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14.恋する警察官

 昴 side  一つだけ、健斗さんに話していない、いや話せていないことがある。  俺の母さんの事。  あの事件があってすぐ、病院に連れて行かれた母さんと再会したのは中学生になってからだった。  施設の園長先生に連れていかれた病室にいた母さんは最後に見た時よりかなり痩せこけていて、目には生気がやどっておらずほぼ廃人のようだった。  そうして病室の扉を開いたまま立ち尽くしている俺の視線に気づいたのかゆったりとした動きでこちらを見やり一言言葉を零す。 「だあれ?」  母さんは俺の事をすっかり綺麗に忘れてしまっていた。  精神的ショックによる心因性の記憶喪失。  そしてそれだけでなく幼児退行。  そうやってつらつらと母親の現在の病状を伝えてくる医師の言葉を俺はどこか人事のように聞いていた。  むしろ俺よりも一緒に来ていた園長先生の方が悲しげで、居心地悪く感じてしまっていたんだ。  母親のそんな姿を見てショックを受けなかったわけじゃない、でも……けれど、  今の俺には健斗さんがいてくれる。  だからもう、もういいだ。  俺には健斗さんがいてくれればそれでいい。

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