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44.恋する幼馴染
奏汰 side
「ふん、ふーん、ふふーん」
部室で颯希と二人、今日出た課題を終わらせようとノートにペンを走らせていれば、鼻歌交じりにヒロ先輩が入ってきた。
そんなヒロ先輩の鼻歌を聞いてバッと顔をあげ、弾んだ調子で颯希が口を開く。
「あ!その曲って《探偵ですが怪盗です》の新OPですよね!?」
「お、流石颯希、よく気づいたな~」
「そりゃ分かりますよ。良い曲ですよね、その曲。確か歌ってるのが最近人気が出てきた2人組アイドルの……」
「冬桜(ふゆざくら)、ね。メインボーカルの陽仁(はると)とギターボーカルの柊真(とうま)の歌声がさーもう本当に良くて、歌詞もすごく本編とマッチしてるからついCD買っちゃったんだよね~」
「物凄くわかります!!え、て言うか裕先輩CD買ったんですか?!俺も買おうかな……」
「ん?だったら俺の家来る?」
「え?」
「CDくらい貸してやるよ」
「本当ですか?!」
「おう、そんで良かったら買えばいいしな」
「うわー!ありがとうございます!!」
「って事で、勿論奏汰も来るよな?」
「へ」
「俺の家」
俺を置いて盛り上がっている2人をボーッとながめていたら突然話を振られたので思わず変な声が漏れた。
そんな俺の様子なんて気にもせず
「よーし、じゃあ準備してさっさと行くぞ~」
「はーい」
なんて話がどんどん進んでいく。
テキパキとテキストを鞄に閉まっていた颯希が急に声をあげた。
「あ、でも急にお邪魔したら迷惑になるんじゃ……」
「あー大丈夫大丈夫、うち両親2人とも教師だからさ、今この時間だと誰もいないんだよね」
「え、裕先輩のご両親って学校の先生なんですか?」
「そそ。高校の国語の先生と大学の物理講師」
「へーすごいですね。片方だけでなく2人とも教師だなんて」
「まぁそんな珍しいもんでもないと思うけどね」
「いやいや、結構珍しいと思いますよ。少なくとも俺の知り合いにはいないですし」
「そうかぁ?まぁそんなわけで小さい頃は色々厳しくてさ、それで少しやんちゃした時代もあった的な、ね」
そう言って唇に人差し指をあててウィンクしたヒロ先輩のやんちゃと言う言葉に文化祭での健兄との会話を思い出した。
そう言えば健兄とヒロ先輩って知り合いだったんだっけ……
あの時は結局聞きたい事の数の割に何一つ尋ねることができないまま健兄は帰ってしまい、それから今まで疑問は解消されないまま日々は過ぎ去っていた。
ヒロ先輩と健兄がどこで知り合ったのか気にならないと言えば嘘になるのだがあの時のヒロ先輩の微笑みを思い出してしまい、己の好奇心は胸の奥に押しやった。
きっと多分聞いたら聞いたで後悔しそうだしな……
そんな風に心の中で1人納得していれば片付けが終わったヒロ先輩と颯希が鞄を持って部室を後にしようとしている所だった。
「てなわけで、今から家に来てもらっても全然大丈夫!」
「じゃあ早速行きましょー!ほら、そうちゃんも早く早く」
そんな颯希の言葉に急かされるように俺も机の上に広げていた筆記具を乱暴に引っ掴んで、鞄にしまいドアの方へ駆け寄った。
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