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第15話(7-1)

8/2 1100 「どうー?楽しい?」 「ねみーよ…(苦笑)」 明け方まで抱き合って、翌日2人がやってきたのは都内の水族館。 海はそんなに好きではないと言っていた珊瑚だが、海の生き物の展示されている水族館なら暑さも凌げるし、楽しめるのではと思って連れ出したのだ。 しかし夏休みの昼時、館内はカップルと家族連れ、仲良しの女の子グループなどで混雑している。 「これ…魚より人間見に来てる感じだな。」 興奮から走り回って転んだちびっこを慣れた手付きで抱き起こした珊瑚はそう言った。 「まぁ、そう言わず…! せっかくのデートじゃん! ショーとか見る?」 ちょうどもうすぐショーが始まる時間らしく、館内はどんどん人が捌けていく。 「外暑いから、チラ見でいい。 今のうちに魚を見よう。」 大きな水槽の前に移動した2人は様々な魚たちが泳ぐ様子を眺めた。 「なんか…腹減ってきたな…。 旨いもん食わせてくれるんだよね? 昼飯は寿司にしてよ。」 「お前…っ!! 残酷なこと言うなぁ…(苦笑)」 「だってあれマグロでしょ? 旨そうじゃない?」 「…確かに…ちょっと…!(苦笑) 寿司屋ここにはないから、見終わったらな?」 「了解ー。」 2人はクラゲの水槽の前に移動する。 照明を落とし、ゆったりとした雰囲気のエリアにはたくさんのクラゲたちが泳いでいて、見ているだけで涼しげで、癒される。 「気に入った?」 「…うん。」 けっこう長い時間見入っている珊瑚の隣に立ち、翔はそっと手を繋いだ。 「人に見られるけど…?」 一応帽子をかぶってきているが、翔もそれなりに有名人だ。でも本人は気にしないらしい。 「別にいいよ。 ねー、ここキレイだし、2人で写真撮ろうよ。」 「誰かに撮ってもらう?」 カメラを掲げている珊瑚はそう聞くが、翔はスマホでもいーじゃん!と自撮りする気のようだ。 2人は見つめ合って、翔がシャッターを切るタイミングでゆっくりと唇を重ねた。 「ほら、十分キレイに撮れてる! SNSに載せても恥ずかしくない出来だな! これが映えってやつだ!」 「クラゲ効果でしょ…。 流行り言葉無理に使うとかオッサンだよ?」 そう言う珊瑚だが、頬は緩んでいて少し嬉しそうだ。 その後、ショーを見て写真を撮る珊瑚。 作品としてではなく、単純に弟たちに見せたいのだという。 「やっぱ動物園かなー。」 イルカやオットセイなど大きな動物に喜ぶこどもたちを見て珊瑚が呟いた。 「あー、弟たちと遊びに行くとこ?」 「そう。真ん中2人は10才と13才だから遊園地がいいって言うんだけど…」 「両方行けば?」 「…金かかるし、紅葉は仕事入ってて行けないって言うから…俺とアビーで4人見張るとなると遊園地は危険。 俺はほとんど幸に付きっきりになるし…ってか、幸が乗れるのあんまないだろうし…。 本当はアビーにもちゃんと遊ばせてやりたいんだけどね。」 「そっか…。 じゃあ俺一緒に行こうか?」 「はっ?! …バカじゃないの? 日本じゃなくてドイツなんだけど…!」 「それは知ってるけど…。 俺なら立派な保護者になれるじゃん!」 大人だからね!と胸を張る翔…。 「…うち、くそ田舎だから移動で半日つぶれるし… ってか、そんなに休めんの? え、…本気?」 「仕事は前後で詰めれば…ラジオは他のメンバーに頼むし。 夏休みとって行こっかなー。」 「子守り雇う方が安上がり…」 「分かってないなー。 …一緒にいたいじゃん…。」 珊瑚はまだ半信半疑だが、笑顔の翔を見上げる。 本当になれば正直助かるし、嬉しいが…そんな急に、家族行事のサポートのために日本からはるばる来るというのだろうか…? 水族館を出る前にお土産コーナーで珊瑚の弟たちにぬいぐるみを買おうとする翔を止める。 「なるべく嵩張らないのにして。下の2人は同じ物。真ん中2人も同じ物。アビーは17だからこどもっぽくないやつ。高い物はダメ!」 「難易度高いって(苦笑)」 結局、家族用にお菓子を1つと下の2人にはシールセット、真ん中2人には靴下、アビーには深海魚の本を選んだ。 「これは珊瑚に…。」 クラゲのついたバッグチャームを珊瑚に渡す。 「ほら、オソロ~」 翔は同じ物を目の前に見せて笑顔を見せる。 普段なら買わないような安物でも恋人とお揃いにはテンションがあがるようだ。 「……ありがと。」 珊瑚は少し照れながらお礼を言って受け取る。 「とりあえず喉乾いたし、飲み物買ってきたけど…。ごめん、あんたの好み分からないからお土産とか買ってない。」 「いいよ、別に。 ジュースありがとう。炭酸系好きだよ。 これがあればここのお土産はもういーじゃん。 次遊びに行く時は珊瑚が選んでよ。」 翔はそう提案して、珊瑚の手を取るとお目当ての寿司屋へ向かおう!と、タクシーを止めた。

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