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70.恋する幼馴染
奏汰 side
「人すごいね~!」
「愁、迷子になるなよー」
「はい!」
軽快な音楽と一緒に聞こえてくる周りの楽し気な笑い声。
そう、俺達は今遊園地にいる。
「そうちゃんもほら早く行こうよ~」
「お、おう」
颯希に促されて先を歩くヒロ先輩と愁也の方へ慌てて向かいながら俺は昨日の事を思い出していた。
◆◇◆
「そうちゃん、明日遊園地行かない!?」
「明日って、えらく急だな」
へへへ、と笑いながら遊園地のチケットとやらを軽く振る颯樹の笑顔にくっそ可愛いな、だなんて思いつつ言葉を返す。
母さんから「健斗がちゃんと生活できているか心配だから家に行きたいけれど、お父さんから一人で行くと絶対迷子になるから一人で行かないでと泣かれたから奏汰ついてきてくれるわよね」なんて言われた金曜日の朝、有無を言わさないその言葉に抵抗することも無く頷いて、ヒロ先輩へと今日の部活は休むと連絡を入れ、そうして無事、用事を済ませて帰ってきてみれば何故か部屋にいた颯希の第一声がそれだった。
「うん、あのね、ゆきちゃんからヒロ先輩が遊園地のペアチケット貰ったみたいでせっかくなら一緒に行かないか~って誘われてさ!」
「部活メンバーでか?」
「ううん、ゆきちゃんは家族で用事があるらしくて、すばるんは人混みが苦手だからパスだって、だから俺と、そうちゃんと、裕先輩と愁の4人だよ~」
「あー、まぁ特に予定も無いからな、良いぞ」
「やったー!ダブルデートだね!!」
「デっ……!」
そう言った颯希の言葉に思わず動揺して変な声が出た。
「ふふふ、そうちゃん、自分から好意を伝えてくるのは全然恥ずかし気もなく言ってくるくせに俺からこう言う事言い出すと途端に照れちゃうよね~」
仕方ねーだろ!
こっちは長年お前への恋心を抱いて拗らせまくってたんだよ!!
それが両思いになって付き合うなんて急展開なって未だに脳内処理が追い付いていない状態なんだよ!!!
……なんて絶対声に出すことはしないけど
だなんて思わず悶々としていたらふっ、と颯希の放った言葉に違和感を抱く。
「ん、ダブルデート?」
「あ」
「あ?」
「えっと、裕先輩と愁もねお付き合いする事になったんだって」
「マジかよ」
「愁の恋が無事実ったね〜」
◆◇◆
なんてやり取りをした事を思い出しつつ、チラリと前方を歩くヒロ先輩と愁也を見る。
それにしてもあのヒロ先輩と愁也がねぇ
あんなに毎日熱烈に告白してくる愁矢を軽くあしらっていたくせに、一体どういう心境の変化があったんだか
ふっ、と思い出すのは入学してからのヒロ先輩と愁也のやり取りで、いつも適当にあしらわれつつもそれでもめげずに気持ちをぶつけていた愁也をすげぇなと、思っていた身としては何だかすごく感慨深く、良かったな、と言う気持ちが素直にわいた。
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