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26.恋する後輩

 裕 side 「それにしてもまさか今更になって喋り方を突っ込まれるとは」 「いや、実は虎徹と会った時から気になってたんだよな、あのすっ、喋りしなくなったなって」  俺の言葉にこれ以上この会話を続けたくなくなったのかわざとらしく「そう言えば」だなんて大きな声を出して話題を変えてきた。 「遊園地、虎徹さんたちと行ったりしていたんですか?」 「あーまぁ何回か学校さぼって」 「サボり!ヒロ先輩やっぱりカッコいい……」 「お前、俺が何しててもカッコいいって言いそうだな」 「そんなこと……ないとも言い切れないですね」 「そこは言い切れよ」  俺が呆れたように言えば、「だってヒロ先輩は宇宙一カッコいいですから!」なんて言われた。 「まぁ、また行こうな遊園地」 「はい!今日は無理でしたけど昴達とも行きたいですもんね」  無邪気にそう言った愁にぽりぽりと頭を掻きながら 「あー、俺としては今度は2人っきりでって意味で言ったんだけど」  と、零せば 「はわっ」  なんて変な声を上げて固まるもんだから「なんだその声」って、笑いながら突っ込んで言葉を続ける。 「まぁ、また漫研メンバー全員で行くのも楽しそうだし良いけどな」 「あ、あの!」 「ん?」 「みんなでも行きたいんですけども、2人っきりでも、行きたい、です」  そう、真っ赤な顔で告げる愁が可愛くて、ふはっだなんて思いっきり吹き出してしまった。  ■□■ 「あれ、ヒロ先輩のお家向こうですよね?」 「そうだけど」 「えっと、じゃあここで、」  さよならと言う言葉を続けようとしたであろう愁の言葉を遮って 「送ってく」  と言った。 「へ」 「嫌か?」 「嫌なわけないじゃないですか!で、でももう結構遅いし、暗いし、お家の人心配したりしませんか?」 「大丈夫だって、家には連絡してるし、なんてったって俺強いし、お前も知ってんだろ」 「ヒロ先輩が強いのは知ってますけど危険な目にはあってほしくないんです」 「ばーか、それは俺もだっつの、こんな夜道、お前一人で帰らせられるか」 「お、俺はいざとなったら高橋を呼べばいいんで」 「あーもう、だから!俺がもう少しお前と一緒にいたいんだよ」 「へぁ!?」 「だから何だよ、その変な声は」  そう、笑いながらも俺は俺で自分の言った言葉に羞恥心で頭を抱えたい内心を悟らせないよう必死に取り繕う。  いや、だって、まさか自分が絵にかいたようなこんなセリフを言うことになるとは思わないだろ。  そう、脳内で一人、突っ込みを入れていれば 「お、お願いします」  と、愁がか細い声で言った。 「おう」  そうしてしばらくの間無言が続く。  そんな無言に先に耐えられなくなったのは愁の方で、俺の服の裾を掴んで言葉を零す。 「ヒロ先輩、その、本当にありがとうございます。色々と」 「色々ってなんだよ」 「色々は色々です」  そうやって他愛もない話を続けていれば大きな屋敷が見えてきて 「あ、着いちゃいましたね」 「そうだな」  愁の言葉にそう返す。 「もう少し一緒にいたかったな……って、あ」  じゃあな、なんて言葉を口にしようとした瞬間、愁がそんな事を言うもんだから思わず固まってしまう。  言った本人もどうやら心の声が漏れてしまったようで真っ赤になって俺の方を見ている。  いや、そんな可愛い顔で可愛いことを言われたらぐっと来ない男なんていないだろ……! 「愁」 「ひろ、せんぱい」  未だ顔を赤くしたままの愁の頬に手を添える。  そうして潤んだ瞳の愁と視線を絡ませたまま顔を近づけ…… 「坊ちゃぁぁぁん!!」  ようとした瞬間、馬鹿みたいにでかい声が響いて思わずお互い距離をとった 「たたたたたたかはし!?」 「坊ちゃん、ずいぶん遅かったじゃないですか遅くなるならきちんと連絡をくださいとあれほど申しておりましたのに」 「ちゃんと送ったよ! 「いいえ、来てません」 「うそだーって、あれ、送信できてなかった、かも?」 「ほーーーらーーーー。全く坊ちゃんはうっかりさんなんですから!」  そう、一頻り愁に小言を述べ終えた後、今度はこちらを向いた人物に思わず身体を強張らせてしまう。 「初めまして、いつも愁様からお話をお伺いしております。ヒロ先輩、とお見受けしてよろしいでしょうか」 「はい、そうです。初めまして笹原裕です。」 「いつもうちの坊ちゃんがお世話になっております。今後ともどうぞくれぐれもよろしくお願いいたします」 「えぇ、よろしくお願いします」  何だか、笑顔だけど探られているようなそんな感じだな。  なんて、思ったもののこっちはこっちでとりあえず笑顔で返しておく。  そして愁の方を向き 「また学校でな、愁」  と、言って片手をあげ元来た道を戻る。  後ろから 「高橋のバカ」  なんて、小さく呟いた愁の言葉にほんのりと頬に熱が集まっているのは気づかない振りをしてそのまま振り向くことなく真っすぐ家路についた。

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