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第18話(8-1)

※翔視点 ドイツ到着後… 飛行機の移動中に本を読んで必死で聞き慣れない発音が多いドイツ語を頭に叩き込んだ。 でも、国内の移動も長くてさすがに疲れて電車内で爆睡… 起きたら目の前には美しくメルヘンな世界が広がっていて、一瞬まだ夢を見ているのかと錯覚したくらいだ…。 しかも俺の脳ミソはポンコツらしく、覚えたはずのドイツ語はほとんど抜けてしまっていた…。 まぁいーや。珊瑚のすぐ下の弟は日本語が喋れるらしいし、所詮相手は子ども…ノリでなんとかなるでしょっ!! 「スゲーね…。 随分可愛らしい街並みだこと…!」 SNS映えすること間違えない伝統的な街並みは日本とは全く違って色鮮やかで可愛らしい。 「そう? 見慣れるとこんなもんかって感じだけどな。」 最寄り駅まで免許を持っている珊瑚のすぐ下の弟、アビーに迎えに来てもらって早速珊瑚の実家を目指す。 多少緊張もあるが、それ以上に恋人がどんな環境で育ったのか興味があった。 車は田舎道をどんどん走り、やがて緑が広がる広大な土地の中に建てられた古い家に辿り着いた。 「じゃあ…覚悟はいいか?」 珊瑚に聞かれて頷いた。 「おうっ!」 とりあえず挨拶は大事だと気合いを入れて玄関を潜ると「ハロー」の前に大声をあげるチビッ子たちに囲まれた。 次から次へと足元をクルクル回り、俺の顔を覗こうと身体にしがみつき離れない… なんだこれ…! 次々に質問?が投げ掛けられていて…みんないっぺんに喋るもんだから…これは日本語だったとしても聞き取れないレベルだ…。 珊瑚は全く気にすることなく、チビッ子を足にくっつけながら家の中へと進んでいく…さすが。 リビングで珊瑚の祖父母に会ってとりあえず名前を名乗って握手をする。 「カケ?」 「…YESっ!」 もうカケでいいやと笑顔で肯定した。 子どもたちは「カケっ?ナニぃ?」と寄ってきて何かを訴えている。 珊瑚が通訳してくれたところによると何故か子どもたちは凪がくると思っていたらしく、お前は料理が出来るのか、お子様ランチを作れるのかと聞いてきているらしい… 「俺が作れるのはチャーハンくらいだけど…(苦笑)」 旗作って立てたらイケる?と珊瑚に聞くが、「お前の料理まずいからやめておけ」と言われた…。 チビッ子2人からは泣かれ、10才位の男の子からは「ウソツキ!」と言われ(多分そんなようなことを言ってると思う、言葉分からないけど…)ボコボコ背中を殴られる…(まぁそんな痛くないけど…) 13才の女の子からは顔を合わせた瞬間からめちゃくちゃ警戒されて距離を置かれているし… しかも頼みの祖父母は珊瑚と少し話をすると、アビーの運転ですぐに旅立っていってしまった。 「じゃああとよろしくねー」みたいな軽いノリだったな… 金婚式の記念旅行だもんな。 早く行きたいよな…。 珊瑚はなんとか弟たちを宥め、先に自分のカメラを2階に運んだ。(確かにここにあると危険だ) そしてアビーが戻ってくると、ここはお土産作戦だと、珊瑚はスーツケースを開けて兄弟たちを年齢順に一列に並ばせた。 ついでに自己紹介をしながら俺にお土産を渡すように言う。 「幸(サチ)、4才。心臓病でペースメーカー入ってる。何かと気をつけて。」 「分かった。 サッちゃん初めまして。カケだよ。よろしくね。」 もう日本語のまま、屈んで挨拶する。 「サチ、Let's say "thank-you"、"ありがとう"?」 「ありがと…。」 はにかみながらお土産の包みを受け取る金髪美少女に破顔した。 「うわ、可愛いっ!!」 「…確かにサチは可愛いよ。 年齢的にはお前の娘でもおかしくないよな。 次アッシュ、6才。 逃げ足がめちゃくちゃ速い。 やんちゃ坊主。」 「thank-you、カケっ!!」 お土産を受け取るとダッシュで部屋の隅へと走っていった。 「フィン、10才 イタズラ好き。」 「thank-you!」 何かを言われるが分からなくて珊瑚に聞く… 「一緒にサッカーやろうって。」 「OK!やろー!」 「次がレニ、13才… あ、コラっ! …ごめん…思春期だから難しくて…。」 可能な限りに距離をとり片手でお土産を受け取るとすぐに2階へ行ってしまった。 誰かさんと似てるな…(笑) 「…いいよ。」 「最後がアビー。 17…あ、もう18だっけ? 勉強もできてしっかり者。 なぁアビー、彼女出来たってマジなの?」 「え、あ…うん。一応…」 彼は照れ臭そうに答えて珊瑚に彼女とのツーショットを見せていた。 「へぇー…けっこう可愛いじゃん! え、もうヤった?ってかお前ちゃんとゴム持ってんのー?あとで分けてやるよ。 女とのやり方はコイツに聞いとけよ!」 「サン兄…(苦笑)」 仮にも恋人に女の子とのSEXの仕方を弟に教えろとはなかなかヒドイ…(苦笑) 俺はいじけて珊瑚の肩に腕を回した。 「何?」 「俺のこと恋人だってみんなに言っておいてくれた?」 「…一応そうだとは言ったけど?」 一応でもちゃんと伝えてくれたことが嬉しくて珊瑚の腰を抱いた。 「何回も言ったけど、家じゃヤらないからな?」 「分かってますよ~ チューくらいいいじゃん?」 キッチンで口付ける2人に構うことなく、弟たちはお土産に夢中だった。 ※翔視点 終了

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