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59.恋する幼馴染
奏汰 side
そうして帰り道、いつもはうるさいくらい喋る颯希が無言なので俺から話しかけることもできず気まずい雰囲気のまま家に着いた。
このまま別れるのもどうかと思うけれど颯希が何故黙ったままなのか理由もわからず内心戸惑う。
怒ってる……ってわけでもねぇみてぇだし、だー!どうすりゃいいのか分からん!!
そう、思わず頭を抱えそうになった俺の腕を無言を貫いていた颯希が突然グイッと掴んだ。
けれど言葉を発する様子もない颯希に
「あー、うち来るか?」
と、言う。
すると、こくん、と小さく頷いた颯希を伴って家に入った。
そうして部屋に迎え入れたものの、先程から何か言いかけて止めるを繰り返す颯希に対し、じっと辛抱強く待つ、そうしていればやっと颯希が口を開いた。
「そうちゃんがバレンタインの時に話していた後輩ちゃんってあの子だよね」
「神楽坂の事か?」
「あの子の事……そうちゃん好きなの?」
「はぁ?」
「好きじゃなくても気になってるとか?可愛かったもんねあの子」
「待て待て待て、何で急にそんな話が出てくるんだよ!」
予想だにしてなかった颯希の言葉に思いっきり頭を抱えたくなる気持ちを抑えて慌てて言葉を遮る。
「だってそうちゃん、あの子の事楽しそうに前話してたし、それって好きってことなんじゃ、」
「好きじゃねーよ!」
「あ、そう、なんだ」
強く否定するもののまだ疑っているのか颯希はこちらを見ない。
その事が腹立たしい。
「お前に似てるから」
「え?」
「神楽坂ってふとした仕草とかが颯希に似てたから、何だかお前見てるみたいで放っておけなくて、確かに他のマネージャーよりかは話してたけどそれはあくまで後輩として可愛がってるってだけで断じて好きとかそう言うのじゃねぇ」
何とか誤解を解きたくて思わず早口で捲し立てた言葉に途端、恥ずかしくなるもののこうなりゃヤケだと最後まで言いきった。
そんな俺に対し、ぽかんと間抜け面を晒していた颯希の表情が段々ムッとした表情に変わっていき、
「へ、へぇ~でも俺女の子と似てるって言われても嬉しくないんだけど」
と、唇を尖らせながら言った。
けれど、そう言いつつ、口元が緩みそうになるのを抑えられず、ぴくぴくしている颯希を見て
くそ可愛いな!!!
なんて、心の中で声を大にして叫ぶ。
て言うかヤキモチか?
これはヤキモチなのか?
うわ、なんだこれ……
やばい、ニヤけそう……
そんな俺の心の葛藤など全く気づく事も無い颯希が「あ!」と、声を上げて俺の肩をガシッと掴んだ。
「それともう1つ!色々って何?」
「あ?」
「昴君が言ってたでしょ、なんか健くんから色々聞いたってその色々って何?」
そう言われてそう言えば、こいつにはまだ健兄と昴の話をしていなかったことに気がつく
『この話、颯希には話していいから』
そんな健兄の言葉を思い出して、俺はありのまま2人の事を伝えれば、一瞬真顔になった後「そっかー、じゃあ昴くんはそうちゃんの弟、違うか、お兄さんになるんだねー」だなんて笑いながら言った。
そしてそのまま夕飯食べてく?と言う母さんの誘いを珍しく断った颯希は心做しか頬を赤く染めながら「じゃあね!そうちゃん!ありがとう!!」だなんて何故か礼を言って足早に帰って行った。
いや、なんでお礼言われたんだ?
俺……
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