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024 理由がほしいんだ:S
夕食後。風紀の情報を聞きに、佑 の部屋に来てる。
立候補することを伝えると喜ばれ、いろいろ話してくれた。
判明した風紀委員長の瓜生 は性指向はノンケで、副委員長の坂口はバイ。2人ともケンカは強く、坂口はチャラい。瓜生は当然だが、坂口も学園内に恋人はいない。
これだけじゃ、明日の立候補者選別の役には立たなそうだ。
「立候補、けっこういると思うか?」
佑に尋ねる。
「あんまいねぇんじゃね? 今の委員に、声かけて確保しろっつうくらいだし。やっぱメンドイしよ」
「現委員は残るんだろ」
「ひとりやめるから、俺と柴崎だけな」
「1年の寮生からは3人か?」
「そ。で、立候補から取るのが……6、7人くらいじゃね」
答えて、佑が首を傾げる。
「何、急にやる気満々?」
「……玲史も立候補した」
「え? 高畑? あんなかわいらしいのに……って、ケンカ強いんだっけか。見た目に反して」
「まぁな……」
「でも何で? 正義感も強いとか?」
「実は……」
佑に、玲史との約束を話した。
「風紀に受かったらつき合うのオッケーした……?」
「そうだ」
「なんっで、んな条件つけんだよ。素直にハイだろそこは。拗らせてんな」
「いや、何でって……いきなりじゃ……必要だったからだ。時間と、きっかけが……そう言ったら玲史が……」
「提案されて乗ったんだ?」
「それもアリかってな。クラスのヤツが、賭けに負けて試しでつき合うことになったっての、聞いたのもあってよ」
「賭けってお前はどっち? つき合うのが勝ち? 負け?」
聞かれて、言葉に詰まる。
確かに賭けた。
玲史が風紀になるかならないか。なったらつき合う。ならなけりゃ、つき合わない。
玲史の勝ちは、つき合うほう。
俺にとっては……。
「たぶん、つき合うのが……勝ちだ」
そうなんだ、ハナから。
俺自身も……そのつもりでいる。
まだ、自信がないだけで……。
「何だ、たぶんて。言い切れよ。潔く」
佑が笑う。
「んーでもさ。誰得の賭けよソレ? 同じサイドに賭けてんじゃ、意味ねぇじゃん」
「確かにな」
俺も笑い、息を吐く。
「明日のテストっつーか、選別……何やるかわかるか?」
フェアじゃない気もするが、聞けるもんは聞いとこう。
「口止めされてるなら言わなくてもいいぞ」
「知ってりゃ教えるけど……俺ん時はほら、寮でクジ引きだったしよ」
「……そうだな」
「あーでも。一応面接? あった。当時の委員長と副委員長が確認、みたいなやつ」
「どんなんだった?」
「部屋入った途端、殴りかかってきてよ」
「は……?」
「避けた。反撃はしねぇで、睨みつけた。そんだけ」
「何だそりゃ。攻撃かわせるか見たってことか?」
「と思うけど。もうひとりは、ジャンケンしたって」
「は……!?」
「勝ったからいいけどよ。負けたらどうなったんだ。意味わかんねぇよな」
眉を寄せた。
意味……は、あるはずだ。
「見てるのは反応か。風紀にふさわしいかどうか……?」
「つっても、いろいろいるぜ? 言ったろ。先輩たちキャラ濃いって」
「なら……瓜生と坂口の地雷、教えてくれ」
これだけでも対策しとけば、少しはマシだ。
「委員長はエロ系かな。ノンケでも男同士は見慣れちゃってるから、ちょっとイチャついてんのは見逃すけど。本番とムリヤリは許さない」
「……そりゃ、みんなそうだろ」
「レイプは許さねぇよ俺も。でも……坂口さんと見回りしてる時、一回現場見ちゃってさ」
佑がニヤリとする。
「俺まだ童貞だったし、間近で生セックスじゃん? ちんこギンギンなっちゃって困ったぜ」
「そ……ういう場合、風紀委員は……やめさせるのか?」
「委員長なら容赦なく止める。坂口さんと俺は待った」
待った……!?
「時間かかんなそうだから、イクまでやらせてあげよ……って。実際すぐ終わって、そこで俺たち登場。イッた余韻と見られたショックの中、学園内で盛るの厳重注意」
「……気の毒にな」
「坂口はエロにうるさくねぇの。暴力っつーかイジメっぽいことに厳しい感じ」
弱いが、この情報を玲史にも伝えよう。
「委員長の瓜生のほうがお前に感覚近いな、きっと。坂口さんのノリにもがんばってついてけ。面接やるならこの2人だ」
「ああ。出来るだけがんばるが……」
「もし風紀落ちたらって考えてんのか?」
先回りするように、佑が問う。
「約束消えても、つき合うんだろ?」
「……たぶん、な」
『結果は同じだよ』
將悟と話したLHRで、玲史が言った。2人とも風紀になろうが、ダメだろうが。玲史がダメで俺だけなろうが、同じ。
約束した時点で、つき合うことにオーケーした。
玲史はそう思ってる。
そして。
実際に、そうだ……俺はもう、ノーとは言えない。
賭けの体にしたのは形だけ。わかってる……けど。
「それでも、風紀の立候補が認められてつき合いたい」
理由がほしいんだ。
恋してるってわけじゃなく。
恋されてるってわけでもなく。
恋愛っての知らない俺と玲史がつきあう、その理由が要る。
でなけりゃ……性欲と好奇心でやるだけになっちまう。
「万が一。委員長に意見聞かれたら、推しとく。お前と高畑」
「ありがとな」
佑の言葉にホッと一息つくも。
「無事つき合うことになったら、紹介して高畑」
「ああ、もちろん……」
「経験値高いんだろ? セックスのテク教わりたい。お前の反応よかったやつとか」
「……玲史と、俺の話するのはやめてくれ」
それは、マジで頼む。
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