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遠距離恋愛編~浮気疑惑~(2)
ドイツ到着後…
珊瑚の部屋の前で帰りを待つこと4時間…
一応この部屋の合鍵はもらってるけど、さすがに連絡がつかない状況で、多分珊瑚が怒ってるのに勝手に中に入るのはどうかと思って玄関前に座っている翔。
ここまでの道中で何度も恋人にどう説明しようとか、謝罪の言葉を何個も並べてみたりしたけど…
紅葉からの一言がとても重くて、やっぱり珊瑚のことを傷付けてしまったことには代わりないのだと改めて反省する。
辺りが暗くなり始めた頃、ようやく聞き慣れた声が耳に入ってきた。
アパートの下で誰かと話しているようだ。
翔は立ち上がって背筋を伸ばした。
「……。」
翔の姿を見付けても無言の珊瑚…
「珊瑚…!あの…っ!!」
「何時間待ってんの?
危うく通報されるとこだった。
…忙しいんじゃなかったの?」
「…話、したくて。」
とりあえず部屋に入れてくれるらしい。
翔は荷物を手に珊瑚のあとに続いて中へ入った。
「何?
別れ話…?
疲れてるから手短にしてくれる?」
「違っ!!
……ごめんなさい…。」
「……。」
「いろいろ説明したいことはあるけど…
あの写真の件…ごめんなさい。」
「…ふーん。
で、別れたいの?」
「絶対別れたくないです。」
「そう…。
別にいーよ?
女なら浮気してもいいよって煽ったの俺だし…
あの下品な写真にはイラついたけど…
それを他人伝手に聞かされたのもムカついたけど、浮気自体は気にしてない。」
そう言う珊瑚だが、納得しているという訳ではなさそうだ。
「えっと…っ!
一応言い訳…させてもらっても?」
「…どうぞ。」
「飲み会で、悪ふざけが過ぎて、ゲームの中でエナジードリンクって言われて精力剤飲まされたり、強い酒飲まされたりってことがあって。
俺のグラスは飲みやすいけど、強い酒だったみたい。
ほぼ潰されて、二次会で逆ナンしてきた女とホテルに行ったらしいんだけど…
酒飲んでほとんど寝ていて覚えてません。」
「あれ?
…俺たちの始まりに似てるねー?」
珊瑚はわざと明るく言う。
「キスされて、触られて、下脱がされたとこで目が覚めた。…ヤってない。
ホントに。恋人いるからって何十分も説得して断ったよ。」
「…それ、俺に信じろって?」
ガタンと音を立てて椅子に座り、ため息をつく珊瑚…
「あんな写真撮られてヤってないこと証明するのって難しいけど…でも本当なんだ…っ!」
「フツー…そこまできてたらヤるよね?」
「…抱き付かれた時なんか違うって思って…。
なんていうかスゲー違和感あったんだよ。
正直、身体的にはヤろうと思えばヤれたけど…ヤってないし…!
気持ち的に無理だった…。」
「心は裏切ってないってこと?」
「…言い訳です。ごめんなさい。
どうであれ珊瑚にイヤな思いさせた…。
珊瑚は自分さえ我慢すればいいって考えちゃうとこがあるから、俺…それ分かってたのに…!
ホントにごめん…!
許してくれるならなんでもするし…!
マジ、別れたくない。」
しばらくの沈黙のあと、珊瑚は答えた。
「うーん…。
でもこーいうのまたあると思うと俺もキツいかな…。」
「もうしないよっ!
飲み会行くの止めてもいーし!」
「別にそこまで…!人間関係も大事じゃん?
それに浮気は治らないってばあちゃんが昔からいつも言ってる。
だから俺も浮気してやろうかなって一瞬思ったけど、なんか張り合うのもバカらしくなって…。
俺、やっぱり恋愛…向いてないなって。」
「そんなこと…っ!」
「年の差で、海越えた遠距離で、真剣恋愛…
彼氏が有名人だからいらぬものまで情報入ってきて…こうやって振り回される…。
正直ツラい。
仕事もいろいろ覚えなきゃだし…。
…別れるのイヤならセフレに戻んない?」
「っ!!」
珊瑚の言葉に翔は息を飲んだ。
そして勢いのままに床に頭をつける。
「ちょっ!何して…っ!」
「SEXなしでいいので俺の恋人でいて下さいっ!!
お願いしますっ!!」
「……。」
「お願い…っ!
あんな事態招いたの俺だし、ちゃんと説明しなかったのも俺だし…、浮気したしてないじゃなくて…もう全部俺が悪いです…っ!
ごめんなさいっ!」
「…そこまで言うなら…翔のこと、信じてあげてもいーよ。」
「許してくれるの?」
「ん。
ね、そんなことしなくていーって…。
床、土足だから汚ねーよ…っ」
翔の手を引き珊瑚は苦笑した。
やっと恋人の笑う顔が見れて翔もホッとする。
立ち上がると珊瑚をキツく抱き締めた。
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