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56.恋する幼馴染

 奏汰 side  春休みも終わり、俺と颯希は2年生になった。 「クラス離れちゃったねー」 「仕方ないだろ」 「そうだけどさ〜そうちゃんちょっと淡々としすぎじゃない?寂しくないの、俺と離れて」  そうやって眉を下げて俺に問いかけてくる颯希にうっと、言葉に詰まる。  本音を言えば確かにそりゃあクラスが離れた事は残念に思っている、思っているけれどそれを素直に言葉になんて出来るはずもなく、小さくため息を吐き出すことで何とか平常心を保つ。 「別に、クラスが離れてもどうせ授業受けている間以外は殆どの時間一緒に居るんだから良いだろ」  と、言葉にしてあれ、俺、今結構すごい事言ったななんて思ったものの、颯希はと言うと「それもそっか~」だなんて言って特に気にした様子も無くニコニコ笑うものだからそれ以上何も言えなくなる。 「はーい、そこいちゃいちゃしなーい!」 「してません!!」 「あ、裕先輩、こんにちはー!」  ガラッだなんてドアが開いてヒロ先輩が勢いよく入ってきて聞き捨てならない言葉を放つもんだから勢いよく否定する。  そんな俺の言葉にこれまたいつもと同じ憎たらしくニマニマしながらこっちを見てくるもんだから本当に嫌になる。  あれだ、不思議の国のアリスに出てくる嫌味なチェシャ猫みたいだよな、この人。  そんな事を俺が考えていれば 「よっ!早速だが一人新入部員捕まえて来たから紹介するわ」  なんて言ったヒロ先輩の後ろからひょこっと金髪頭の小柄な男子生徒が顔を出した。 「ほら、自己紹介!」 「うすっ、初めまして!九条愁也(くじょう しゅうや)です」 「九条って……あー!もしかして君、九条コーポレーションの息子さん?!」 「九条コーポレーション?」 「明治から続く名家だよ。そうちゃんって本当にそういう所疎いよね、クラスでも噂になってなかった?今年の新入生に九条コーポレーションの御曹司が入学したらしいって」 「知らねぇ、て言うかお前は一言余計なんだよ」 「あー、まぁそうです」  颯希の言葉に少し苦笑しながら応えた男子生徒をついマジマジと見てしまう。  小柄な体格で、颯希の髪よりも少し明るく、濃い金髪、前髪をくくってピンでとめている姿はどう見ても俺の想像する金持ちとはかけ離れていて 「何かチャラいって言うかチンピラみたいだな」  なんて言葉が思わず出ていた。  そんな俺の言葉に勢いよくヒロ先輩が吹き出す。 「ぶはっ、奏汰、お前が言うかそれ」 「もー!そうちゃん思った事をそのまま口に出しちゃダメだよ、チンピラって言うならそうちゃんの方がよっぽど目付き悪いんだからね!ごめんね、九条くん、決して悪気があるわけじゃないんだ」  そうやってわたわたする颯希と腹を抱えて笑いだしたヒロ先輩を見て眉間にシワを寄せていれば先程から緊張した顔をしていた九条が小さく笑った。

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