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第24話

 まあ、こうなるとわかっていた。  玄関の古い戸を開けた瞬間、中に引きずり込まれて、分厚い胸に抱き寄せられた。  「玄関開いて・・・」  咎め終わる前に乱暴にドアが閉められ、鍵がかけられる。  築70年の長屋の玄関は広い。  昔は土間で竈もあったらしい。  今はタイルを貼っている、その玄関に押し倒された。    顎を掴まれ、開けられた口に熱い舌がねじ込まれた。  息が出来ないくらいむさぼられる。  熱い舌。  熱い唾液。   飲まされる。  長い舌が上顎のソコを舐めまわすと、喉から変な声が出てしまう。  こんなところが気持ちいいなんて・・・この男にそうされるまで知らなかった。  上からのしかかり、口の中を舐めまわす男を押しのけようとしたが、当然びくともしないし、男の手がシャツの下から胸を撫で回して始めたなら、また身体が反応して、震えてしまった。  「やめ・・」  顔を反らして止めろ、と言おうとすれば、口を塞がれ、舌を甘く噛まれる。  黙らせるように。  噛まれたら、勃起した。  甘く痺れてしまう。  何でこんなとこと、俺のチンポは連動してんの?  口と下だぞ。    メチャクチャ離れてるだろ!!  舌を吸われ、乳首をつままれ、ズボンの上から性器を擦られた。  毎日のように男の手でイカされていたのに、この一週間ほどしてなかったから。  我慢出来ない位気持ち良かった。  拒否の言葉の代わりに、小さく喘いだら男の指がズボンを下ろして性器を掴みだした。  もう、ダメだった。  抵抗できない。  男の指はいやらしい。  先の穴ところを親指でくじり、それからしごき、玉までもまれる。  もう濡れて、男の指が動くたび、いやらしい音がしている。  乳首も押しつぶしたり、摘まんだり、まわしたり、指先で弾いたりしてくる。  芯を持ってこんなところが勃ちあがるなんて、男にされるまで知らなかった。  その芯を苛められる快楽も。  舌が吸われ、甘く噛まれるのが、頭がジンジンする程気持ちいい。    男の味のする唾液を飲み干す。  腰が揺れていた。  男の首に腕を回していた。    男が口を口で塞いでくれたから、男の口の中に声を零して、俺は簡単にイってしまった。  たっぷりと出た精液は俺と男の服や手をよごした  「自分でしてなかったのか?沢山でたな」  男が耳元で囁く。  声は困ると言うことは教え込んでいるから、小さな声で。  でも、イったばかりの身体にその低いバリトンボイスでの囁きは、思わず震えてしまうほどヤバい。  「風呂のドアの前でお前が張り付いてるし、寝る時だってお前が離れないからだ」  俺はひさしぶりの射精の気持ち良さと、それを男にされたことの苛立ちに、怒りと安堵が混じったようになって、男を睨む。  「オレはいいだろ?オレが一番気持ち良くしてやれる」  男の目は俺を食い入るように見つめてくる。  男はいつものように、ハーフパンツとTシャツ姿だ。  オレが家の中ではいつもそうだから、どこで買ってきたのか知らないけど、オレのと似たようなのを買って着てる。  サイズ違いで俺にも同じのを買ってきてたから、まあ、なんかオレも着てる。  おそろいの部屋着って、なんかアレなんだけど。  でもせっかく買ってくれたんだしと思って。  男は出したばかりの俺のチンポに、服の上からでもエグいことになってるのがわかる男のそれをこすりつけてきた。  ガッチガッチのでっかいそれを。  俺は呻く。  ずっと最後には男のと俺のを擦りあわせてイかされてたから、男のそれは俺にはもう気持ちの良いものだと身体が覚えてしまっている。    「オレが一番だ。オレが。オレが」  擦り付けられて、腰を揺らしてしまう。  ずっとしてなかったから、一度じゃ足りない。  色々あって疲労困憊しているはずなのに。  ダメだ。  触られたら。  もうダメだ。  それで気づく。  この男はいくらでも、俺を押し倒せたわけだ。  俺はもう、この男に身体を完全に慣らされてしまっているわけで。  始めてしまえば、拒否できなかっただろう。  俺は、結局この男がくれる快楽が好きなわけで。  でも。  男は今日までそうしなかったのだ。  「オレが助けたのに。オレにはありがとうって言わない。オレのが色々できるのに。内藤には言うのに」  男がさらにゴリゴリとこすりつけて囁いてくる。  ああ、硬いこれで擦られるの好き。  気持ちいい。  俺は自分から腰を振る。  服越しじゃ嫌だ。   男のズボンをずらしたい。    濡れてて熱くて、堅いそれとあわせて、擦りあわせて欲しい。  「しかもあんなやつには自分から抱きつくのに」  男は俺の耳を噛みながら小さな声で言った。  ああ、噛まれんのも熱い息も、身体にくる・・・。    ん、ちょっとまて。  快楽に負けまくってる脳が違和感のアラートを出した。  もっとしたい気持ちより、ちょっと待てが勝った。  俺は男の顎を掴んでこちらに向かせた。  怒ったような、拗ねたようなオレンジ色の目が俺を見下ろす。  炎のような記号のような顔半分にあるタトゥーより、その目は燃えるようで、いつもなら見つめられてたら、こちらの身体も燃えるみたいになるけど、今、俺の頭は氷のような疑問でクリアになってる。  「何で、お前俺が内藤にありがとうって言ったの知ってんの?しかも、抱きついたりはしてないけど、肩に腕回したのとか知ってんの?」  俺は男に聞いた。  男は動けないように固定された顔の中の目だけを逸らした。  気まずそうに。  犬が俺を行かせたくなくて、靴を隠した時のリアクションと同じだった。  コイツ。  コイツ。  どうやってだかわからないけど、俺と内藤の 電車内での会話を聴いて(盗聴?)たし、どうやってだかわからないけど、視て(監視?)やがった!!  内藤と電車の中で感じた悪寒の意味がわかった。  内藤に礼を言って肩に腕を回した事に、コイツが嫉妬していたのだ!!  どこにいた!!  あの車両には俺達しかいなかったぞ!!    「オレのが、オレのが・・・アイツより色々してるしできる!!」  男は拗ねたように唇を尖らせた。  この、この、ストーカー野郎!!    

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