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127 傷つかないもん:R

「ッん! うッあッ……! ッく、ふ……ッ」  イッた博己(ひろき)がペニスをズルリとゆっくり抜いた時。奥までガツガツ突かれたあとで前立腺を擦られて、あやうくイキかけた。  けど、イかず。  高まった射精感を逃そうと、全身を震わせて。深い呼吸を繰り返す。 「ごめん、玲史。イキたくて泣いてるね」  頭の上で、博己の声。  泣いてない。  あ……目じゃなくて、涙じゃなくて。ペニス。カウパーか。  不覚にもガチガチで。少し扱けば秒で達する状態のペニスを、シーツに擦りつけて解放しようとしないくらいには理性的。まだ今は。 「理玖(りく)に、イカせてもらって」  り……く?  誰、ソレ。  神野は龍介っていってたから……。 「次、俺だって!」  八代の声。てことは、理玖は八代じゃない。    そういえば……『続きはコイツがやる』って言った時、神野の横に友井がいて……目配せっぽいのをしてたような気がする。  顔を横にして、ギャラリーに目を向けた。  僕の後ろ、博己を見てるっぽい神野。僕をじっと見てる清崇(きよたか)……の腕を掴んで、城戸(きど)がこっちに来る。  友井は……あ、ドアのとこ。スマホ見て何して……。 「っわ!?」  いきなり90度回転した視界に、欲望剥き出しの八代の顔。 「せっかくのかわいいツラ……」  ズボンとパンツを膝まで下ろした八代が、仰向けになった僕の脚を持ち上げる。 「泣いてイクとこ、よく見せろよ」  はー最悪。  何で正常位で犯すかなぁ。バックでいいじゃん? その顔見ながらやられたくないんだけど。  泣くわけないし。  イク、のはしょうがない。生理現象だもん。 「おまちかねのちんぽ、やる……ぜ!」 「うッあ……」  八代のペニスが入ってきた。  博己にやられた直後のアナルに、新たな痛みはない。最初に挿れられた時のピリつく痛みも、もうない。  ついでに。全然気持ちよくもない。  ヘッタクソ!……って、言ってやりたいけどガマン。  コレは取り引き。  紫道(しのみち)の安全と引き換えに払うペイ。  まぁ、払う義務も責もなくて。神野のいいようにされてる感がないとはいえない、けども。  真意を隠せてるから。  騙せてるから。  大切なモノを守れてるから。  嫌だけど、苦じゃないの。  大したことないの。  ただのセックス。  射精しても。  快感に身体がよろこんでも。  汚い精液にまみれても。  洗えるし。  屈辱なんか、別に平気だし。  プライドなんか、別に惜しくないし。  こんなコトで、傷つかないもん。 「う……あー気持ちイ、出そうっ」  ヒトリヨガリに腰を振って数分、八代がストロークを緩める。 「何で、イカねぇ?」  聞かれても困る。  一応、控えめに声は出してあげてたんだけどね。 「きみが……ヘタ、だから……?」  ガマンしなくていいや。  反抗的なところも見せて、煽って。最初は強がって、崩れて。最後にボロボロになるほうが満足するでしょ、神野は。  男経験が少ないのか。八代はマジでヘタクソなんだもん。  いい加減、中途半端にナカ擦られて。微妙な快感に晒されてるの、かえってツラいから。  ムカついてガンガン突いて、さっさと終えてほしい。 「ひとり、でイッて……いいよ」 「……くそっ! 一発目でヨユーねぇだけ、だってッ!」  腰を大きく回してナカをガリガリ抉る八代。 「あッうッ……!」  前立腺付近への強い刺激に声を上げた。  乱暴にされるのは本意じゃないし。機嫌損ねて意地になられても面倒だし。ほんの少しはサービスしてあげるかな。 「んッ、や……もっと、ゆっくりッ!」    ねだるように、八代の背中に脚を絡める。 「はッ! かわいいこと、言えんじゃんっ。お……あっち、ハデにイッてるぜ」  八代が視線を横にやった。  広いベッドの少し離れた場所で、城戸が清崇をバックで犯してる。  角度的に清崇の顔は見えないし。僕の名前を呼んでもいないから、清崇がどういう方向で演技してるかわからないけど……喘ぐ声は聞こえてた。  今のひときわ大きな声も、聞こえた。  僕と違って、清崇は素で喘いでる。僕にとっては聞き慣れたヨガり声。  城戸が上手いとは思えないけど、イイトコロにちょうどあたるように突かれたら。快感に抗えないのは当然のこと。そうなるように僕が開発しちゃったし。清崇は認めたくないかもだけど、レイプに近いコレはマゾにとってはプラスに働く要素だろうし。  クズにやられてイク自分を責める必要はゼロって、わかってるよね。 「も……ムリッ出る!」  限界らしく、八代が腰を速めてガンガン突く。 「いっ……」  ちょっと痛いけど、快感には遠……。 「あッ!? んッッ!」  完勃ちのペニスを握られて。 「お前もイケよッ! うッ……!」  ぎゅッぎゅッと扱かれて、ナカでペニスをビクビクされれば、イクしかない。  博己にやられてイケてなかったから、堪えたところで次は確実にイクだろうし。イッたからって、ダメでも負けでもないし。 「んッッくッ……ッ!」  ナマあったかい自分の精液が胸にかかる。  屈辱的なセックスでも、イケば普通に気持ちイイし。出した解放感で身体は楽になったし。  でも。  ネコはやっぱり性に合わない。抱くほうがいい。満たされる。  今のも、ペニスに刺激があってイッたし。  なのに。 「よかったかよ?」  得意げにされるとムカつく。  でもさ。 「あっちやったら、また抱いてやるぜ」  そう。これで終わりじゃない。  まだ2人。  まだ続く。  10代のヤリ盛り。僕と清崇をひとり1回ずつやってオシマイならラッキー。  身体は反応してもオッケーだけど、よけいなストレスで精神消耗しちゃダメ。  だから。 「ッはぁ……ふ、はぁ……んッ」 「またな」  ムダに悪態つかず。かといって、媚びるわけじゃなく。  僕の身体から離れる八代を、無言で見送った。  射精後の心地いい脱力感が抜ける間もなく。 「お前、いつもは挿れる側ってマジ?」  順番待ちしてたみたいに、すぐに城戸が視界に現れた。 「ケツ掘られんの、プライドズタボロじゃね? ノブにやられてちゃんとイッたんだろ? 目覚めちまった?」  何その質問攻め。  おしゃべりくんなの? 興奮してるの? 「きみに、突っ込んであげよっか?」  イエスノーイエスノー……って答えるのめんどくさいから、代わりに尋ねた。 「男にやられんのはパス」  城戸が僕の身体に手を伸ばす。 「だけど、やるのはマジでイイ。ハマりそうでヤバいぜ」  腰を掴まれ裏返され。 「後ろからな」  四つん這いで脚を開かせられる。 「おーすげードロドロ。エッロ……」  バックなのはいい。顔が見えないから。  清崇が初めてのアナルセックスかはわからないけど、不慣れそうなのもいい。イイトコロを攻めたり絶妙に焦らしたりのテクがないから。  けど……。 「ふ……ぅッく……ッ!」  しっかりと硬いペニスが、アナルの中に押し込まれた。  清崇で出したばっかで、もうバキバキなの?  賢者タイムってないの?  そんな欲求不満で飢えてたの?  攻めてイカせまくりたいって欲求があって抱くならともかく、恋人でもセフレでもない相手に連続で勃起状態保てるんだ?  ただの性欲処理なら、たいがいは出せば暫くは収まるものじゃない?  まぁ、続けて何回もオナる男もいるし。性欲の度合いは人それぞれか。  自分がタチだから気にしたことなかったけど、ネコで拒否出来ずに連続はキツい。キツくなってく。やりたくてやってるんじゃないから、なおさら。  あーあ……。  コレ、僕と清崇をひとり2回ずつとか……余裕であり得るかも。まだ昼で時間もあって。邪魔も入らない場所で。  コイツらが飽きるまで。  僕たちがボロボロになるまで。  神野が満足するまで、パーティーは終わらない。  あー……先は長そうだなぁ。

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