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72.恋する幼馴染

 颯希 side 「ばーか、お前と楽しむために来たのに一緒じゃないと意味ないだろ」  ど、どひゃぁぁぁー!!  やばいやばい何その萌えるセリフ!?  ヒロ先輩マジぱねぇ  いや、もう本当ありがとうございます!!!  何なんですか裕先輩、俺の事萌え殺す気ですか!!  ってダメだダメだ。  思わず隣で繰り広げられた会話に腐男子としての己を抑えることが出来ず、心の中でもだえ苦しんでしまったけれど直ぐにハッと、意識を取り戻し、そうちゃんの方へ向く。 「そうだよ、一緒じゃないとやだよ、折角の遊園地デートなのに」  そう言えばそうちゃんは「んぐっ」だなんて変な声を出して押し黙った。  ふふふ、そうちゃんのこういう顔を見れるのも俺の役得だもんね、少し前だったらそうちゃんが変な声出したり、奇怪な行動したり、変な顔をしていてもそれが何でかなんて全然分からなかったけれど俺の行動、言動でそんな風になってるんだって気づいてからは何だかすごく楽しくなっちゃうんだよね、あぁ、俺そうちゃんに愛されてるんだなぁって……  うわ、やばい、なになに自分の今の考えに思わず照れちゃったんだけど!  こう言う話、沢山同人誌で読んだりしているのにいざ自分の身に起こると冷静になった時の恥ずかしさ尋常じゃないね!? 「颯希?」 「うぇ!な、何かなそうちゃん!?」 「いや、一人でぐるぐる面白れぇ顔してっから」 「お、面白いってなにさー」  そう、不満気に言えば意地の悪い笑顔を浮かべるもんだから思わずドキリとしたのが悔しくてそっぽを向いてしまった。  ■□■ 「だー負けた、おい、奏汰少しは先輩に遠慮しろ」 「勝負の世界に先輩も後輩も関係なっすよ。それともヒロ先輩は接待勝負をご所望でしたか?」 「うっわ、奏汰のくせにそんな言葉使ってくるとか超生意気なんだけど」  そんなそうちゃんと裕先輩のやり取りに愁と視線を合わせてどちらからともなく笑いがこぼれる。 「いや、でもやっぱり奏汰先輩の動体視力すごいっす!さっちゃん先輩もヒロ先輩もバンバン当ててくし、俺全然当たらなくて……」 「愁はすごいあらぬ方向に打ってたよね」 「うっ、こういう乗り物乗りながら的に当てる的なの初めてで、どうしても動いていると反応が遅れるというかなんというか……でもすごく楽しかったです!」  そうやって目を輝かせて言う愁の頭を思わず撫でていれば「そうだ」なんて裕先輩が声を上げた。 「愁、お前ショーが見たいつってたよな、ショー見るならそろそろ場所取りしとかなきゃだろうし、俺と愁で場所確保しとくからさ颯希と奏汰2人で何か乗ってきたら?」 「え、そんな悪いですよ」 「いーのいーの」 「でも……」  裕先輩の提案に渋った態度をしていればガッと肩を捕まれ 「ばーか、折角のデートなんだから2人っきりにもなりたいだろ、お前らのいちゃつきを側で見れないのは腐男子の本能としてはざんねんであるけどその前にやっぱ折角遊園地デートなんて美味しいシチュエーションになってんだ、ここらで満喫しとかねーとな」  だなんて耳打ちしてきた。  その言葉に思わず「ひ、裕先輩……!」だなんて感嘆の声をあげてしまった。  そんな俺と裕先輩のやり取りを怪訝そうに見ているそうちゃんの腕を力強く掴む。 「ではお言葉に甘えさせていただきます!」 「おー、じゃーなー」  戸惑いの表情を浮かべるそうちゃんにお構いなしに移動する俺達に片手をあげてそんな言葉を投げかける裕先輩と未だ状況を掴めていない愁を置き去りにその場を後にした。

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