来ない!!
警備が来て、来たところで男を見て凍りついてしまったところで、やっと男のキスが終わり、男は俺を抱きしめてから離れた。
「オレはお前のものだ。絶対に離れない」
男の宣言は死刑宣告のようなものだった。
人を助けてストーカー。
恩返しじゃなくてストーカー。
許して!!!!
俺が感じたのは恐怖だった。
「要らない!!要らないからぁ!!」
俺は叫んでいた。
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