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004 僕のネコにするの:R
何だかんだいって。清崇 とやって性欲が満たされた次の日は、身体が軽くて心穏やかになる。
睡眠不足の頭は少し重いけど。
「おはよ、玲史。ちょっと相談あるんだ」
学園の昇降口で、クラスメイトの新庄 聡 に会った。
小柄でかわいい顔の聡はゲイにモテる……もちろん、ゲイ。
外見を裏切らず、小悪魔なネコで。うちのクラス、2-Bの半数にかわいがられるアイドル的存在だ。
僕もまだ170センチに届かない身長で。ロリコンに狙われる美少年タイプって言われる顔のせいもあって、聡と同類に見られることも多いけど。
まったくの別種だってこと、僕を知ってる人間はわかってる。
はじめは勝手にライバル視してた聡も、今は仲良し。
お互いに好みじゃないから、セックスは試したことない。
「おはよー。何の相談? 勉強? エロ?」
「エロ。ていうか、凱 くん……一目惚れしたかも! 攻略法教えて」
朝から元気だなぁ。
「きみには無理」
笑顔でハッキリ言ってあげた。
「ひど……何で? まさか、玲史……もう!?」
「そんなわけないでしょ」
笑った。
僕をどう見てるのこの子。食えれば誰でもいいとでも?
まぁ、確かに。
凱くんに興味は持ったけど。
「速攻で落ちるほど甘くないと思うよ彼。やらせてくれるならやるってサルじゃなさそう」
聡が肩眉を上げる。
「ノンケだから?」
「ううん。男もイケるはず」
「ネコっぽい?」
「ううん。どっちも出来るんじゃないかな」
「じゃあ、僕にもチャンスあるじゃん。1回やったら虜になってくれるかも」
「へー、そんなテクあるの?」
浮いた噂は多いけど、聡を抱いた男本人に話聞いたことないな。
「しばらくやってないから、サービスしちゃう」
合わせた目。
考えたのは同じ。
「いくら欲求不満になっても、玲史はヤダ。セックスの時にやさしい男がいい」
「僕も遠慮しとく。最初から甘えてねだられるのって、興奮しないんだよね」
「マゾが好きなくせに。僕は違うけど。僕の絶妙なツンデレ知らないくせに。試させる気ないけど……」
気分を害したのか。ブツブツ文句言ってる聡の拗ねた顔は、確かにかわいらしい。みだらに喘がせたくいって思う男が多いのも納得。
でも。
愛らしいウサギとかチワワより、ヒョウとかドーベルマンみたいな強い男を乱れさせたいの僕は。
「僕はサドでもやさしくするんだけどな。ま、今ほかに目つけてるから、凱くんは狙ってないよ。がんばってみれば?」
「うん。て、玲史が誰を? うちの学園?」
「紫道 」
目をパチパチして僕を見つめる聡。
「マジ……!?」
「マジ。おかしい? ああいうの、好みなの」
「だって……え? 川北ってゲイ?」
「自分ではバイって言ってる」
「だとしても、タチじゃない? 玲史に抱かれるって……想像できないんだけど」
「どっちだろうが僕のネコにするの」
「……だましうちで強姦するとか?」
聡が嫌悪感を顕にする。
「そういうのよしなよ。レイプって最低」
「同感。もちろん、しない。ちゃんとその気にさせてからやる」
「ならいいけど」
表情を緩めた聡が、覗き込むように僕を見る。
「川北はマジメでカタそうじゃん?」
「そこがいいの」
「落とす自信あるんだ? もう告った?」
告る……?
抱きたい意思は伝えてあるけど。
「落とせれば、満足させる自信はあるよ。でも、つき合うとか興味ないし。好きとかもわかんない。セックスしたいだけ」
「玲史。ソレ、ダメなやつ」
「何で?」
「恋人でもない、好きでもない男に……ただやりたいだけって言われて。抱かれる気になると思う?」
顔を見合わせた。
「きみは……」
「僕は嫌だな」
きみはやりたい気分ならオッケーでしょ?
そう言おうとしたのに。
嫌って。
性欲だけでセックスしないってこと?
「きみは、ちょっといいなぁくらいの男ならオッケーかと思ってた」
「僕、ビッチじゃないから」
「誘われてその気になんない?」
「好きって気持ちがないとダメ」
「彼氏以外とはやらない?」
「……つき合ってなくても、やることはある……かな。あーやっぱビッチかも」
自分で言って頭を振る聡に笑う。
「でも。やりたいだけってのはないから。玲史は、やるのに恋愛感情要らないのかもしんないけど。川北みたいなタイプには必要だよ、きっと」
「恋愛なんかしたことないもん。でも、好みの男しか抱く気にならないし、好みの男でもレイプされるのは不快」
肩を竦める。
「僕だって、見た目が好みなら誰でもいいわけじゃないよ。その気になるのは、もう一味なんかある。紫道は友達として好きだし」
暫し僕を見つめ、聡がフフッと笑みを浮かべた。
「それ、恋かもね」
は!?
何でそうなるの?
今までセックスした男には、確かに見た目以外にやりたくなる何かを感じたと思うけど……恋心っていうのはない。
何度もやってる清崇にだって、ない。
どんな感情か定かじゃないにしても、恋じゃないのはわかる……はず……じゃない?
腑に落ちないまま、聡に続いて2-Bの教室に入った。
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