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036 待ちきれない!:R

 水曜日。放課後に、紫道(しのみち)が風紀見回りをした。  チェックポイントにいたカップルが、風紀委員の姿を見てそそくさと立ち去った……っていうのがあっただけらしく。無事終わったってメッセージに、ひと安心。 『よかった。これで正式決定、取り消しはないね。嬉しい?』  僕のメッセに、けっこうな間を空けて。 『緊張する』  返ってきたのは短いひと言。  緊張……するの? 僕とつき合うことに?  あー……セックスするのに?  何も心配する必要ないんだけどなぁ……はじめてとかじゃないんだし。キスもしたし。  絶対、気持ちよくするし。 『お前にとって俺は何になるんだ?』  次にきたメッセに首を傾げる。 『彼氏でしょ? セフレじゃないって言ったよね。きみは特別だって』  忘れちゃったのかな。 『つき合ってみてもそう思えるなら、そうかもな』  うーん。  紫道のメッセが、なんかネガティブなのは何故だろう?  つき合ったら、さらに特別じゃないの?  もともとクラスメイトで一緒にいるから、普段と劇的に何か変わるわけじゃないのに。  恋人同士だからって、セフレとやることほぼ同じだと思ってるのに感じるこの期待感と……焦がれる感じ?  これは紫道にしか感じないモノだから。 『思えるよ。抱いたらもっと、特別になるから』  なんたって、はじめての恋人だもん。 『わかった』  それだけ?  楽しみだな、とか。ないの?  紫道は楽しみにしてないのかも……とすると。  やっぱり。  実践で楽しませなきゃね!  次の日。木曜の昼休み。  お化け屋敷の仕掛けの詳細を、紫道と將悟(そうご)と3人で話し合ってるんだけど……。 「將梧、変」 「そう……?」  僕の指摘に、將悟の不自然さが増す。  落ち着きがないっていうか。そわそわ。ウキウキ? 「うん。浮ついてる。何かあった? それとも、何かあるの? 今日」 「今日……涼弥とやる」  將悟が答えると、紫道もノートから顔を上げた。  この話題。  紫道にも刺激になるはず。 「へぇ! とうとう……いいな」  視線を向けて、紫道に微笑み。 「こっちは委員決定までお預けなのに」  僕たちも、早くやりたいね……って意味を込めるも。 「約束だろ」  紫道は素っ気ない。 「涼弥のケガはいいのか?」 「ん……もう待てないから。俺も涼弥も」  杉原を気遣う紫道に、照れながらもやる気を見せる將悟。 「気をつけてやる」 「そうか。まぁ……しっかりな」  紫道がエロトーク苦手なの知ってるけどさ。 「そう。しっかり準備してから、挿れてもらいなよ」  もっと具体的なアドバイス、してあげないと。 「痛いのが気持ちいいとか、ないんでしょ? 將梧は」 「ない。痛いのは嫌だ」  即答。  まぁ確かに、真性Mじゃなさそうかな。 「じゃあ、杉原に焦らないでゆっくりしてって言わないとね。経験あるんだっけ?」 「ある。けど、慣れてはいないと思う……言っとく」 「裂けたら痛いよ。やってる最中は快感に逃げられても、あとでくるから」  將悟だけじゃなく、紫道も僕を見つめる。  あーそっか。  2人とも、僕がネコの経験あるって知らないから。 「僕はバリタチだけど。最初の頃にネコも試したし、レイプされたことも何度かあるから。ヘタクソなバカどもにね」 「玲史……」  將悟の眉間に微かな皺。  思い出したら、気分悪くなってきた。  レイプするヤツって自己中なセックスしかしない……当然だけど、ヘタ過ぎ。  テクニックに自信がないくせにムリヤリ突っ込むバカは、マジで救いようないよね。 「やられるのは、ほんと屈辱。怖くも傷つきもしないけど、ムカつく。僕は自分が支配する側じゃなきゃ、満足出来ない」  あ。ムカムカしてつい、口調がトゲトゲしくなっちゃったよ。  2人とも無言。  引かれてるじゃん……ダメ。和やかにしなきゃ! 「ネコの感覚がわかるから、僕はいいタチでサドなの。紫道のこと、ギリギリのとこで攻めてあげる。安心して支配されて」  スマイルスマイル。  よかった。紫道が笑った。 「俺は別にマゾのネコってわけじゃない。どうするんだ?」 「もちろん。僕好みに調教するよ」 「出来るならやってみるんだな」  余裕そう……將悟の前だから?  あーほんとマジ、待ちきれない! 「楽しみだね。ま、とにかく」  視線を將悟に移す。 「將梧は思ったより従順じゃなさそうだし、杉原は攻めるの好きそうだし……どんなセックスするか興味あるな。見てみたい」 「ダメ。見せるもんじゃないだろ」 「興奮するよ?」 「おい。俺も嫌だぞ」  將悟はノー。紫道も。 「はいはい。今は嫌でも、先はわからないでしょ」  欲望、解放してあげるんだからさ……この僕がね。  紫道が溜息をついた。

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