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12.恋する有名人

彰 side 「お、イケメンはっけ~ん」 そんな声と同時に背中に衝撃がやってくる。 倒れそうになった体に力を入れてなんとか踏みとどまってから一つ、小さくため息を吐いて後ろを振りむく。 「急に飛びついてこないでよ、はる君」 そんな俺の言葉にはる君、春日野陽仁(かすがのはると)はにしし、と独特な笑い声をあげて俺から離れた。 春日野陽仁 俺と同じ事務所に所属する今売り出し中のアイドルユニット冬桜、のメインボーカル。 人懐っこい性格で、世間の人気者。運動神経が良く、パワフルなパフォーマンスに加え、透き通るような歌声は聞いている人を全て虜にすると言われるほど歌唱力も評価を受けている。 そんな彼とは事務所への所属時期も近く、年齢も近いと言うことから大分良好な関係を築いている。 後、彼自身が少し弟と似ていることもあり、ついつい余計な世話を焼きたくなってしまうんだ。 ……実の弟にできなかった代わりに、なんてね。 そんな風に考え事をしていればズイっと顔を近づけられて思わず一歩下がってしまう。 はる君、良い子なんだけれどパーソナルスペースが無いって言うか、基本的に距離が近いんだよねぇ。 「なになに、どったの?随分シケた顔してんね、折角のイケメンが台無しだよ~。もったいないよ!シケメンになっちゃうよ!!」 「何それ」 「シケシケしているイケメン、略してシケメン!」 「はる君って独特の言葉使うよね」 「ふふん、アイドルは個性的じゃないとね!この芸能界と言う戦場は生き抜けないのさ!!」 「それもそうだね」 そうやって他愛も無い会話をしていてふっと、以前囁かれていた噂を思い出す。 その時は本当だとしてもそうじゃなかったとしても本人達の問題だし自分にはあまり関係の無いことだと気にしていなかったのだけれど、少し迷った末、声を落としてはる君に問いかけた。 「あの、さ、気を悪くさせたら申し訳ないんだけど」 「ん?」 「はる君ってさ、柊真君と付き合ってるって本当?」 柊真 本名、氷海柊真(ひうみとうま)、はる君の相棒で冬桜のギターボーカル。 すらりとした長身で大人の色気を感じる深みのあるバリトンボイスの歌声をもつ。 そんな彼から俺は昔から敵視されているというか、嫌われているというか……。 はる君と柊真君は小さい頃からの付き合いらしく、2人の仲の良さはファンは勿論のこと、業界内では評判だった。 距離感も大分近くて、2人は付き合っていると言う噂がまことしやかに囁かれるくらいには…… 思わず聞いてしまったそんな俺の言葉に鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしたはる君は次の瞬間、大きな声で笑い出した。 「は、はる君?」 「あは、あははは、えー何それ、あきくんもそんな噂、信じてんの?確かに僕たち際どいネタとか使ったりしているけれどそれはあくまで事務所の売り方戦略なだけで、本当に付き合ってるわけないじゃーん!」 「そ、そうだよね、変なこと聞いてごめん」 「まぁ確かに柊真とは家族よりも固い絆で結ばれているし、死ぬときは一緒だーって誓ったりもしているから、何よりも大切な存在であることに変わりはないんだけどね。恋人には絶対ならないよ、柊真とだけは絶対!!」 「そ、そこまで否定しなくても……。俺、結構柊真君からの当たりがキツかったりするからはる君と仲良くしている事に対する嫉妬かなぁとか思ったり考えたりしちゃって、」 「あはは、柊真は嫉妬深いからねー。共演者さんと僕が楽しそうに話しているとすーぐ割って入ってくるもん。まぁでもね、あきくん、何も恋人って関係だけが相手との一番深い関係の立ち位置に立っているってわけじゃないんだよ」 「そう、だよね」 はる君の言う通りだ、俺、思ったより混乱しているのかもしれないな、下世話な噂を信じそうになって本人にそんな話題を振るなんて…… 何だか酷い自己嫌悪に陥ってしまった。

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