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13.恋する有名人
彰 side
「わわ、そんな顔しないでよ」
「え」
そんな俺の雰囲気を察したのだろう大きく手を動かしながらはるくんが話し出す。
「すっごい、申し訳なさそうな顔。別に僕、慣れっこだよ。だから気にしないで」
「いや、でもすごく失礼な話題だったなって、いくら親しくても話題にして良いことと悪い事くらいちゃんと理解しておかないといけないのに。本当にごめんね」
「いや、全然気にしてないから。それだけ何だか思い悩んでるって事なのかな?」
「へ」
「そういう話題をあきくんからするっての珍しいじゃん、て言う事はズバリ!恋愛絡みの悩みだったりするんじゃないのかにゃ~?」
「うっ、」
「だれだれ?すっごく珍しくない!?だってどれだけ美人だって言われる女優さんや物凄く可愛いって言われるアイドルちゃんなんかと話題にされた時も他人事のようにスルーしていたあのあきくんをここまで悩ます相手なんて凄いじゃん、気になるじゃん!!」
先程までの神妙な空気が一変して騒がしい空気に切り替わる。
きっとこれ以上俺が気にしないように、わざと空気を明るいものに変えてくれたのであろうはる君に感謝するとともにどう、答えるか悩んでいれば
「はる」
「あ、柊真だ~」
物陰から急に現れた影に一瞬驚いてしまう。
「柊真君、お疲れ様です」
「お疲れ様です」
相変わらずあまり視線を合わせようとしない彼に思わず苦笑が漏れた。
そんな俺の事は特に気にした様子もなく柊真君がはる君に話しかける。
「マネージャーが呼んでる。この後予定されていたインタビューが先方さんの都合で後日になったらしい。代わりに雑誌の撮影前倒しでするんだとよ」
「わかったー、あきくんまた詳しくお話聞かせてね~」
そう言ってこちらに手を振って去っていくはる君の後ろ姿を見送っていれば「九条。」不意打ちで呼ばれた自分の名前に思わず肩が揺れた。
呼ばれた方へ視線をやればこちらをじとりと見つめる柊真君と視線が絡む。
柊真君から話しかけてくるなんて珍しいな、なんて思っていれば何故だか俺の顔を見て深くため息を吐かれた。
え、何で俺ため息吐かれたの?
そうやって内心、困っていれば柊真君がもう一度短くため息を吐いて、そうしてぽつりと言葉を零した。
「陽仁もお前もごちゃごちゃ考えすぎなんだよ。何でそー、自分でわざわざ難しくすんのかね」
そんな彼の言葉に咄嗟に出てくる言葉が見当たらない。
そんな俺のことなんて気にすることも無く言葉を続ける。
「シンプルだろ。答えはいつだってシンプルなんだ。手前ぇがどうしたいかだろうがよ」
そんな言葉と共に視線に貫かれる。
動けないまま固まった俺に次の言葉をかけるでもなく、言いたいことだけ言って柊真君は背中を向けて去っていった。
俺は彼の後姿が見えなくなっても暫くそこから動くことはできずにいた。
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