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第17話(7-3)

そして翌日、 「俺の恋人を世界中の人に自慢したいから!」と、珊瑚に許可を取って水族館で撮ったキス写真を自分のSNSにアップするとすごい反響だったそうだ。 数ある反響の中でも一番翔を震え上がらせたのは友人であるみなと結婚して紅葉だけでなく珊瑚の身内になった光輝からの着信だった。 「俺、付き合ってるって聞いてないですよね…?」の一言で自宅まですっ飛んで行き土下座をした。 年下だが、光輝には全く逆らえる気がしてない翔…今も罵倒とも言えるセリフを黙って聞いている。…もちろん正座で。 「珊瑚…! こんな不誠実な男はやめとけ! 確かに顔が良くて金も持ってるけど、能天気で考えなしだし、女の噂も絶えない節操なしだぞ!」 翔は心の中で "ひどい……。 もう浮気とかしてないのに…! 俺、一応先輩なのに…!" と呟いた。 新妻であるみながカナと買い物へ行ってしまい、半日以上ほったらかしにされている光輝は不機嫌らしい。 「珊瑚、俺は認めないからね…?」 「…家にあった昔のアルバム、みなが写ってるやつも持ってきたけど…?」 珊瑚は光輝相手に交渉に出るようだ。 「…ありがとう。早速スキャンしてきていいかな?」 「喉乾いたからジュースもらっていい?」 「もちろんいいよ。好きなの飲んで。 ゆっくりしていってね。」 「ありがと。 で、付き合うけどいーよね? 俺だって、2人の結婚反対しなかったでしょ? 兄さんが喜ぶと思って重いアルバムまで持ってきたのになぁー。」 「………。」 珊瑚は紅葉のキャラを真似して光輝に訴える。 あとひと押しだ。 「…これ、4才の時のピアノの発表会のDVD。 みな、ピンクのドレス着ててすっごい可愛いんだよね。見ないなら持って帰ろうかな?」 「っ! 珊瑚のこと泣かせたり、簡単に別れたりしたら先輩だけど殴りますから!」 「う、んっ! 分かった…、分かりましたっ! 過去は捨ててちゃんと大事にするって約束します!」 翔の一言に珊瑚も続く。 「俺ももう遊びとか…代償で寝るのは止めるから。」 「えっ、本当に?」 「珊瑚! お前そんなのとしてたのか?!」 光輝が驚くがもう止めたよ、と話す珊瑚。 「次、プラハの老夫婦の元カメラマンのとこで真面目に修行する。カメラの学校の先生もやってるらしくて、家の事情とか話したら時々授業も受けさせてもらえることになったんだ。 アビーも大学入ったら忙しくなるし、なるべく実家の近くで修行して、月に1~2回は家族のサポートしに帰るって生活になると思う。 …ごめん、バイト代は入るけど、自分の移動にも金かかるから、日本にはしばらく来れない…。」 もう決めたのであろう、珊瑚の決意は固かった。 「…俺が会いに行くから。」 「うん…。」 涙声の珊瑚(実は演技)に動揺する光輝…。 家族に強い憧れのある彼は身内となった彼に説教することも多いが、頼られると弱い。 「飛行機のチケットは買ってあげるから、半年に一回は日本においで。みなも紅葉も喜ぶから…。 その間、翔くんは珊瑚の実家に必要なお手伝いさんのお金出してあげて。」 「分かった!珊瑚、俺も真面目に稼いでまた来たの?ってくらい会いに行くから大丈夫だよ!」 「ありがとう。 やっぱり兄さんも最後には優しいよね!」 そう言って光輝にハグをした珊瑚は翔とこっそり顔を見合せて微笑んだ。 光輝からの弟たちへのお土産は有名ブランドの子供靴とアビーには光輝のお下がりのノートPCも手に入れた。 帰宅したみなからはカナと選んでくれたらしい子供服をもらい、凪の母からもらった甚平と一人分ずつセットにしてラッピングしてもらった。 翔も同行してくれることになったのでお土産もたくさん運べる。 きっと弟たちは大喜びだろう。 賑やかな夏休みになりそうだなと思いながら、お土産をスーツケースに詰め込んだ。 End

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