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71.恋する幼馴染

 奏汰 side  そんなふうに考えていれば颯希が地図を開きながら口を開く。 「どれから乗りますか?」 「んー?やっぱ最初はジェットコースターだろ」 「「えっ」」  颯希の言葉に返したヒロ先輩の答えに思わずでた声が隣の愁也と重なった。 「あー、そうちゃんジェットコースター苦手だもんね」 「え、超意外なんだけど」  俺の言葉に即座に納得したように言った颯希の言葉を聞きヒロ先輩が意外そうな声を上げる。 「いや、ジェットコースターが苦手と言うより、スピードが出てる乗り物が苦手というか、ジェットコースターって乗る時安全バーするじゃないっすか、それされると何かあった時咄嗟に自分の力でどうにかできないのが苦手というかなんというか」 「いや、どういう事だよ。そもそも安全バーは何か起こらない為のものでもあるからな」 「愁もジェットコースター苦手なの?」 「ひょぇっ、あ、う、はい……その、俺はスピードとかは大丈夫なんですけど、落ちる時の浮遊感が苦手で、気持ち悪くなっちゃうんです」 「あー確かに浮遊感苦手な人多いよね」 「そう言う颯希はどうなの?」 「俺ですか?俺は普通にジェットコースター好きですよ〜。ただそうちゃんが苦手なので家族ぐるみで遊園地に来た時もあんまり乗らないですね。裕先輩は最初にって言うって事はジェットコースター好きなんですよね?」 「もち。何回だって乗れちゃうくらいには好きだな、まぁでも苦手ってんなら他のにするか〜」 「そうですね〜」  そう言って再び地図に視線を戻した颯希とヒロ先輩を見て少し申し訳なさそうな顔をする愁也と目が合う。  そんな愁也の表情を見て頭をガシガシと掻きながら口を開いた。 「あー、でも颯希もヒロ先輩も乗りたいんすよね、だったらとりあえず俺らの事は良いんで2人で乗ってきたらどうっすか?颯希もいつも苦手だっつー俺に遠慮して乗れてねぇんだからさ、折角なら好きだって言うヒロ先輩と行った方が良いだろ」 「ですね、俺もそう思います。折角来てるのに勿体ないですよ、好きな乗り物に乗らなきゃ」  俺の言葉に続いて愁也も小さく頷きながらそう言った。  そんな俺達の言葉に暫くポカンとした顔をしていた颯希とヒロ先輩だったが数秒固まった後、これ見よがしにため息を吐かれた。 「もー!そうちゃんも愁も全然分かってない!」 「はぁ?」 「ふぇ?」  ぷんすかだなんて擬音がつきそうな声音で腰に手を当てて口を尖らせた颯希に思わず怪訝な声が漏れる。 「分かってないってなんだよ」 「言葉の意味そのまんまだよ」 「えっと、でもヒロ先輩、ジェットコースター好きなんですよね、それなのに乗れなくて良いんですか?」 「ばーか、お前と楽しむために来たのに一緒じゃないと意味ないだろ」 「へ?」 「デートなんだから」  ヒロ先輩のその言葉に一気に隣の愁也の顔が赤くなる。  お、おぉ……  すげぇなヒロ先輩、俺もつられて照れそうになったわ  2人のやり取りに思わず感心していればクイッと軽く袖を引かれそちらに視線をやれば未だ軽く口を尖らせている颯希と視線が絡む。 「そうだよ、一緒じゃないとやだよ、折角の遊園地デートなのに」  そ、の顔は反則だろ……!!  瞳を若干揺らしながら眉を下げた表情でそんな言葉を言われればそれ以上何か言うこともできず、愁也の方も特に異論が出て来なかったのか何も言わなかった。

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