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037 俺たちはつき合う:S

 金曜日の朝。將悟(そうご)が涼弥とのつき合いを公にした。  昨日の宣言通りセックスして、腰を痛めたらしく。涼弥に支えられて登校してきたところを見れば、誰の目にも明らかで。クラスメイトたちに、否定せずに肯定してた。  ヨロついてはいるが、幸せそうな將悟を見てホッとする。  好きな男とつき合って、やって……心も身体も繋がる感覚ってのは、どんなもんだろうな。 「杉原、機嫌よさそう。絶好調って感じ」  玲史の視線の先に、同じA組の柴崎と話す涼弥がいる。 「そりゃ……」  昨日、念願叶って……。 「やっと將悟を抱けたから?」  唇の端を上げる玲史に頷いた。 「ずっと思い続けてたっていうから、なおさらだ」 「僕も。もうすぐご機嫌になれるかなぁ」  口を開く前に。視界の中でドアが開いた。  今、俺と玲史は風紀本部にいる。立候補を認定された12人が、昼休みに集められ……。 「ここにいる候補者全員を来期の風紀委員とする」  委員長の瓜生(くりゅう)に、正式決定を告げられた。 「告示は学祭の日。委員の活動も、学祭の見回りから本格的に始めてもらう」  前の認定時と違い、ほぼ確定してたのもあり。特に喜びの声は上がらない。誰も欠けてないから微妙な空気も流れない。  チラリと斜め下に視線を落とすと、玲史が満面の笑みを俺に向けてる。  言いたいことはわかる。  全校生徒への公式発表は学祭までされないが、正式決定はされた。  約束は完了。  俺たちはつき合う。今日、今から……か。  思ってたより1週間早い。  いや。学祭前とは思ってたが……今週中だってのは予想外だ。ちょっとマズいかもしれない。 「で、ここから本題。委員長と副委員長を決めるんだけどさー」  副委員長の坂口の声で前を向き、説明に集中する。  なかなか雑念が振り払えなかったが、だいたいはわかった。  生徒会長と風紀の委員長は、そこそこ仲がいい程度のヤツがいい。公平な立場を保つには、親し過ぎるヤツも敵対するヤツもダメ。  だから、学祭前日の生徒会役員選挙の結果に合わせて、風紀の委員長副委員長を決める必要がある。  生徒会長と副会長に1年生が当選することはほぼない、ということで。2年の候補者ひとりひとりに、こっちも2年生を対応させておく。その話し合いだ。 「將悟が会長になったら、俺が委員長になる……」 「ダメだ。お前と早瀬じゃ近過ぎる」  2年の生徒会役員候補者の名前が書かれたホワイトボードの前。真っ先に口を開いた涼弥の希望は、残念ながら即却下された。  まぁ、つき合ってる2人じゃ親し過ぎも過ぎ。仕方ないだろう。瓜生が把握してるのは意外だったが。 「早瀬には、同じクラスのヤツ……川北か高畑が妥当か」  瓜生が俺と玲史を見る。 「紫道(しのみち)やって。お願い」  玲史に頼まれ。 「じゃあ、俺が……やります」  頷いて言った。  涼弥は残念そうだが、すぐに気づくはずだ。  この中じゃ、俺が一番最適。安全だ……涼弥の心配する意味じゃな。 「オッケー。川北くんねー」  坂口が、ボードに俺の名を書いた。 「次、上沢。コイツがきみ、杉原くんやんなよ。ほどよく仲良さげだったじゃん」  返事を待たず、坂口がサラサラと涼弥の名を書く。  同じA組だが、あの寮での涼弥……上沢と仲良し、だったか?  それ以前に。  坂口も瓜生も、よくいろいろ知ってるな。風紀の情報網か。 「わかった」  文句はなく、涼弥が承知した。 「んじゃ、どんどんいこう。次、藤村はー?」  こんな感じで。  坂口主導で時折、的確なところで瓜生が口を挟み。  サクサクと。  次期生徒会長候補者に対応する風紀委員が決まった。  選挙の結果により。生徒会長に対応するヤツが風紀委員長、副会長に対応するヤツが副委員長になる。  完全に向こう次第で自動的にこっちが決まるこの仕組みは、2つの組織の連携がうまくいく秘訣らしい。疑問はあるが、これで今までスムーズにいってるなら問題はないんだろう。  俺は將悟が会長に当選したら委員長、副会長なら副委員長になる。  そして、玲史は……D組の加賀谷だ。  自分から、今はまだ親しくないがうまくやれると言い。D組の風紀委員がいなかったのもあって、反対意見なしでオーケーされた。 「お前、何で加賀谷に?」  教室へ戻りながら、玲史に尋ねる。 「去年一緒だった吉村でもよかっただろ」 「だって。加賀谷と近づけるから。せっかくのチャンス、逃すのもったいないでしょ?」  近づく、チャンス……。 「勘違いしないでよ。加賀谷は僕と同類。エロ目的じゃなくて、いろいろ情報交換したり話したりしたいの」  タチでサドな仲間、ほしいのか。  それも、エロ目的の一種なんじゃ……? 「まぁ、友達として仲良くなるのはいいことだが」  その弊害が俺に来る気がしなくもない。 「將悟の対応、紫道にさせてごめんね。委員長になったらサポートするから」  その言葉に、軽く眉を寄せる。 「まだわからないだろ」 「そお? 今の將悟、人目引くもん。当選確実。それより……」  俺の腕に、玲史が抱きついた。 「僕たちもう、恋人同士でしょ?」 「ああ、そう……だな」  すれ違う1年の集団にガン見され、顔がほてる。 「あの2人デキてるんだーって。学園内で思われるの、気分いいね」 「まぁ……悪くは、ない……か?」  照れる。  慣れないのもあるが、恥ずかしい。オクテなんだ俺は。 「きみが僕に食べられる、とは思われてなさそうだけど」  笑みが……怖いぞ、玲史。 「食い尽くしてあげる」  不穏なセリフも吐かれ、ゾクッとした身体が熱くなった。

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