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74.恋する幼馴染

奏汰 side 「凄かったねー」 「ものすごく綺麗でした!」 キャッキャと言う表現が似合いそうな雰囲気で楽しそうに興奮して喋っている颯希と愁也を見て思わず口元が緩む。 パシャッ 「は?」 「ふふふ、奏汰のレアな写真ゲット~」 突然のシャッター音の方へ向けばスマフォを構えたヒロ先輩がしたり顔でそんなことを言い出す。 「著作権の侵害ですよ」 「それを言うなら肖像権な」 「うっ、と、とにかく消してください!」 「やーだね、これを交渉材料に奏汰に色々無理難題吹っ掛けるつもりなんだから」 「あんた本当俺の扱い容赦ねぇな」 「可愛がってるつもりなんだけどね」 「どこがだよ!」 あははーなんて笑うヒロ先輩に本当にこの先輩は人を揶揄うのが好きだな、なんて思ってじとりと睨んでみるが「おーこわいこわい」だなんておどけて見せるのでため息を吐く。 そうして昴や神楽坂へのお土産を買う為に店に入った颯希達を追いかけるように少し歩調を速めたヒロ先輩の背中に今日一日、遊園地に来た頃からずっといつ切り出そうかと思っていた質問を投げかけていた。 「……何で急に愁也の告白受けたんすか」 「急だな」 「別に、ちょっと気になっただけなんで言いたくないなら聞かないっすけど」 「んー、まぁ絆されたってのもあるけど、いざ改まって言葉にしようとすると難しいな」 「何すかそれ」 「でも奏汰だって何であの時颯希に告白できたのかって聞かれたら簡単に言葉にして伝えらんないだろ」 その言葉に思い出すのはヒロ先輩に颯希と付き合うことになったことを報告しに行った日の事で ◆◇◆ 「おーやっとくっついたか、おめでとおめでとー」 「軽いな」 一応、俺の恋心を知っていて、ずっと揶揄いながらも応援?してくれていたであろうヒロ先輩には颯希と付き合う事になった事実は伝えておくべきだろうと思い、翌日の昼休み、颯希には用があるとだけ言って、3年生の教室に足を運び、人のいない廊下に連れ出して報告をした俺の言葉にヒロ先輩はそんな反応をするものだから思わず突っ込んでしまう。 「いや、本当におめでたいとは思っているよ、でも今更感というか、やっとかーってのと俺の苦労がついに実を結んだ―とかそっちの感慨深さのが大きいんだよね。これでやっと奏汰から牽制されることもなくなる~」 「牽制ってなんすか」 「え、あれ無自覚だったの?こわっ」 ヒロ先輩の言葉の意味が分からず、きょとんとしてしまった俺とは対照的に「まじかーえー。ないわー」なんてぼそぼそヒロ先輩が言うものだから怪訝な顔をした俺に対して 「まぁなにはともあれ良かったよ、おめでとさん」 だなんて言葉をくれた。 ◆◇◆ そんな事を思い出しながらヒロ先輩に投げかけられた言葉に 「まぁ、確かに」 と、納得してみれば満足そうにヒロ先輩が頷いて口を開く。 「でもちゃんと愁の事好きだよ」 「あんたが言うと何か嘘くさく聞こえるんだよなぁ」 「奏汰、俺に対して失礼じゃない?俺先輩だよ」 「普段のご自分の行動や言動を振り返ってみてください」 「えー俺は沢山奏汰のこと可愛がってあげてるのにー」 「可愛がるの意味が違うだろ」 そうやって文句を言っていればなかなか店の中に入ってこない俺達に痺れを切らしたのか颯希が店から顔を出して俺達の事を呼ぶもんだからそれ以上何か言うことなく、店の方へ行こうと立ち止まったままのヒロ先輩を追い越そうとした時 「大事にしたいと思ってるよ、本当に」 なんて言葉を呟くものだから普段と違う、真面目なその声音と、言葉に一瞬驚いて隣を向けばそこにはいつもの飄々とした笑みを浮かべた普段通りのヒロ先輩がいて「ほら、颯希も呼んでるし、ぼさっとしてないでさっさと行くぞ~」なんて言葉を投げかけてそのままスタスタと店の方へ歩いて行った。

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