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068 セーブ出来るかな……?:R

 大きめのピザ1枚を2人で食べ終え、腹ごしらえは完了。 「そろそろ、準備しよっか」  何の準備か、紫道(しのみち)は尋ねない。  ちゃんとわかってる。わかってるのに、わざと尋ねたりもしない。ちょっぴり、顔が固まったけど。 「一緒にシャワー……」 「先に入ってくれ。ひとりで」  一日の疲れと汚れを流し、快感を貪る前の儀式的な行程への誘いを……即、却下された。 「ひとりで、出来る。大丈夫だ」  唇の端を上げて笑顔を作る紫道。  そりゃさ、ひとりで出来るし大丈夫だろうけど。  そうじゃなくて。  ふたりでしたいのに……ていうか。  僕がしたいんじゃん!  紫道にとって。  ソレは恥ずかしいことだから。  でも、きっと。  恥ずかしいけど、興奮することになるから。  そして、もちろん。  僕にとって。  恥ずかしくて興奮する紫道を見るのは、快楽だから。 「洗ってあげたいなぁ。一緒にシャワー、楽しいよ?」  ねだるように、言ってみる。 「ひとりでいい」 「さみしいなぁ」 「……ひとりがいい」  紫道は意見を変えない。 「せっかくの夜なのに」  残念そうに、しゅんとして言ってみるも。 「ひとりで、準備する」  答えは頑なで。 「玲史。頼むから、別々にしてくれ。今、いっぱいいっぱいで……余裕がない」  まっすぐに見つめられて懇願されたら。 「残念。だけど、いいよ」  仕方ないから、聞いてあげる。  今は。  今日は。  今夜は、紫道の意見を尊重しよう……でも。  毎回は聞けない。  楽しみは逃したくないもん。 「じゃ、先にシャワーしてくるね」 「ああ……」  ホッとしたように息を吐く紫道に微笑んで、立ち上がる。 「バスルームはそこ。トイレはその次のとこ。そっちは寝室」  廊下のドアを指差した。  僕がいない間、トイレに行けるように。  寝室を覗きたくなるかもしれないし。 「気が変わったら来て」 「いや……大丈夫だ」  あ、そうだ。 「あと、オナるのは禁止」  僕がいるのに、セルフはないでしょ。 「ああ……わかった」  紫道の瞳、ちょっと揺れたけど。  ここは信用して。 「すぐだから、待っててね」  バスルームに向かった。  アナルの準備が要らない僕ひとりでのシャワーに、時間はかからない。  急ぎもせず、のんびりもせず。15分足らずで戻ると、紫道がソファから腰を上げた。 「早かったな」 「うん。きみもどうぞ。バスタオルとバスローブ、置いてあるの使って」  髪を拭きながら近づく僕を、紫道がしげしげと見つめる。 「それ、ローブっての……実際に着てるヤツ、初めて見たぞ」 「ラクだよ。裸に羽織るだけだから」 「そ……うか」  目を逸らす紫道に、手を伸ばす。 「ベッドで待ってる」  昼間つけたキスマークと咬み傷の残る紫道の首元に軽く触れ、囁いた。  待つこと20分。  思ったより早く。バスローブを羽織り、タオルを肩にかけた紫道が寝室に入ってきた。 「あ……ま、待たせたな」  緊張してるのか、どもる紫道。  ほんとに。  抱きたいと思った男をここまで長く待ったの、はじめてだ。  遊び相手やセフレは、ほとんどが会って間を置かずセックスする感じだったし。  時間をかけて落とすなんて労力かけたの、紫道が初だし。    だから、こんなにワクワクしてる。  やる気満々。  ヤバ……。  最初から飛ばし過ぎないように、セーブ出来るかな……? 「来て」  立ち上がらず。ベッドに腰かけたまま、笑みを浮かべた。  紫道の視線が、僕の手元に留まる。 「約束の」  手にした拘束具をちょっと持ち上げて、鎖をジャラリと鳴らすと。紫道がゆっくりとこっちに歩いてきて、僕の正面で足を止めた。 「玲史……それ、マジで使うのか?」 「うん」 「縛らなくても、俺は逃げない。お前を蹴り飛ばしたりもしないぞ」 「わかってるよ。そのためじゃないの。きみもわかってるでしょ?」 「……まぁ、な」  紫道が息を吐く。 「いつも、そういうの使ってるのか?」 「んーだいたいは」  問いに答えて。 「あ。コレ新品だから、紫道用ね。合皮のベルト式。ほかのもあるよ。枷のとこもチェーンのやつとか縄もあるけど、暴れると痛くなるかも……」 「それでいい」  オプションを提示するも、即決。 「それにしてくれ」 「じゃあ、ローブ脱いで横になって」  セミダブルのベッドに上がり、シーツをポンポン叩いた。 「俺だけか……?」 「僕も脱ぐよ。きみのセットが終わったら」  ためらいがちにタオルをベッド脇にあるデスクのイスにかけ、紫道がバスローブのヒモを外す。 「抜いてねぇから……こんなんだ」  裸になった紫道のペニスは、重力に反して完全に上向き。 「すぐ出させてあげる」  とりあえず、1回はね。  期待が羞恥を上回ったらしい紫道が、サッとベッドの上にきて仰向けになった。 「どうすりゃいい?」 「両手上げて」  言う通りにした紫道の右手首に枷をつける。緩くなくキツくなく。  そして、繋がる鎖をベッドヘッドの柵に回し……。 「手際がいいな」 「拘束具は必需品だもん」  紫道に聞かれて答える間に、左手首のベルト調節も完了。 「いつも、ここで……男を縛るのか?」   「ううん。うちでセックスしたことはないよ」 「は……!?」 「清崇とか、セフレや遊び相手とはホテルでやるの」  紫道が驚く理由はわからないけど、本当のこと。  自分の家はプライベート空間だからかな。やるだけの相手を家に連れてくるのって、なんか気が進まなかったっていうか。  でも。 「紫道は恋人だから」 「……光栄だ、うッ……!」  枷で両手を頭上に固定された紫道の股を割って。間に入り込んだ僕の膝が、カチカチのペニスにあたった。 「足も縛っていいよね?」  もうひと組の、手首用より大きめな枷を見せる。 「腿につけて手首のと繋げて、足開いた状態にしとくの。そのほうが、いろいろやりやすいし……」 「ノーだ!」  紫道が強く拒否する。 「そんなもんつけられちゃ……」 「恥ずかしい?」 「あたりまえだろ」 「どうせ、全部丸見えになるじゃん。アナルに挿れるんだからさ」  目の前にある紫道の瞳を見つめる。 「僕にだけ、見せてよ」 「……足まで縛るのは、カンベンしてくれ。頼む」  悲痛な願いを含んだ声。  すでにほんのり染まってる頬。  隠せない欲に濡れる瞳が、僕だけを映してる。 「じゃあ、今日は手だけで。でも……」  その代わり……。 「加減はするけど、容赦はしないからね」 「ああ……お前の好きにしろ……もう、早く……」  ガマンも限界なのか、たまらないセリフを吐く紫道と目を合わせたまま。バスローブを肩から落とし、屈み込み。 「オッケー」  紫道の唇に舌を這わせた。

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