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035 変わらない……よね?:R

 5限目のLHRで、学祭のお化け屋敷の仕掛けを決めた。紫道(しのみち)將悟(そうご)と3人で、ゾンビ誕生シーンを担当する。  仕掛けは3人で作るけど、当日はゾンビ役の僕と紫道だけ。將悟はエスコートだ。  お化け屋敷って暗がりだし、けっこう楽しめそう。  今年の学祭はいろんな意味で楽しみ……特に夜が。紫道とはもうつき合ってるの99パーセント確定してるから、夜は延々攻めまくるのも決定。  その前に一度は抱いておきたいよね。どんな感じかわかってたほうが、準備万端にして臨めるもん。早く正式決定出してくれないかなぁ、風紀委員長。  昼休みに、風紀の見回り実地訓練ていうか練習ていうのがあった。正式決定のために3年生が仕事ぶりを見るって名目だけど、特に見せるとこはなく。つまり、取り締まるような生徒はいなかった。 『風紀を乱す場面に遭遇するのは、10ヶ所見て1回くらいかな。ほとんどが性的行為だけど、立候補認定されてるってことは……きみは問題なく対処出来るんだよね?』 『はい。何の問題もありません』 『きみは、その……』 『あ。僕、ゲイでタチです。セックスの真っ最中に出食わしても全然平気だし、ケンカに慣れてるから暴力もオッケーなので。まかせてください』 『そ、そうなんだ。頼もしいな……ははっ』  僕と学園内の見回りをした、田口さんとの会話。いろいろ教えてくれて、僕の外見から心配もしてくれて。最後にちょっと引かれたっぽい。  田口さんは物腰が柔らかくて、超品行方正でマジメで賢い感じで……風紀委員ってタイプじゃないの。  でも。委員としてキッチリ務まるってるからには、見た目の雰囲気通りじゃないんだろうな。  帰りに、紫道とお互いの見回りの話をした。どっちも何もなく、マイナス評価の心配は要らない。  あと1回。僕は明日、紫道はあさっての放課後の見回りでオシマイ。  正式決定、今週中にってあり得るよね。週末は『恋人同士のはじめて夜』を過ごせるかも。  なんか新鮮。  セフレや、ワンナイトの男とホテルに泊まったことは何度もあるけど。コイビトって呼べる相手は、紫道がはじめてになる……変な感じ。  攻めて啼かせてイカせて。やることは変わらないのに……。  変わらない……よね?  自分でもよくわからない期待感を抱きつつ。  火曜日の放課後、2度めの風紀の見回りをした。昼休みはチェックポイント3箇所だったけど、放課後は6箇所。  この時は体育会系のバイ、加瀬さんとだ。  そして。  第5多目的教室にて。深いキスを交わして盛ってるカップル発見!  この教室は、たまにしか使われない3階の小ホールの手前にあって。人通りが少なく、チェックポイントの中でもアウトな場面発生率の高いところらしい。  あやしいと踏んで、足音を忍ばせて廊下を進んできて。手前からもう、ピンクな気配が漂ってたし。ドアが半分開いてるせいで、微かに甘めの声も聞こえてた。  教室の中を覗くと。一応見えないようにか、廊下側の壁際でキスしてる。没頭してて、僕たちがガン見してるのに気づいてない様子。 「はい。実践ね。アレ、やめさせて注意してきな」  いったんドアから離れ、加瀬が小声で言う。ニヤリと楽しげに。 「わかりました」  頷いて、ひとり中へ。  壁を背に腰を下ろした茶髪の男の脚を跨いで、黒髪の男が座ってる。こっちが主導権を握ってるっぽい。頭の後ろに回した手でガッチリホールドしての濃厚なキス。  荒く湿った息づかいに怯まず近寄った。  コレ、もう周りの音聞こえないし見えてないよね。  2人の世界入ってるとこ悪いけど。 「気持ちよさそう……僕も混ぜてくれる?」  茶髪くんの腿に乗ってる黒髪くんの耳元で、話しかけた。 「ひッあ……!」  予期しない第三者の声にか、わざと息を吹きかけたせいか。  相手から唇を離した黒髪くんが、びっくんっと身体を跳ねさせて頭を振った。  2人の胸元の学年章は1年だ。 「な、に……え? あんた、誰……!?」 「風紀委員。学園内でそんなキス、ダメでしょ」 「……つい、盛り上がっちゃって……」  上気した頬と欲に濡れた瞳で言いわけする子、かわいいな。 「そのつもりで人気のないここまで来て……見つからなきゃ、ズボン下ろして挿れてたんじゃないの? きみ、騏上位好きそう」 「な……俺、は……」 「今の見たら、誘われてる気になる男もいるかもね。あ、3Pに誘ってるの? 2人まとめて抱いてあげよっか?」  意地悪なセリフに。黒髪くんより先に茶髪くんが反応。 「すみません。もうしませんから……コイツ、いじめないで」  素直に謝るのは感心。 「うん。じゃ、ここ出よ」  笑みを浮かべて少し離れた。 「勃ち具合はどう? 2人とも歩ける?」 「あ……はい」 「……大丈夫です」  少しは熱、冷めたみたい。 「次、見つけたら。僕に犯されたいんだって思うからね」  顔を見合わせて、ためらいがちに頷く2人。 「はい……」 「もう、しないです」  うん。風紀の仕事、完了。 「どうですか?」  風紀本部に戻りながら、加瀬に聞いた。 「悪くない。ちょっとからかい過ぎだけどな」 「そっか……じゃあ、次はもう少しソフトにします」  加瀬が笑う。 「まぁ……人が来ればとりあえずはやめるし、ちょっとイチャつく程度ならいいが……あんな濃いのやってたら、そのうち本番までいくようになるだろ」 「だから、学園内で盛るのは危険って思わせればいいかなって」 「方向は合ってるけどよ」  加瀬が僕を上から下まで見て、上へ。 「そのツラで犯すって脅されてもな。お前、マジでタチなの?」 「はい。試してみます?」 「……いや。遠慮しとく」  焦ったふうな加瀬の様子に、笑みを漏らした。  男らしい男が恥ずかしげに頬染めるのって、やっぱいいよね。  早く紫道に恥ずかしいこといっぱいしたいなぁ。

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