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6.恋する警察官
健斗 side
「おい昴、お前そのアザどうした」
俺と昴が知り合って半年が経ったある日、昴の腕に大きな痣が出来ていることに気がついた。
「別に、ちょっと転んだだけだよ」
そう昴は言っていたがそれから奴の身体には痣ができる頻度が増えていった。
「なぁ昴何か困ったことがあったら俺に真っ先に頼れよ」
「別に困ったこととか特に無いし......」
そう即座に言う昴の表情は嘘をついているような顔ではなく、俺はそれ以上何も言えなかった。
■□■
「は~」
「ため息もう3度目だよ。何?久しぶりの親友との飲み会が楽しくないってのかい」
「いや、そうじゃねえけど......」
「健が悩むなんてらしくないね、馬鹿なんだから悩むだけ無駄なんじゃない」
「おっ、まえなぁ……」
「俺は本当の事を言ったまでだよ?」
「意地が悪いな俺の親友は」
「お前の親友やってるくらいだからね」
そう言い酒を煽る目の前のこいつ
笹原龍(ささはら りゅう)は俺の学生時代からの親友もとい悪友であり、今最も売れている天才人気作家である。
純文学からラノベ、果てはBL小説等、とにかく幅広く活動をしており、本屋に行けばこいつの特設コーナーがある程の有名人。
デビューしてまだ3年、その間に映画化、ドラマ化、アニメ化、舞台化、とりあえず色々なメディアに引っ張りだこ。
そんな忙しい奴にダメ元で今晩飲みに行かないかと言ったところ即レスで行くと返ってきた時は驚いた。
「で、何悩んでんの?話聞くだけなら聞いてあげるよ。親友なんだからさ!」
「龍......」
「ネタにするけどね!!」
「お前ってそういう奴だよな、知ってた!!」
「ハハ、まぁ冗談半分本音半分ってことで、ほら」
「そんな事言われたらあまり気は進まねぇんだけど......」
そう言いつつも頼れる奴なんてこいつしか思いつかなくて、何だかんだ学生の頃から色々頼りになる龍に甘えて俺は昴の話をぽつりぽつり吐き出した。
「......ってわけだ」
そう、話し終えた俺はぐいっと酒を煽る。
そんな俺に黙って話を聞いていた龍があまりすることの無い真剣な顔で口を開いた。
「健はさ、昴君のことどう思ってるんだい?」
「は?」
思ってもみなかった質問に思わず間抜け面を晒してしまう。
しかしそんな俺に構うことなく龍が話し出す。
「ただの警官である君がそこまでその子に関わらなくても別にいいんじゃないかな、むしろ踏み込みすぎだと俺は思うよ」
「それは、あいつどこか危なっかしくて放っておけねぇから」
「君がその悪人面や口の悪さに似合わず正義感の塊であることは俺も百も承知だ。君はいつだって皆のヒーローだったからね」
「おい、誰が悪人面だ」
「でも、それでもそこまで他人であるその子に構う必要ってあるのかな?放っておけないって言うなら児相にでも連絡して任せればいい。彼らの方がプロなんだからね」
「それ、は......」
「もう1回聞くよ、君にとってその子は何? 一警察官として放っておけない子供?弟みたいな存在?それとも......いや、これを言うのは野暮ってもんだな。いくら馬鹿なお前でもここまで言えばわかるだろ」
「流石作家様は回りくどい言い方が好きだな」
「どうも」
そう言う奴の顔は面白そうにニヤニヤしており、こいつ完全に面白がってやがると思わないでもなかったが、そんな事よりもこいつの問いかけに対する答えみたいなものが頭の中に浮かび上がる。
「昴は俺の大事にしたい奴だ。大切な奴だ。あいつは俺の......好きな奴だ」
言葉にするとストンっと落ちて綺麗にハマった。
そんな俺に満足そうに龍は頷く。
11も下のガキを好きだなんてどうかしている、あぁ、どうかしているさ、けど好きになっちまったんだから仕方ねぇじゃねえか、気づいちまったから仕方ねぇじゃねえか世間が何だ、地位が何だ俺はあいつが好きだ俺の手であいつを守りてぇ、世界1幸せにしてやりてぇ、俺の隣で笑うあいつが見てぇ
「俺あいつの事めちゃくちゃ好きだわ」
「むしろ無自覚だった事に呆れるよね。健は誰に対しても確かに平等に優しいけどさ、いつだってお前の優しさは平等だった。けどその子に対しては違うんだろ?お前の心の中心にもう居着いてんだろ」
「やっぱ龍はすげぇな......」
「やめろよ、素直に褒められるとなんか気持ち悪い」
人が素直に礼を言うとこれだ
でもこれでスッキリした。
「で、これからどうするんだい?」
「あーとりあえずあいつに好きだって言うわ」
「お前のそういう一直線な所嫌いじゃないよ。その子には気の毒だけど」
「気の毒ってなんだ気の毒って」
「ははは」
その後はお互い近況報告やら昔話やらで盛り上がってそのまま解散した。
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