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第11話

 「これは何だ」  俺は言ったのだ。  消し炭と消し炭とプラスチックみたいに硬いご飯。  目の前にあるものがわからなかった。  「朝飯だ」   男は胸を張って言った。  どこから持ってきたのか、エプロンまでつけていた。  そして、室内着らしきスウェットを着ていた。  サイズ的にあきらかに俺のモノではない。  男は明らかに着替えや何やらをこの家に持ち込んでいるのだ。  「これが朝飯?」  俺は呟く。  やはり言葉の意味がわからなかった。    何度となく、指や口で射精させられ、気を失うまでイカされた俺が目覚めた時、一人布団で寝ていた。  枯れた喉。  弄られすぎて腫れて疼く乳首。  もう擦られすぎて痛い性器。  身体中に残された歯形や吸い痕の疼痛。  夢だったなんて思えない現実があった。  俺は頭を抱える。  記憶は鮮明だった。  最後は叫ばさせられていたのだ。  頭の中までぐしゃぐしゃにされて。  「イクっ・・・シてぇ・・・もっと・・・」  俺は俺のを咥え、喉の奥までつかってしゃぶる男の頭を抱えて、腰を振っていたのだ。  男に飲まれて、飲まれた後もしゃぶられ続けて。  玉まで吸われなめられた。  手でもいっぱいされた。  乳首を吸われながら、性器をしごかれ、先の弱いところを擦られた。  同時に責められたら、わけわかんなくなって、叫び続けていた。  「気持ち・・・イイ・・イイっ!!」  「・・・好きぃ」  「吸ってぇ」   「こすって・・・」  「飲んでぇ」  色々言わされた。  イカせて欲しくて何でも言った。  ・・・これ以外にも、絶対に思い出したくないような言葉も。  精液を何度も吐き出し、  潮とやらも・・・出してたのだ。    ああっ  俺は思わず声を出す。  忘れたい。  忘れられそうもないけど。  あいつはどこへ行ったのだそう思った。  突然現れたように突然消えてくれたのか、と期待した。  だけど、台所で物音がしていたから、絶望した。  そしてよろよろと布団からおきあがった。  男は俺を風呂に入れて、布団を敷いて寝かせていた。  布団の場所や寝る部屋も把握されていることに怯えた。  俺がいつも敷く場所に布団はきっちり敷かれていたのだ。  部屋の壁側にきっちり合わせて。  襖側でも、真ん中でもなく。  そして、少し窓が少し開けてあった。  一階の窓を開けるのは不用心かな、とおもいながらも、窓を少しだけ開けて寝ているのだ俺は。  いつもの通りだった。  なんでアイツが知ってるのかわからない、俺のいつもの通りの夜の寝方だった。  もう泣きそうになる。  いつからどこまで俺の生活把握されてんだ?  友人達の名前まであの男は知っていたんた。  部屋を出て台所へ向かう。  少なくとも俺は今、縛られたりしてない。  行動を制限されはしていないのだ、一応。    散々性器から色んなものを出した台所の前の部屋は綺麗にされていた。  ここでされたことを思い出して俺は泣きそうになる。  いや。  まだ、最後まではされてない。  最後までは。  男のいう通りなら、あんなのキスと同じようなもん・・・  そんなこと思えるわけがないだろ!!  俺はイラつきながら台所への戸を開けた。    「起きたのか」  コンロの前で何かを煮えたぎらせている男が振り返った。  満面の笑みだが、その顔半分には赤いタトゥーがのたうちまわっている。    やっぱり、慣れない。  引いてしまう。  そして、何煮てんの?  どす黒い、何か。  毒薬か何かか?  そして、テーブルの上の皿には、2つの消し炭。  茶碗には見るからにプラスチックみたいに固そうなご飯が入っていた。  男は煮えたぎる毒薬をお茶碗についだ。  めちゃくちゃ不器用そうに。  だから俺は言ったのだ。  「これは何だ」と。  そういうわけで、俺は目の前にある消し炭とプラスチックと毒薬を途方にくれながら見つめていた。  朝食ってこんなのじゃない。  男は椅子までひいてくれた。  思わず座ったが、いや、これ、違う。  「朝飯は和食が好きなんだよな」    男は言った。  そうだ。  でも、これは和食じゃない。  あるものか。  そう思った。  男は嬉しそうだった。  人の家に不法侵入して、あげく無理やり押し倒してあれこれしまくった男がする顔じゃなかった。  めちゃくちゃドヤ顔だった。  子供が誉めて欲しそうな顔だった。  飼っていた犬は猫みたいなところがあって、俺に捕まえた獲物、鳥やら、ネズミやら、虫やらを持ってきた。  その時の顔に似ていた。  「ほら、食べろ。オレがエサをとってきてやったぞ」みたいな顔を犬はしたんだ。  そんな時にでも犬に怒れなかったんだ俺は。  犬に礼を言ってそっと、それらを始末してたんだ。  拒否できなかった。  箸まで渡されて。  俺は喰った。  その炭とプラスチックと毒薬を。  喰ってしまった。    冷蔵庫にあるもので作ったんなら少なくとも、原材料は食料であるはずだ。  なら、死にはしない!!    最初の数口を我慢したら、味覚が麻痺してなんとかなった。  一口ごとに頭痛はしたけれど、舌はしびれたけれど。    「おかわりもあるぞ」  と言われて、もう一杯毒薬と消し炭とプラスチックを用意された瞬間。  俺は気絶した。  ブラックアウト。  人間には限界がある。  快楽であれ、味覚であれ。  過ぎたものは駄目なのだ。  俺はそれを学んだのだった。                  

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