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第14話

 男が触ってくるのは風呂だけではなかったりする。  スケジュールは何故か完全に把握されていて、次の日はバイトが休みの日、そして、親友の内藤と遊びに行く前の日は布団の中でも触られた。  風呂から出て、俺の髪をドライヤーで乾かした後、布団まで運ばれてしまう。  「やめろって」  そう言っても止めない。    風呂で散々されて敏感になった性器や、何故かすっかり感じるようになってしまった乳首を、ヤらしいとしか言いようのない指使いで触ってくるのだ。  ホント、ヤらしい。  なんであんな風に触れるんだ。  張り付くように手のひらを、密着させ、指先が複雑にねっとりと動くんだ。  「ヤダって・・・やだぁ」  そう言いながら、俺はその手に性器をこすりつけるように腰を動かしてしまっている。  それに、風呂では乳首とかは触ってこないから・・・布団でする時はその・・・。  その・・・。    したくなっちゃうんだよ!!  俺だって知らなかったよ。  乳首が気持ちいいなんて。  知りたくもなかったよ。  恐ろしいぞ。  俺はここだけでイけるようにされてしまったんだからな!!  気付けば着せられていたパジャマは脱がされて、汚れないように防水シートがしかれた布団の上で喘がさせられている。  俺は必死で口を塞ぐ。  この家の壁は紙並みに薄い。  隣の家の婆ちゃんに男に抱かれて上げる声なんか聴かせるわけにはいかない。  「声殺して感じまくって・・・可愛くてしかたねぇ」  男が甘く低い声で囁いてくる。    それが背中をゾクリとさせて、前から零してしまう。  それを見て男がうれしそうに笑うのがムカつく。    涙目で睨みつけても、男は笑うだけだ。  でも、男が胸にキスをしても逆らわない。    して欲しくなってしまっているから。  男がこの乳首にすることが気持ちよくてたまらないから。    舐めて欲しい。  火傷するような舌で。  与えられる。  吸って欲しい。   いやらしい音を立てて。  甘く疼痛で痺れるまで。  与えられる。  噛んで欲しい。  痛みの手前。  そして、痛みが残るまで。    与えられる。  焼かれるように熱い手のひらで脇腹や脚を撫でられ、喉や肩も甘く噛まれる。  印のように残る吸った跡や歯形。      それを刻まれる甘さ。  優しい行為だった。  声をなんとかガマンできる程度の。  でも、我慢して我慢するから。  たまらなく気持ちが良くもあった。  時折意味ありげに、後ろの穴を撫でられたけど、そこは首を振った。  絶対にダメだと。  男は名残惜しそうにそこから指を離す。  「ゆっくり待つさ。オレは純情なんだ。本当にお前の物になるにはまず心が通じ合わないとな」  男が本気で言ってくる。  俺、もう身体から籠絡させられてるんですけど?  快楽に負けてお前の好きにさせまくってますけど?  心より身体が負けちゃってるんですけど?  でも、この男なりに【純愛】しているつもりなのは解ってきた。  これだけ、俺をトロトロにしてしまう男なら、なし崩し的に最後までしてしまうのは簡単だと思うからだ。  少なくとも、男にとって挿入しないで、俺をイかせたり、一緒に擦りあってイク行為は・・・あくまでもコミュニケーションの範囲であり、セックスではないのだ。  「痕、つけるなぁ」  オレは声を殺して囁く。    明日親友の内藤と遊びに行くのに、これじゃ帰りにスーパー銭湯に寄って帰れない。    「他のに出し抜かれるわけにはいかないからダメだ。オレがいるってことを示しておかなければ」  首元を派手に吸われた。  よその犬と遊んだ後、家に帰ったら犬が不機嫌になって俺の身体に身体をこすりつけてきたのを思い出す。  マーキングされてる・・・。  吐息が出た。  甘くて切ない痛みだ。  「オレだけにしろよ・・・オレはお前を気持ち良くできるし、何でもする」  男のオレンジ色の瞳が揺れる。  そこで気づくわけだ。  このセックスではないらしい行為は(男にとっては)、男にはこんなに俺に尽くせますよ、お得ですよ、というアピールなのだ。  本人は一生懸命自分の良さをアピールするために、俺を押し倒して喘がせているわけだ。  ・・・・・・・そんなの、わかるか!!!  怒鳴りそうになった。  が、声を殺す。  内臓を舐められるような熱さ。  へそ舐められるのが気持ちいいなんて・・・知らなかった。  んっ  ふぅっ  んっ  俺は声を殺しながら感じまくった。    最後は男がキスで唇を塞いでくれて・・・二人でイったのだ。  もう朝方だった。  そして、俺はまた内藤と遊ぶ約束をキャンセルさせられたのだった。  男の企み通りに。  ・・・・・・なんとかしなければ!!        

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