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第26話

 丹念に身体を洗われ、髪を洗われた。  家事をするにはあまりにも不器用な男の指は、こんな時には優しく巧みに動く。  でも、洗われたいわけじゃなかった。  気持ち良いけど、そういうのが欲しいわけじゃなかった。  胸を苛めて欲しかった。  舌を吸って欲しかった。  男の堅いのとすりあわせて欲しかった。  欲しくて欲しくて勃起してるのに、男は優しく身体をシャワーで流すだけで。    してくれとは言えない。  言えるわけがない。  だけど、欲しくて。  「どこかもの足りないところはないか」  優しく聴かれるが、欲しいのはそれじゃない。  俺は焦れったさに泣きそうになる。    男は俺の顔を食い入るように見てる。  くそ!!  楽しんでるのか。  でも。  でも。    クソっ  欲しかったから、自分からキスした。  男の身体が驚いたように一瞬固まった。  だけど、次の瞬間、獣のように口の中を貪られた。   獣の唸り声。  そして、熱い舌。  熱い唾液。  男は俺を喰う。  強く舌を噛まれ、強く吸われ、息が出来ないほど口の中をあばかれた。   口の中のことなのに。  俺のアソコは濡れてる。  直接弄られたみたいに。    聞こえるのは自分の心臓の音と、男が唸る声だけだ。    「お前から、してくれた」  息があがって、ぼんやりしている俺の額と自分の額をこすりつけるようにして男が言った。  掠れる声は、小さく震えていて。    お前が意地悪するから、お前がそうさせたんだ、と言いたくなるのを止めた。  だって、コイツ泣いてるんだぞ。  初めて好きな子にキスされた純情少年だって泣かないだろ!!  でも。  なんか、なんか可愛くなってしまって。  男の首に腕を回した。  男がまた息をのんだ。  「欲しい、欲しいんだ」  男が呻いた。  そして、俺の後ろの穴をそっとなぞった  ずっと拒否してきたところを。  俺は身体を堅くする。  これは、ちょっと。   それは。  気持ち良いのは好きだけど。  「女なら穴でお前を気持ち良くさせられる。オレはお前が誰を抱こうと止めることなんか出来ない。オレはお前の物だから。でも、オレがお前を穴なんかに挿れるより遥かに気持ち良くできたら・・・お前、女のとことか行かなくなるかもしれないだろ、オレが一番気持ち良く出来るんだったら、内藤ともしないだろ」  男の指は性器と穴の間を何度も往復する。  そこの感触がメチャクチャ響く。  それはメチャクチャ気持ちよくて、漏れそうになる声を必死で手で塞ぐ。    こんなとこ、こんなに気持ちいいの?   だったら穴もすごいのかも、とか一瞬思ってしまった。  いや、そこは一線を超えてしまう!!  それに。  「内藤とはそういうのじゃない!!」  これを言うのは何回目なのか。  「オレがいい。オレにしろ。オレが一番・・・。お前に触れたい。お前の中に入りたい。お前の中に触りたい」  男は優しくまた穴を撫でた。    腰が揺れる。  もうビンビンに勃起してるそこをなんとかしてほしい。  「触るだけでいい。中に触らせて・・・指だけ」  男が囁いてくる。  また撫でられる。  そこじゃない。  触って欲しいのはもっと前のボタボタに零してるとこなのに。    「指だけ」  甘えるように言われて、耳を噛まれた。  「指だけ?」    俺は聞き返している。  やめろ、自分を止めようとした。  でも、もう欲しかったし、それに。  男がなんか・・・可愛かったんだ。  そんなはずがないのに。  「指だけだぞ・・・」  そう言ったのは確かに自分の声だったとは・・・思う。  そう。  俺は間違えた。  この男に関することでは常に間違えているんだ。  俺は。  男は目を輝かせ、舌なめずりをし、俺の下半身へ襲いかかったのだった。

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