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2.恋する有名人
龍 side
「とりあえず初ドラマ?脚本?執筆お疲れ~。そしておめでと~」
「何かあまり祝われている気がしないんだが......」
「えー祝ってる。俺めちゃくちゃ心の底から祝ってるから」
「本当かよ......」
「親友の俺の言葉が信じらんねーのかよ」
「親友だから信じられねーんだよ」
「ひでー」
そう言いながら酒を煽る目の前のこいつは橘健斗。
中学時代からの親友であり悪友だ。
「それにしても本当に有名になったよな~。俺も親友として鼻が高いわ」
「なんだよ急に」
「いやさ、ほら、色々知ってる身としましては?ホッとしたっつーか、嬉しいっつーか、とにかく!喜んでんだよ!!俺は!!!」
「ふふ、何だよそれ」
「っせ!......あれから親父さんとはどうなんだ?」
「別に、ふつー」
「ふつーって......」
「普通は普通、話もしないし連絡もとってないよ。あの人の望み通りね」
「りゅう......」
「あ、でもちゃんと母さんや裕とは連絡取り合ってるし健が心配する事なんて一つもないから」
「そっ、か。お前からしたら俺なんて頼りに何ねーかもしんねーけどでも何かあったら言えよ。俺ばっか頼ってて何かそれって対等じゃねーし」
「ふっ、お前そんなこと気にしてたのか」
「ば、バカにしたな!?」
「してねーよ。お前が気づいてないだけで俺だって頼りにしてんだぜお前のこと。......バカな行動するところとか?笑わせてもらってる」
「やっぱバカにしてんじゃねーか!」
「ははは」
「もー知らん!心配した俺がバカだった!」
そう言って目の前の酒と料理に手を伸ばす健斗に俺は悪い悪いと言いながら一口、酒を煽った。
本当に、お前の存在に救われてんだよ。
なぁ、親友。
俺の両親は教師だった。
幼い頃から家は俺にとって息苦しい場所という認識で常に両親の目を気にして生活をしていた。
特に父親は俺を自分と同じ教師にしようと厳しく接してきた。
それが当たり前だったし、それに対して反抗する気なんてわざわざ持ち合わせてすらいなかった。
あいつに会うまでは......
「お前なんでいつもこんなジメジメした所で飯食ってんだ?どうせ外で食うなら屋上行こうぜ!屋上。あそこの鍵、針金で弄ったら偶然開いてよ~」
初めて会った時、なんて自由で破天荒な奴なんだと思った。
「あ?何で声掛けたかって、たまたま屋上から下覗いたらお前が見えたからだけど。別に周りの奴らが何と言おうと気にしねーよ。俺は俺のやりたいようにやる!ルール?規則?んなもん俺が基準だ」
そう言って笑う彼に何て無茶苦茶なっと思った事を今でもハッキリ覚えている。
けれど、
「そいや名前、まだ聞いてなかったな。俺は2年1組の橘健斗。お前は?」
俺はその自由が眩しくて羨ましくて、ほんの少しだけ......
妬ましかった。
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