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75.恋する幼馴染み

 颯希 side 「凄かったねー」 「ものすごく綺麗でした!」 「愁、ものすごく目キラキラさせてたもんね」 「だって本当にパフォーマンスとか凄くて、きらきら光って綺麗だったってのもあるんですけど、一人一人の動きが洗練されていて全力で見ている人たちを楽しませようっていう気持ちが伝わってきて本当に心臓がドキドキして夢のような時間でした!」 「あはは、そんな風に言ってもらえたらパフォーマンスしていた人達も感無量だろうね」  身振り手振りで感動を伝えてくる愁が可愛くて、思わずそんな言葉を伝えながら頭を撫でる。  そうすればへにゃりと笑った愁が近所で飼われているポメラニアンのマルに似ていて衝動的に頭を思いっきりわしゃわしゃとしたくなった気持ちを必死に抑え、コホンと一つ咳払いをして「ほら、お土産、すばるん達の選ばなきゃね」と、早足で店内に入った。  ■□■ 「わぁ~いっぱいありますね~」 「だね、どれにしようかな」 「やっぱりこういう時って食べ物とかの方が良いんですかね?」 「まぁ大体はお菓子とか買ってくよね」 「昴とゆきちゃん何が好きかな~」  そう、言いながらキョロキョロと棚に視線を向ける愁にふっと、今日一日言おう、言おうと思っていた言葉を思い出す。  言うなら今、かな。 「愁」 「なんですか?」 「おめでとう」 「へ」  突然の言葉に何のことを言われているのか分かっていないのか、頭上にクエスチョンマークを浮かべてそうな呆けた顔を愁がするのでふっ、と小さく笑ってしった。 「念願の裕先輩と付き合えて」  そんな俺の言葉の意味をようやく理解した愁の頬が徐々に真っ赤に染まっていく 「あぅ、はい、ありがとうございます」  へへ、だなんて目じりを下げて笑った愁の笑顔を見て心から本当に良かった、と言う気持ちが湧きあがる。  腐男子だからとかそう言うこと以前に愁は大切な後輩だし、裕先輩は尊敬する先輩だし、そんな2人には幸せになってほしいもん。  そりゃ全く腐男子としての歓喜の気持ちがないのかって言われたら完全に否定はできないけれどでもでも本当に心から純粋におめでたいことだなって思ってるからね!  そう、誰に言うでもなく心の中で言い訳をしていたら突然、愁がバッと俺の手を握って 「俺もヒロ先輩ともっともっと仲良くなってさっちゃん先輩と奏汰先輩みたいな関係になりたいっす!」  なんて言い出した。 「俺とそうちゃんみたいに?」 「はい!お二人みたいに熟年夫婦感漂う感じというか、阿吽の呼吸というか」 「俺達そう見える?」 「はい!」  そう、力強く返事をしてくれた愁の目は真っすぐで、その気持ちが嘘ではないことがヒシヒシと伝わってくる。 「そっ、かぁ……」  幼馴染の期間が長かったからかそうちゃんと恋人、という関係になってもあまり俺たちの間の空気は変わらなくて、普段の距離感とかも全然違いがないから今日、そうちゃんが手を繋いでくれたり、苦手な乗り物にも俺が好きだからと言う理由で一緒に乗ってくれたりしたことに必要以上に舞い上がってしまっていたわけだけど、周りから、と言うか愁からはそんな風に見られているんだなと言う事実を知って何だか途端に気恥ずかしくなってくる。 「さっちゃん先輩?」  何も言わずに固まった俺に心配そうに声を掛けてきた愁に「あ!裕先輩たちまだ来ないね、何してるんだろうね、俺ちょっと呼んでくるよ」と、言う言葉だけ残して俺はくるりと背中を向けて店の外へと向かった。

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