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第7話(3-1)※微R18
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翔のバンドの車に乗せてもらい、北上しながら桜の撮影を続ける珊瑚。
翔は時間の許す限り彼のサポートとして撮影スポットまで送迎をしたり、邪魔にならないように撮影の様子を見守ったりしていた。
普段の軽口はどこへやら、終始無言でファインダーを覗き、機材の調整をする珊瑚の真剣な仕事っぷりに感心する翔…
なんと言っても彼の写真を何枚も見ていくうちにすっかりのファンになってしまったのだ。
時折、休憩を挟む珊瑚に飲み物や軽食を差し入れる献身ぶりだ。
しかし珊瑚は…
「あのさー…集中出来ないから昼寝でもしててくれない?」
と、つれない様子だ。
LiT J滞在先のホテルでは、翔の部屋に一緒に泊めてもらい、宿代代わりに…と、珊瑚から切り出すと翔は戸惑いながらも結局身体の関係にもなるのだが…
どちらが上かは毎回じゃんけんで決めていて、あまり勝率のよくない翔はぐったりしている様子だ。
今日も相変わらずの2人は…
「LIVE見にきてよー…!
そしたら珊瑚くんも絶対俺に惚れると思うよっ!!」
ドラムだけは俺の自慢なんだと、怪我が治ったばかりの右手でドラムスティックを回す翔。
「気が向いたらねー。
俺は忙しい。」
撮影した写真をチェックしたり、夜も海外のクライアントとやり取りをしたり、夜桜の撮影にも出掛ける珊瑚は確かに毎日忙しそうだ。
「キレーな写真…。俺これ好き。」
翔がそう言った、風に靡く桜の花びらと1本の大きな桜の木の写真は珊瑚もお気に入りの一枚だ。
「まぁまぁ…かな。」
「珊瑚のことも好き…。」
「……。」
「何か言ってよっ!」
「重い。寄りかかるなっ!」
「ひどい……。」
ノートPCを操作する珊瑚を後ろから抱き締めていた翔は項垂れて珊瑚を解放するとそのままベッドへ沈んだ。
しばらくするとその腰に跨がる珊瑚…。
「な、に…?」
「今日の分。」
そう言って翔の項に口付けると、ズボンの前に手を伸ばしていく。
「そーじゃなくて…!
フツーに"したいな"って言って欲しいんだよな…(苦笑)」
文句はいいつつ、チャンスは逃したくないので誘いにはのる翔…。
キスで絡み合う舌を唾液ごと吸えば、さっきまでの珊瑚とは違う、より妖艶な彼の表情が現れる。
「ほんとに好き…。」
「いーから黙ってヤってよ。」
ピロートークもなく、再びPCに向かう珊瑚。
翔は煙草を吸いながらその画面を覗き込んだ。
「何してんの?」
「あんたがヴァイオリン貸してくれたからさ、昨夜ストリートで弾いたやつを編集してアップしてる。」
翔は自身のヴァイオリンを珊瑚に譲ると言ったのだが、また対価を身体で払おうとするので"貸す"と言い直したのだ。
珊瑚はしぶしぶ承諾し、腕ならしに駅前で弾いてきたようだ。
「やっぱ巧い…。
けっこう人集まってるねー。」
「紅葉のこと知ってる人には紅葉だと思われてる…仮面でもつけよーかな。(苦笑)」
「なんで?
気にしなきゃ良くない?」
「俺の存在があいつの邪魔になんなきゃいーけど…!」
「えっ?!」
「…俺はゲイってこと隠して生きたくないし、日本はまだまだLGBTQが浸透してないからな。」
短い滞在の間でも日本では生きにくいのだと、珊瑚は感じているようだ。
「これなんかもアップしたいのに、紅葉のカレシがダメだって言うし…!
もったいないけど、削除すっかなぁ…!」
「どれー…?」
紅葉のカレシは翔の後輩の凪なので、気になって翔が聞くと動画を見せてくれた。
紅葉にキスのコツを教える動画で、2人の会話はドイツ語だが、和訳のテロップも入れている。
最終的に実践でディープキスをする珊瑚に眼を開けたまま固まる紅葉…!
「なんつーことをっ!!」
翔が動揺している。
これは凪がNGにするはずたと激しく同意する。
「冥福…!
"エロいことなんてなんも知りません"って感じなのに、ちょっと気持ち良さそうな顔してんの堪んないっ!もう一回見せてよー。」
すっかり紅葉に夢中らしい。
珊瑚は彼の望み通り再生してやる。
「…やっぱり紅葉なんだな。」
「はっ!いや、なんつーか……!」
「昔からそうなんだよね。
あんただけじゃなくて、みんな…紅葉の方が可愛いとか言って勝手に見比べて最終的にあいつを選ぶ。
俺の方が…見た目も良いし、背も高いし、勉強も出来るのに…(苦笑)」
そう呟くと動画を削除する珊瑚。
「えっと…!
意外性という意味で紅葉くんの方見てたけど、あの子は凪の恋人だし。凪は大事な後輩だし!
珊瑚くんのそーいう顔はリアルで見れてますし…っ!
…出来ればそーいう顔見せるのは俺だけにしてもらいたいってゆーか…!」
「…だからそれはさ…っ!
まぁ、こういうBL系動画ってけっこう人気あるんだよねー。あんたそこそこ人気あるんでしょ?一緒に撮ってよ。」
「…恋人になってくれたらいくらでも撮るよ!」
「…生意気…っ!!」
「ハァー?どっちがっ?!」
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