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57.恋する幼馴染

 奏汰 side  ひとしきり笑って落ち着いたヒロ先輩にそう言えば、と颯希が切り出した。 「2人って知り合いだったんですか?」 「いんや、さっき初めて会った」 「え、じゃあなんで九条くんはこの部活に入ろうと思ったの?」 「愁也でいいですよ、えっと、」 「あ、自己紹介がまだだったね、俺は向井颯希、それでこっちの目つきの悪い先輩が、」 「松永奏汰だ」 「通称そうちゃんでーす」 「お前しか呼んでねーだろ」 「仲良いんですね」 「奏汰と颯希は幼馴染なんだよ」 「へー、えっと、俺がこの部活に入ろうと思ったわけですよね、それはですね……」  そう言って1度言葉を区切った愁也の顔は真剣で思わず俺も颯希も緊迫した空気を出してしまう。  しかし続いた言葉は俺達が想像していないものであった。 「俺がヒロ先輩にぞっこんラブだからです!」 「ぞっこんラブ?」  聞き慣れない言葉に首を傾げる。  そんな俺の隣でバァン!だなんて大きな音を立てて颯希が立ち上がった。 「え、ちょっとまって、ぞっこん?え、ラブ??え、何、どういう事?」  そうやって混乱している颯希と戸惑う俺を放って 「好きです先輩!入部するので付き合ってください!」 「無理かな」 「そんな~」  なんてやり取りが目の前で繰り広げられる。 「ちょちょちょ、待ってください、何がどうしてそうなったのかそこの所詳しく、」 「あー、まぁ困ってる所を助けてやったら懐かれた?」 「懐いてますけど同時に惚れてます!」 「裕先輩?!」 「あー、その話はまぁまた後でな」  そうやってわいわい騒がしくしていれば控えめにドアが開かれた。 「あの、ここに松永奏汰さんはいらっしゃいますか」  そう言って顔を出した男子生徒に俺よりも早く颯希が反応する。 「あ、君確か健くんが連れてきてた……」 「村上くんじゃん」 「ん?知り合い?」 「いえ……」 「えー!同じクラスじゃん!同じクラスの九条!!」 「はぁ……」  そう言ってグイグイ近づいていく愁也をグイッとヒロ先輩が掴む。 「はーい、愁、ステイステイ」  ステイって犬か!  なんてツッコミを心の中でしながら言われた本人である愁也の方を向けば目を輝かせて大人しく言うことを聞いている。  いや、うん、本人がそれで良いなら別にいいんだけどな、  むしろそんな2人をみて胸を抑えながら机に突っ伏した颯希の方がどうしたって心配になったものの、まぁ大丈夫なんだろ、と結論を出して、男子生徒に声をかける。 「えっと、俺に何か用?」 「健斗さんからあの、松永先輩には色々話したって言われまして、えっとそれでその、部員数が足りなくて大変だっていうのも聞いててそれで俺でよければ力になれればと……」  少し俯きながら言われたその言葉に以前、健兄から言われた言葉を思い出す。 『大切な奴だ、昴の事頼むな』  健兄の歳下の恋人……  何だか改まってその事実を認識するとこう、気恥しいというかどう接すれば良いのか戸惑ってしまう。  え、て言うか健兄、俺に話したってこと昴クンに言ったわけ?  え、それって大丈夫だったの?  なんて色々思ったもののそれを聞くのもどうかと思うわけで、 「あー、色々と聞かせてもらいました、なんかごめんな?」 「いえ、あの人が全面的に悪いので、でも松永先輩がそう言う事に対して偏見ないってのも、健斗さんにとって大切な弟さんだってことも聞いてますし、だからその、よろしくお願いします」 「ん、こちらこそよろしく」  そんな俺の言葉に控えめに昴クンは微笑んだ。

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