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遠距離恋愛編~2人の距離~(2)※微R18
次に目が覚めたのが昼で、翔は"あぁ、今日もLIVEだな…そろそろ起きるか…"と微睡みの中で考えていると、隣から視線を感じた。
じっと見つめていたのはもちろん恋人の珊瑚だ。
「起きてたの?
寝れた?」
「少し…。なんか身体が短時間で目覚めるようになっちゃって…(苦笑)
翔の寝顔眺めてた。」
「え、俺、変な顔してなかった?」
「平気。口開いてたけど(笑)
あの…さ、ごめん…。」
「何?
朝起こしたこと?
こっちこそごめんねっ!
合鍵渡すの忘れててさー!」
「うん…。まぁ、それもなんだけどさ…!」
「え、何改まって…!
やめて!怖いんだけど…っ!」
言いにくそうに切り出す珊瑚に、狼狽える翔…
毛布にくるまって聞きたくないアピールをしている。
「明後日……。」
珊瑚も一言しか言い出せなくて、それ故に翔はもしかして…と、飛び起きる。
「明後日…?
えっ?! もしかして…帰るのっ?!」
「ん。」
「そんなっ!
えっ、ウソだよね?
寝起きドッキリ?!
だってまだ買い物もしてないし、ほら、大阪LIVEの時に合流しようって!
俺、デートスポット兼撮影スポットになりそうなとこめちゃくちゃ調べて…っ!」
「ごめん…。」
本当に申し訳なさそうに項垂れる珊瑚を前に翔はそれ以上何も言えなかった。
「っ!
…仕事?だよね?」
「うん…。
先輩、酔っぱらって階段から落ちたら足折れたらしくて…」
「後輩の珊瑚がカバーしなきゃって感じ?
…あれ?それ俺も似たようなことあったな…。
確か去年…(苦笑)ヤベー!!回ってきた?(苦笑)」
ショック過ぎたのか思わず笑い出す翔。
そして珊瑚がこれ以上罪悪感を抱かないように明るく話を続けた。
「今度はどこ?」
「フランス」
「いいねー!
えっとフランス?
フランスパン?と、エッフェル塔?」
「うん。まぁ、そんな感じ?(笑)」
実際はフランスの田舎風景を撮る予定らしいが、珊瑚は日本人らしい翔のフランスへのイメージに笑った。
「うー、珊瑚ーっ!」
「何?
…する?」
「今からだと遅刻するかも…!
…さっき寝てないでしとけば良かったっ!
ってか、今日ってLIVE見に来てくれる?
川崎なんだけど…!近いし…」
「…いーよ。
ここ壁薄そうだし、LIVE終わったらホテルいく?」
「いいねっ!
金曜だから予約しとこ。」
「明日、移動日だっけ…?」
「そう…。夕方から向かう感じ…。
あー、明日凪たち帰ってくる日か…!
紅葉くんと過ごす?」
「出来ればそうしたいかな…。」
「うん、分かった。
…いいよ。」
「ごめん…!」
「いーよ。ギリギリまで一緒にいたいってワガママ言っても、俺行くの九州だし…!
南下した後にまた成田向かうんじゃ珊瑚が大変だし…。」
「移動は…まぁ、いいんだけど…。
正直、俺も気持ちの切り替えする時間が必要かなと…。
翔と一緒にいると、楽しいけど、離れるのが…やっぱ辛いし。
本当はもっと一緒にいられたのにって思うだろうから…」
「珊瑚…!
…やっぱさ…。今しよ?」
「…遅刻するよ?」
「怒られとくから大丈夫(笑)
あ、もちろん、ちゃんとLIVEはやる!」
「(笑)
じゃあ…口でいい?
夜は…いい感じのホテルでゆっくりヤろ?」
「っ!喜んでっ!」
結局、ベッドでイチャイチャとキスを繰り返して「やべっ!遅刻したら飲み代持ちだった!!」という翔の叫びに笑い合い、急いで出掛ける支度をした。
会場へ着くと翔は遠慮がちな珊瑚にバックステージパスを用意して、楽屋へ連れて行く。
「ごめん、珊瑚!
俺すぐいかないと…!
適当に時間潰してて。
飲み物とかお菓子とかゲームもあるから…」
珊瑚の額にキスを落とすとスタッフや関係者への挨拶や機材の確認へ向かう翔。
ポツンと残された珊瑚は手持ちぶさたにとりあえず椅子に座ってスマホを眺めた。
「あ…!」
「…? あぁ…、この前の…!」
ボーカルAoiの恋人?
小柄、細身、色白の青年 ユキと会った珊瑚…。
どうやらAoiが忘れたカラコンを届けにきたらしい…。走ってきたのか額に汗をかくユキに飲み物を勧めた。
「コーヒーかお茶かコーラ、水…どれにする?」
「もらっていいのかな?」
「大丈夫だと思う…。」
「じゃあお水にする…!」
「…大丈夫?
顔色悪い…!
座んなよ。
まぁ、俺の楽屋じゃないけど…(苦笑)」
「あ…。うん。
久しぶりに走ったから…。休めば大丈夫。
そういえば…あの白い子猫どうしてるの?」
「あー…実は…」
子猫が亡くなってしまったことを話すと、驚きの表情を見せたあと、涙を溢すユキ。
さすがに珊瑚も狼狽えた。
「ちょっ!待って!
俺が泣かせたみたいじゃん…!
そんなあの猫気に入ってた?
ごめんね…?
えっと……!
写真ならあるけど見る?」
「うん…。」
珊瑚の撮った写真をじっと見つめるユキ…
画面越しに子猫に触れて再び瞳を滲ませていた。
「生まれつき身体が弱かったみたいで…
精一杯世話したんだけど…。…ごめんな。」
珊瑚の謝罪に首を振るユキ
「可愛い。どれもすごくいい写真だね。
みんな幸せそうだよ。」
「…ありがと。
一応…プロ目指してるから…」
「そうなんだ!
すごいね!
えっと、じゃあ…この写真買える?
僕あんまりお金持ってないんだけど…譲ってもらいたい。」
「いーよ。
これは趣味の写真だからお金とかいらないし。
転売しない約束なら今すぐデータであげる。」
「本当に?!
ありがとう…!
えっと、じゃあ連絡先いい…?」
「もちろん。
あ!俺、日本語喋れるんだけど、字は簡単なのしか読めないんだ…!」
「僕、英文書けるよ。喋れないけど…」
「じゃあ…英語でLINEして?
Aoiに見られても英語ならあいつ読めないでしょ?(笑)」
珊瑚の台詞に2人は顔を見合わせて笑った。
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