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130 メチャ怒ってるよね!?:R

 いつからいたのか。  濡れた髪の博己(ひろき)が微笑んだ。  やさしげじゃなく。楽しげじゃなく。かといって、悲しげじゃなく。意地悪げでもなく。この部屋で最初に見た時にあった危うさはなく、イカれた感じもなく。  僕を犯してスッキリしたのか。清崇(きよたか)に拒絶されて吹っ切れたのか。  狂わずに。現実に戻って来れた?  神野の望み通り?  もう、僕たちがボロボロになる必要ないんじゃない?  スマホ……何でこっち、向けて……。 「撮るな」  友井が言った。  あー……動画?  レイプムービーをネタにして、もう一度。二度。三度、とか。  クズの典型だよね。  はーメンドクサ。  そんな脅し、僕には効かないけど……。 「今日で終いだ」  そう。  今日ここで。  コレで終わり。  そういう取り引き……。 「消せ……あとに残さないでくれ」 「動画じゃないよ。信じてもらえないから、ビデオ通話にしたの」  友井に返す博己の言葉がイミフ。  え?  何?  信じ……?  つう、わ……? 「話す?」 「は!? 何……誰、と……」  僕同様、友井の頭も混乱気味らしく。  でも。セックスの最中で。どんな思いで僕を犯してるかは別として。身体は快感を求めるらしく。  無意識に動くらしい腰が、僕を攻める。 「ッぁあ……ん、うッ!」 『玲史!』 『やめろ!』 『友井!』  口から漏れる声に重なる声……博己のスマホから漏れる、声……。  僕を呼んだ……?  紫道(しのみち)……!!?  ウソ、でしょ。  気のせい。  ソラミミ……。 「それ、俺の……じゃあ、坂口……か?」  友井の……?  坂口……?  え……? 「うん。ごめんね。鳴りっぱだったから出ちゃった」 「……切れ」 「だって。ね? ウソじゃなかったでしょ?」  博己がスマホに話しかける。 『くっそッ! 友井!』  坂口の声……てこと、は。  さっきの、ソラミミ……じゃなくて。  ほんとに紫道、なの……?  コレ、見ちゃった……の?  マズい、よね。  メチャ怒ってるよね!?  ごまかせない。  ごまかしようがない。  何か、うまい理由……考えなきゃ。  あ……それより。  もっとマズいことに、なったら……。 「今? 混ざりたいの?」  博己が喋ってる。 「無理だよ……」  相手……坂口の声は聞き取れない。 「理玖(りく)はまだ……龍介(りゅうすけ)も。え……友達も一緒? 玲史と清崇の?」  内容はわからない。  けど……。 「ムダだよ……犯罪でしょソレ」  何かよからぬコト、言ってそう。考えてそう。  坂口がっていうより……紫道が。  何か、僕のために……僕を助けるために……助ける必要ないのに……コレは、僕が選んだ……って、知らないから……。  マズい、じゃん。  清崇と僕の、ウソがバレたら……。  坂口と一緒に紫道……幸汰(こうた)もいる?  たまきは? たまきがいれば、少しは……ダメか。  あ、でも……友達って言った?  あー頭、回らない。  ナカが、もう……。  「清崇は、龍介がやるところ」  博己が視界から外れた。 「坂口が何の用だ」 「玲史と知り合いみたい。やめろ、だって」 「……もう遅い」 「ッッッ!? あぁアッ! ふッア……!!」 「次は俺が抱いてあげる」 「や……だ、めだッ! あ……ッうッ……!」 「レイプでもいい。もう……底まで堕ちるんだ」 「ひッ……アッッ!」  耳に入る清崇のほうの声と。脳内に浮かぶ、紫道がしでかしそうなコトに気がいってて。本格的に腰を振り始めた友井のペニスが前立腺を強く擦る刺激に、身体が痺れる。巡る快感に腸壁が脈を打つ。 「どうした? ナカが素直になったな」 「んッあ……ッ! ああッ……ッ!」  喘ぎ声と顎を上げて、快感に従順な演出。  お望みなら、ガワも素直になってあげる……都合よく動いてもらうために。  途切れがちな思考をフルで回す。  僕と清崇が恋人同士のフリしてるのを、たまきは知ってる。たまきはバカじゃない。幸汰にそれを伝えてるはず。紫道にも、伝わってるはず。理由はわからなくても、意味があると思ってくれるはず。  そうする必要がある……って。  そして。  今、こうする必要がある……って。  あと。  例の画像から、神野が八代と繋がってて。八代と繋がってるのは沢渡で。だから、紫道は沢渡に聞いたはず。  何か知ってるか。心当たりはないか。  沢渡は僕の味方。僕の選択も理解出来るはず。何を最優先してるか、わかるはず。  紫道をうまく止めてくれるはず。  根拠はないけど、大丈夫……な気がする。  僕とつき合ってるのは自分だって、紫道はバラさない。神野たちにバレない。  残る心配は……。  紫道がムチャしないかどうか。  僕がやられてるの、見ちゃったのは仕方ない。  でも。  画面越し。友井をブン殴れない。時間が経てば少しは落ち着くはず。  今出来るのは…。  万が一。最悪。この場に紫道が現れた時に……。  やられてる真っ最中って場面にはしないこと!  コレを目のあたりにしたら。紫道が……何するかわからないもん。  それだけは絶対に避けないと。  そのために。  友井にがんばってもらわないと。 「……ッ! あ、もうッイキ……そッ!」  実際、イキたい。  もう、限界……なのに。  イケない!  出すモノないから、出せない……のに。出さないでイクの……どうやるの。  開発されてないアナルでドライは、キビシイ……。 「空イキ、出来ないのか?」  友井はお見通しで。 「安心しろ。イカせてやる」  僕の腰を高い位置に抱え込む。 「奥はクる……知ってるよな」 「や……待ってッ! ッ! くッ……ッ!」  苦し……!  奥の。結腸の手前の肉に、ペニスが刺さる。  そこを攻めるのは慣れてるけど、攻められるのは慣れてなくて。馴染みのない感覺で。  コントロール不能な快感になすすべナシ。 「ッぁア、んッ……ぅッッ! イッ……ッッ!」  射精とは違う、点じゃなく線で来る絶頂感。  イイんだろうけど。  イイんだけど。  身体が貪る快楽としては、出してイクより強いんだけど……。  抱いてイクほうがいい。  僕の攻めで喘ぐ男を見ながらイクほうがいい。  イカせるほうが満足度高い。ずっと楽しい。  紫道を抱きたい……な。 「まだだ」  ドライでイク僕のナカを突く友井は、動きを止めず。 「アッ……まッ、ていまイッ……ンッあ……ッ!」  イッてるところに畳みかけるのは、お約束。  イヤって言われるほど興奮して攻めるタイプか。ほしい、もっとって言われるほど熱くなって張り切るタイプか。友井は……どっち?  どんどん攻めてほしい。  ガンガン突きまくってほしい。  耐えられない快楽で、身体が僕の頭から離れて。  意識が僕から離れて……。  僕が飛ぶまで。  紫道が来ちゃう前に、終わらせてほしい。 「やッも……ぅムリッ! や、めッあアア……ッ!」  甘く。でも、苦しげな声上げて。嫌がって見せる。 「ツラいか?」  聞かれて。 「ッつら、い……ッから、も……うッ!」  答えて。 「イケるだろ」  攻められて。 「ア……やぁッ! ク……るッッ!」  出さずにイッて。 「その調子だ」  さらに攻められ。  身体を反らす。  痙攣が止まる前に、次が来る。 「ッッ! あ……ンンンッ……ッ!」  マジ、で……ツラ……ッ。 「ひアッ……れいッじッ!」  清崇の声。  そう、だ……。  今のうち、に……。 「きよた、か……ッ!」  呼んでほしいんでしょ?  すぐそこで犯されてる恋人の名前を。  みじめったらしく。  ボロボロになって。 「き、よたかッ……アッッやッ……!」 「いいぞ」  満足したふうでいて暗い瞳の友井の顔が、ブレる。  ツラい、のに。  また、ドライでイク……! 「ッん……あ、清崇ッ! 助け……アアッッッ!」 「……助けは来ない」  友井が上体を倒し、ピストンを緩める。 「お前は、クズにやられてイキまくって……」  耳元に、友井の荒い息遣い。 「トんじまえ」  え……何!? 「早く、もう……終わってくれ!」  悲痛な声が、耳に響く。  ど……ういう意味?  友井も、終わってほしいの? 終わらせたいの? 満足したから? 自分がイキそうだから?  どうでもいい、か……望むところが同じ、なら……。  身体を起こした友井が、アナルの奥でグリッと回したペニスをギリギリまで引っこ抜き。 「くッッッう……ッ!」  大きなスライドを繰り返し。  前立腺をカリで弾き。ガツガツ奥を突き。ナカをゴリゴリ削り……攻め立てる。 「ッヤッア、アアッッッ!! イッ! ッッ……ッ!!!」  連続のドライで、意識が揺れる。ヒビが入る。欠け落ち、てく……。  もう……ムリ……。  あ…よかった……間に合った……。  でも……来ないといい、なぁ……。  あんまり、怒んないで……ね……。  紫道……。

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