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006 問題なのは……:S

 また、抜いちまった。  今日は日曜で、朝からずっと部屋に閉じこもってるとはいえ……今のですでに3回め。まだ夕方だから、少なくとももう1回はやりそうだ。2回かもしれない。  明日から中間テストだってのに。  いや。  オナるのは問題じゃない。  いたって自然な、必要な行為だ。みんなやってる。飯食うのと同じだ。  性欲は強いほうだが、高2男子として正常の範囲内だろうと思う。  出すもん出しておかないと、勉強に身が入らないからな。  問題は……。  頭に浮かぶ妄想だ。  ネットで男女のエロ動画を見ても……イケない。  かといって、ゲイビを見る気はさらさらない。  俺は、男が好きなわけじゃない。  恋愛って意味で男を好きになったことはないからだ。  まぁ……女にホレたこともないが。  でも、女とセックスしたことはある……一度だけ、だが。  男とは……。  何度やったのか、数えちゃいない。  いや。  何度やられたのか、思い出したくもないんだ。  なのに。  突っ込まれる快感を刻み込まれた身体は、ソレを覚えちまってる。  そこまではいい。  ちんぽ扱きながらアナルの奥が疼くのは仕方ねぇって。  疼いたって、自分じゃ後ろはイジらない。前だけでオナれる。だから、まだセーフだ。  問題なのは……。  止めようとしても勝手に頭に浮かんじまう妄想は……。  玲史にやられてる俺だ。  ヤバいだろ。  玲史は友達だぞ?  そりゃ、1年前から誘われてはいる。    抱かれてみないか……って、最初に言われた時はマジでビビった。  犯される恐怖を感じたからじゃなく。  俺の全てを見透かすような視線が、男に抱かれたいんだろって言われてるみたいに感じたからだ。  プラス。  あいつの性癖をまだ知らなかったから、あの外見で俺を抱きたいってのが……本気だとは思えなかったからな。  冗談なのか。  からかってるのか。  反応見て楽しんでるのか。  本当に俺なんかに興味あるのか。  どこまで本気なのか。  わかないまま何度か誘われ、拒否して……するしかないだろ。  玲史と俺は友達で。  仮に玲史が俺とやりたいのがマジだとしても。  ただそれだけなら、やる理由にならない。  セックスは好きな相手とするもんだってのを、好きじゃない相手としかしたことないくせに思う。  幻想でも何でも。  もし、単なる思い込みでも。  好きにならなけりゃ、やらない。  そう決めた。  だから、玲史の誘いにのらなかった。これからも、のるつもりはない。  なのに、この始末だ。  あいつに抱かれてるとこ想像してオナって。  しかも、それがまたイイとくる。  どうしちまったんだ俺は……こんな……玲史をオカズにしちまうなんて……クソッ。  射精した気持ちよさと罪悪感に、得体の知れない不安感。  溜息の2つ3つじゃ消せようもない。  頭を振って妄想の名残りを払い、早めの夕飯へと腰を上げた。 「紫道(しのみち)。今日は早いな」  寮の食堂に入ってすぐ、吾妻(あずま)(たすく)に声をかけられた。  自宅が遠い生徒がほとんどの 学園の寮生は全校の4分の1程度で、基本的に2人1部屋。共有部分にキッチンと風呂トイレがあり、それぞれの個室がある。  1年の時に同部屋だった佑とは、今も誰よりも近い。親友と呼べる存在の佑はゲイだが、互いをエロい目で見たことはない。  身長175センチほどで細身、どっちかといえばゴツめな顔立ちの佑は。一見とっつきにくそうな雰囲気だが、素直で裏表なく人懐っこい。  そして、恋には一途な男だ。  その経験のない俺にうまいアドバイスなんぞ出来るわけもないが、よく恋愛相談をしてくる。  グチやノロケを気兼ねなく話せるだけでも助かるし、人の意見はためになると言ってくれ…いつもこう締めくくった。 『お前も、聞いてほしいことあったら何でも話せよ』  そう言われても、マジで何もなく。これまで俺から色恋の悩みを話す機会はなかったが……今、その時がきたかもしれない。

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