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040 かわい過ぎ:R

 拘束か、オモチャ攻めか。 「將悟(そうご)なら、どっちが嫌だ?」  紫道(しのみち)に聞かれ、眉を寄せる將悟。  暫しの間を置いてから。 「俺は縛られるほうが嫌……それは無理」 「そうか」  どっちも嫌って顔しながらも答える將悟に、紫道が頷いた。 「へぇ。ちょっと意外だね。オモチャはいいんだ。將悟って、けっこう淫らになりそう」 「よくない。オモチャも嫌だ。どっちのほうが、より嫌かってこと」  からかって、將悟を見つめる。  狙う気はないけど、そそられはするから……エロい目で見ちゃってるかもね。 「道具は使うな」  紫道の声。  僕に向ける瞳に熱はない。でも……。  欲じゃないのに必死な感じが、こう……どこかにクるんだけど……! 「縛っていいの?」 「俺は逃げないが……どうしてもそうしたいなら、その日だけだ」  心臓らへんをキュッとするのが何か、わからないまま。紫道の返事に満足して口角が上がる。  僕にすべてを委ねてくれる……嬉しいでしょ。普通に。 「え……」  困惑気味な声を出す將悟をチラリ。  他人事なのに焦ってるの?  縛られたり、オモチャで攻められたり。  いずれは、きみもされると思うよ?  杉原……そういうの、好きそうだもん。 「將悟が証人ね。ふふ……楽しみ」 「待たせるからには、1日くらい好きにさせてやろうと思ってな」  納得させるように將悟に言う紫道の言葉は、僕にも向けられてるみたい。 「ん。じゃあ、その……楽しんで。でも、無理するなよ」 「ああ」  友達の身を案じる將悟に、紫道が微笑む。  今週末は、その顔を快感で歪ませて……一晩中啼かせてあげようっと。  縛って好きに出来る……なんてステキ。 「ねぇ! 將悟たちはどうする予定? 学祭の夜は泊りで熱い夜?」  ふと、聞いてみた。 「あ……まだ決めてないけど……」 「お祝いすれば?」 「何の?」  首を傾げて笑みを漏らす僕を、怪訝そうに見る將悟。 「選挙結果、出るでしょ。あーお祝いじゃなくて……慰めてもらえば?」 「俺が……役員になったら……か?」 「何ちっちゃいこと言ってるの? 生徒会長になったら、だよ」 「は!? 会長!? 嫌だ。それはノーだって……」  うろたえるのが、おもしろい。 「拒否権はないんじゃない? だから。夜は杉原に……ね?」  本気で当選しない可能性あるって思ってるのかな。  ダントツで票集まる気配濃厚なのに。 「杉原に聞いてる? その時は、紫道が風紀委員長になるから。こっちはお祝い……たっぷりサービスしてあげるね」  紫道と目を合わせて宣言し、將悟へと視線を戻す。 「きっと、杉原もサービスしてくれるよ」 「そう……だな」  遠い目で何やら考え込む將悟の口元が、微かにほころぶ。 「うん。涼弥に聞いてみるよ」 「オッケーに決まってるでしょ。あ。將悟たちも、うちに泊まる? 部屋余ってるから」  いいこと思いついた。  気心知れた第三者に見られる衆人環視プレイも、楽しそうじゃない? 「え? いや。いい……遠慮しとく。紫道と二人で……楽しく、仲良く過ごして」  すぐさま断られた。 「そお? 邪魔しないし。もしもの時は、協力し合えるし」 「もしもって……?」  感じて乱れる痴態見られて、熱くなりそうなのに。少しも想像しないの。  色気増してもマジメで健全、ノーマルエロか……もったいないなぁ。 「気分がノッて、ギャラリーがほしくなった時とか……」 「ない!」 「ダメだ」  將悟と同時に、紫道もノー。強めに。 「お前の趣味に、將悟を巻き込むな」 「半分冗談だってば」  肩を竦めて見せる。 「お前が言うと、冗談に聞こえない」  溜息をついて、紫道が僕を見つめ……。 「玲史。お前の趣味には俺がつき合う。2人だけなら、だ。それじゃ足りないか?」  真摯な眼差しでソレ言うの、素なんだよね?  かわい過ぎ。 「足りそう。ヤバ……今すぐここに押し倒したい」 「おい!」  將悟の声もすでに遠い。 「ここでゾンビ役やり終わったら、お前のネコ役になってやる」  ちょっぴり怯えた感じの瞳でまっすぐ見られて、そう言われて。  すぐそこの硬くて小さな即席ベッドに紫道を押し倒さずにいられた僕を、誰か褒めて!  そのくらい、ほしい気持ちでいっぱいになった。

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