15 / 30
第5章③
抱き寄せられた時、カトウはクリアウォーターの腰のものがすでに硬くそそり立っていることに気づいた。瞳の光彩は、今や欲情で邪 に輝いている。その輝きは、押さえ込んだ獲物に牙を立て、存分に味わおうとするライオンを思わせた。
「…はだかにしてみた」
「は?」
「頭の中で。君のこの……」
大きな乾いた手がカトウの背中をなでまわす。それだけでも赤面するには十分なのに、クリアウォーターはカトウのうなじに頬を寄せてきた。首を甘く噛まれたカトウの口から、思わず切ない声がもれた。
「この後ろ姿を。うなじも、肩も、背中も、腰も。かわいいお尻も、そこから伸びる太ももも、引き締まった足も。それだけで、たまらなくなった」
「……想像力豊かですね」
どこかずれたカトウの反応に、クリアウォーターがのどを鳴らす。むっとしたカトウは、わざと挑発的な目で恋人を見あげた。
「それだけ想像力が豊かなら。実物は見なくても十分ですかね」
「まさか。本物に勝るものはないよ」
言うや、クリアウォーターはカトウのあごをつかんで激しく唇をむさぼってきた。
熱く、ねっとりした舌で、執拗に、そして容赦なく、クリアウォーターはカトウの口腔を犯した。ウォーミングアップは完全無視。それで、カトウの方もかまわなかった。
互いの息づかいと、うめきと、唇を吸う音が、キッチンの空間を満たしていく。熱を帯びる腰が砕けそうになり、カトウは流し台に手をついた。その状態でなおも舌を絡ませる。
それでも、しまいに唾液があごをつたい、カトウは足が立たなくなってきた。そのまま、床にずるずるとしゃがみこみそうになった時、背中と太ももの下にたくましい腕が差し入れられた。
「わっ…」
「相変わらず軽いね。前よりは重くなった気がするけど」
幼い子どものように抱えあげられたカトウは、真っ赤な顔でクリアウォーターをにらんだ。だが長く続くはずもない。自分の方から、クリアウォーターの胸に顔をうずめた。
恋人が笑う声が耳元をかすめ、カトウは恥ずかしさと幸福感がないまぜとなり、目を閉じた。クリアウォーターが歩きだしたので、てっきりそのまま寝室に続く階段へ向かうものと思っていた。ところが、そのはるか手前のリビングのソファの上にカトウは下ろされた。
「えっ?」と思う間もなく、クリアウォーターが覆いかぶさってきた。
ともだちにシェアしよう!