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46.恋する幼馴染

 奏汰 side 「おい、颯希大丈夫か?」 「へ?!な、なにが??大丈夫だけど?!」 「いや、声裏返ってるし、体震えてっし、思っくそ大丈夫じゃねーだろ」  俺達の目の前でぽんぽん話を進めたヒロ先輩に促されるままヒロ先輩の家を後にし、街中のカフェにやってきた。  そして店の外に出て行ったヒロ先輩を待つこと数分、携帯のバイブのように隣で震えている颯希に声をかけて見たものの返ってきた返事は全く大丈夫に思えず、  こいつ本当に大丈夫か?  と、再度心の中で呟く。  そんな俺の心配をよそに両手で顔を隠しながら颯希が言葉を捲し立てる。 「うぅぅぅ、だってだってだってあの龍先生に会えるとか何の奇跡かなって思うじゃん!?俺、前世でどんだけ徳積んだんだろ、え、て言うか俺今日死ぬのかな……」 「いや、死なねーだろ」 「分かんないじゃん!何でそんなにそうちゃんは落ち着いていられるわけ!?ファンじゃなくても超、超、ちょー有名人なんだよ!!緊張したりしないの?」 「いや、まぁ、同じ人間だろ」 「そうだったそうだった、そうちゃんはそう言う奴だよ」  そう言ってわざとらしくため息を吐く颯希にカチンときたが俺が何か言い返そうとした言葉は店の外から戻ってきたヒロ先輩と颯希の息をのむ音、そしてやってきた人物の疑問の言葉によって遮られた。 「けん、と?」 「え」 「違うよ、ほら前言ってたでしょ健斗の従兄弟の奏汰。俺の後輩」 「あー君が噂の従兄弟くんかー」 「もー、さっきも電話で言ってたじゃん。て言うか健斗何かより奏汰の方が可愛いし」 「確かにあいつが高校生の頃はもうちょい身長あったな」 「いや、そういう意味じゃないし」  そうやってのんびり繰り広げられる会話に思考が追い付かない。 「え、ちょちょちょ待ってください、健兄とはどうゆう関係で?」  絶対、本なんて読まない健兄に小説家の知り合い!?  え、何かの間違いじゃ……  なんて失礼なことを考えている俺に目の前の人物はにっこり微笑んで 「うん、健斗とはさ、高校の同級生なんだー。まあ親友ってやつかな」  なんて言った。 「あ、だからヒロ先輩とも知り合いだったんすね」  頭の中がパニックでも案外人間受け答えは普通にできるようで、ずっと疑問に思っていた謎が一つ解けたと、思わずポロリと言葉が零れた。 「あーまぁね」  そんな俺の言葉に目をそらすヒロ先輩を若干不審に思いながらもそれ以上の言葉は続かない。 「改めて、初めまして裕の兄の笹原龍です。いつも弟と仲良くしてくれてありがとう。裕って結構癖のある性格してるから、兄としてはちゃんと先輩として後輩と仲良くやっていけてるのか、心配だったんだけど君たちとの話を聞いていて、毎日楽しそうにしてるから安心してたんだ。これからもうちの弟と仲良くしてやってね」 「癖のある性格って……兄ちゃんに言われたくないし」  そんな言葉に慌てて立ち上がった。 「あ、松永奏汰です。こちらこそいつもお世話になってます」  そして龍さんが現れてから不気味なくらい静かな颯希の方へ内心こいつ大丈夫かな、と言う思いのまま視線を向ければ俺と同じように慌てて立ち上がった颯希が思いっきり机の角に足をぶつけた勢いのまま 「は、初めまして向井颯希です。裕先輩には本当にいつもいつもお世話になっていて。えっと、あのその、ファンです!!龍先生が出されている小説全て拝読させて頂いております!デビュー作の《鳥籠の中の僕ら》本当に素敵でした。読んでいて物語の世界に引きずり込まれるって言うか、主人公の気持ちの描写だけじゃなくて周りの人物一人一人の描写が丁寧でえっと、その、すごいなって!文章でこれだけのものを表現できるんだって、もう本当に大好きです!お会いできて本当に、本当に、光栄です!!これからもずっと応援しています!!!」  と、言い切った。  そんな颯希にびっくりするでもなく、朗らかに微笑んで 「あはは、ありがとう。裕が言ってたの本当だったんだね、こんなに熱量の篭った言葉を頂けるなんて作家冥利につきるよ。えっと、颯希くん?だっけ、応援ありがとう」  と言った。  そんな龍さんの言葉に感極まって泣きそうになる颯希を席に座らせ、とりあえず注文を聞きに来た店員に珈琲4つと頼むヒロ先輩を横目に小さくため息を吐き出した。

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