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第5話(2-1)
※一部カメラマンという職業に対して不適切な師弟表現がありますが、フィクションです。演出の都合上ご了承下さい。
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「家に遊びに来てよ。」と呼び出しておいて、「遊ぶって何?忙しい、めんどくさい、花粉もお前もウザイ」と返事をたら…結局居候先まで迎えにきた翔。
珊瑚は作業の途中だったので、ノートPCと一応カメラを一台持ってヤツ…翔の車に乗った。
連れて来られたのは割りとキレイなマンションで、夜景も見えるらしく「良かったら夜景の写真撮る?」と聞かれたが、そういうことは家を出る前に言って欲しいものだ…と思う珊瑚。
「機材が足んねーよ。」
「そうなの? ごめんね。
まぁとりあえず入ってよ。
テキトーに寛いでて。」
言われなくてもと、珊瑚はズカズカ部屋の中に入ると広いリビングの一角…窓際に電子ピアノと電子ドラム、シンセサイザー、なんだか分からない機材とPC、ギター、そしてヴァイオリンも置かれていた。
「そーいえばミュージシャンだったね?」
「そうだよ(笑)」
「けっこう売れてるの?
つーか、楽器多くない?」
「それなりにかなー?
いろいろ手を出してみてるだけだよー。」
「…弾いてもいい?」
「弾けるの?
どれでもどうぞ。」
引寄せられるようにヴァイオリンを手にした珊瑚は自身の耳だけでチューニングをして弦を当てる。
リストを奏でる珊瑚の演奏は完璧で翔を驚かせた。
「いいヴァイオリンだけど…
あんまり弾いてもらってないみたい…。」
「大学辞めてバンドやりたいって言ったら親に勘当されて辞めたんだー。でも楽器は持ってきちゃった…!
実は紅葉くんの先輩だよー。」
翔は音楽のセンスは良いと従姉妹のみなが言っていたのを思い出した珊瑚。
なるほど、基礎は出来ていてバンドをやっているようだ。
次はピアノでショパンを奏でていく。
「…あんたの曲ってどんなの?」
「えっ? あぁ…えっと…ちょっと待ってね!」
翔がPCでLiT Jの新曲を聴かせると、へぇーと気のない返事をした珊瑚は即興でサビの部分のメロディーを弾いてみせた。
「…俺が2週間練りに練ったサビをっ!!」
「そーなの?
こっちのが良くない?」
ビミョーにアレンジを加えたラインを弾いてみせる珊瑚。
「……確かに。えー、変えたいけどどーしよ…!」
「好きに使えばいーよ。」
「みなちゃんも紅葉くんもスゴいけど、珊瑚くんも才能ヤバいね。」
「ただの遺伝でしょ?
みなはギフトを2つもらったけど、周りの音に影響されやすくて…まぁ、要はバランスが悪いわけ。
紅葉はやれば出来るんだけど競争心がない。あと頭がイマイチだから飲み込みが悪くて、お子様だから恋愛系の曲がヘタ。
で、俺は完璧っ!
覚えも腕も性能もいいよ。」
得意気に話す珊瑚…。
「じゃあなんで音楽やらないのー?
もったいない。」
こんなに才能があるのに…と翔は呟いた。
「まぁ、得意なこととやりたいことは違う場合もあるじゃん?
あと…写真は形に残るから…かな。」
「音楽だって残るよ?」
「んー、でも…バンドやってたら分かると思うけどさ、一番旬な音って奏でたその瞬間が全てで、譜面通り弾いたって二度と同じ音にはならないじゃん?
LIVEとかならお客さん含めてのものだと思うから余計にそう感じない?
そういう一瞬の幸せを追いかけるのもいいと思うけど、俺はね、過去を振り返れる物を遺したいんだよ。」
「珊瑚って…実はスゲー考えてんだね。
家族のこともだけど…
カメラマンなんてチャラいだけだと思ってた…ごめん…。」
「バンドマンのあんたにチャラいとか言われたくないよ(笑)」
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