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第5章③

 抱き寄せられた時、カトウはクリアウォーターの腰のものがすでに硬くそそり立っていることに気づいた。瞳の光彩は、今や欲情で(よこしま)に輝いている。その輝きは、押さえ込んだ獲物に牙を立て、存分に味わおうとするライオンを思わせた。 「…はだかにしてみた」 「は?」 「頭の中で。君のこの……」  大きな乾いた手がカトウの背中をなでまわす。それだけでも赤面するには十分なのに、クリアウォーターはカトウのうなじに頬を寄せてきた。首を甘く噛まれたカトウの口から、思わず切ない声がもれた。 「この後ろ姿を。うなじも、肩も、背中も、腰も。かわいいお尻も、そこから伸びる太ももも、引き締まった足も。それだけで、たまらなくなった」 「……想像力豊かですね」  どこかずれたカトウの反応に、クリアウォーターがのどを鳴らす。むっとしたカトウは、わざと挑発的な目で恋人を見あげた。 「それだけ想像力が豊かなら。実物は見なくても十分ですかね」 「まさか。本物に勝るものはないよ」  言うや、クリアウォーターはカトウのあごをつかんで激しく唇をむさぼってきた。  熱く、ねっとりした舌で、執拗に、そして容赦なく、クリアウォーターはカトウの口腔を犯した。ウォーミングアップは完全無視。それで、カトウの方もかまわなかった。  互いの息づかいと、うめきと、唇を吸う音が、キッチンの空間を満たしていく。熱を帯びる腰が砕けそうになり、カトウは流し台に手をついた。その状態でなおも舌を絡ませる。  それでも、しまいに唾液があごをつたい、カトウは足が立たなくなってきた。そのまま、床にずるずるとしゃがみこみそうになった時、背中と太ももの下にたくましい腕が差し入れられた。 「わっ…」 「相変わらず軽いね。前よりは重くなった気がするけど」  幼い子どものように抱えあげられたカトウは、真っ赤な顔でクリアウォーターをにらんだ。だが長く続くはずもない。自分の方から、クリアウォーターの胸に顔をうずめた。  恋人が笑う声が耳元をかすめ、カトウは恥ずかしさと幸福感がないまぜとなり、目を閉じた。クリアウォーターが歩きだしたので、てっきりそのまま寝室に続く階段へ向かうものと思っていた。ところが、そのはるか手前のリビングのソファの上にカトウは下ろされた。  「えっ?」と思う間もなく、クリアウォーターが覆いかぶさってきた。

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