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73.恋する幼馴染
颯希 side
「ど、どうしようか」
その場の勢いでそうちゃんの腕を掴んで連れ出したものの、行き先を特に決めていなかった為、すぐに立ち止まり地図を広げながらそんな言葉をそうちゃんに対して放つ。
なんだかデートだって意識すると急に緊張してきたぞ!?
さっきまでは何だかんだ仲の良いメンバーで遊びに来た感覚が強かったもんね!!
そんな事をぐるぐる考えつつ、意を決してそうちゃんの方へ視線をやり
「そうちゃん何か乗りたいのある?」
と、問いかければ
「ジェットコースター」
「へ」
だなんて予期していなかった単語がそうちゃんの口から飛び出して思わず間抜けな声が出た。
「何だよその間抜け面」
「えっと、俺の聞き間違いかなって」
「間違ってねぇよ。ジェットコースター、颯希乗りてぇんだろ」
「いやいやいやそうちゃん苦手じゃん」
「それはそーだけど別に乗れねー事ねぇよ」
「でもでも別に無理して乗ろうとしてくれなくていいんだよ、本当にだって」
更に言い募ろうとした俺の言葉を遮って
「お前の喜ぶ顔が見たいんだよ」
「……」
何てそうちゃんが真面目な顔して言うものだから思わず俺は黙ってしまう。
そんな俺の態度に段々気恥ずかしくなってきたのか、頬を真っ赤に染めたそうちゃんが俺の肩を小突く。
「おい、何とか言えよ」
「へ、あ、えっと、そうちゃんすごく顔真っ赤だね」
「だぁー!そう言う事じゃねぇよ!」
何を言っていいのか分からなくて思わず指摘してしまったその言葉に頭を掻きむしるそうちゃんを見ていたらさっきまで緊張していた気持ちが吹き飛んでいて次いで込み上げてきたのは嬉しいって気持ちと気恥ずかしい気持ちで、思わず俺の口からは笑いが零れていた。
「ぷっ、はは、あはは」
「あーもう!笑ってねぇでサッサと移動すんぞ、乗らねーのか」
「乗る!乗りたい!!」
居たたまれなくなったのかジェットコースターの方へ歩き出したそうちゃんを慌てて追いかける。
顔を覗き込もうとしたらそっぽを向かれて再びくすりと笑ってしまう。
そんな俺にぶつぶつ文句を言うそうちゃんの言葉は聞き逃して、ぶすくれた顔をしてこちらを向いたそうちゃんに
「そうちゃん、怖かったら俺の手握ってくれてて良いからね」
と、ウィンク一つ言葉を放れば
「おー」
だなんて気のない返事が返される。
そんなそうちゃんを見ていたら何だかくすぐったくて温かい気持ちが溢れてきて
「そうちゃん」
「んだよ」
「大好き」
自然と言葉が出ていた。
そんな俺の言葉に一瞬目を丸くしてその後そっぽを向きながらも小さく「俺も」だなんて返してくれるそうちゃんが好きだなぁなんてもう一度心の中で呟いた。
■□■
「し、死ぬかと思った」
「すごい叫んでたよねー」
フラフラと覚束ない足取りで歩くそうちゃんに笑いながらそう、言葉を投げかければそんな俺のからかいの言葉にすら反論する元気も無いのか「うるへー」と、覇気のない言葉が返ってくる。
ここまで弱ってるそうちゃんの姿ってのも珍しいよな~
そう考えると何だか今のこの姿がとても貴重な姿に思えてきて思わずまじまじ見つめてしまう。
そうこうしていたら
ピロン
だなんて、メッセージの通知を告げる電子音が鳴った。
「あ」
「ん?」
「そろそろショーが始まるからこっちに合流するか~?って裕先輩から」
「あー行くか」
「そだねー」
そうちゃんの返事に頷きながら裕先輩へとメッセージを返す。
そうしてメッセージを打ち終えて、歩き出そうとした俺の目の前に
「ん」
と、言って手が差し出された。
「へ」
「人混み凄いからはぐれないように」
思わず戸惑いの声を上げた俺に早口でそうちゃんがそんなことを言う。
俺はと言うと、そうちゃんからまさかこんな行動をされるだなんて思っていなかったので突然の出来事に思わず思考が停止してしまって、そうやって動こうとしない俺の手を無理矢理そうちゃんが引っ張ったことによってやっと思考が動き出す。
「そ、そうちゃん!?」
「人も多いし、ショーの時間、もうすぐなんだろ」
「う、うん……」
目の前を歩くそうちゃんの表情は見えないけれど耳まで真っ赤にしている様子からしてきっと顔全体真っ赤になっているのは分かり切っていたけれどそれを揶揄う余裕は今の俺には無かった。
だってきっと俺の顔もおんなじくらい真っ赤になってるもん、絶対……!!
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