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遠距離恋愛編~終止符~ (3)

そして… 3月 「10年間本当にありがとうございましたっ! すっごい幸せだったー! LiT Jは俺の理想で、君たちが俺の一番でした。」 翔はLiT Jのラストステージでファンに向かってそう叫んだ。 「俺はいなくなるけど、LiT Jは続くから… この4人をよろしくね。面倒見てやって(笑) えっとね…。 脱退の理由を10年の節目を期に新しいことにチャレンジしたいって伝えたんだけど…うん、それは嘘ではないんだけど、まだ具体的な事は何も決まってなくて…。 俺、何がしたいのかって…… こんな事言ったらみんなに怒られるかもしれないし、呆れられるかもしれないけど、 でもやっぱりみんなには言っておくね? …実は恋人と一緒に暮らそうと思って…。」 翔の告白に会場内のファンは驚きの声とヒューヒューと口笛が聞こえた。 「俺の恋人のこと…みんな知ってるよね?(笑) 今や世界で活躍する世界一キレイでエロ可愛いカメラマンなんだけど… ずっと遠距離で…俺たちが一緒に暮らすとなると海外に住むことになるからLiT Jを続けることが出来なくて…。 本当にこんな身勝手な理由で申し訳ない…っ! でも… メンバーは、こんな俺を許してくれて、応援してくれるって言うから…っ! 本当にごめん…。」 涙声で謝罪する翔にメンバーが寄り添う。 「ま、寿退社だから仕方ないよなー。」とボーカルのAoiが肩を抱く。 「翔の門出だから!みんな応援しよっ!」ギターのゆーじは涙を拭きながら笑顔でそう言った。 「あのさ、まだプロポーズしてないって聞いてるんだけど、まずはそこ…大丈夫なの??(苦笑)」 リーダーを任されることになったマツが心配そうに聞いた。 「あっ! そーだ! まだなんだよね! みんな内緒にして! SNSとかで言わないでね!」 「え? 結果次第では…戻ってくる可能性ある?」ギターのサスケが冷静に聞いた。 「マジでっ?! さっきの俺の涙返してくれる?!」ゆーじは驚きのあまり逆ギレだ。 「…縁起でもないこと言わないで。 俺、本気だって。 OKもらうまで日本に帰らないから。 つい1週間前もさ、11年振りに実家帰ってそう言ったらめっちゃ怒られたけどね(苦笑)」 「そりゃあそうだよ。 19の時だっけ? 突然バンドやるから学校辞めます、で、 ろくに連絡もせず11年経って、 好きな子追っかけて海外行くんでバンド辞めます、じゃあ…。 でしょ?(笑)」 Aoiの補足にみんな苦笑していた。 「さすがに親キレてたわ(笑) はぁー、最後までメンバーの愛が優しい…。 えっと… 結果は後日、何らかの形で報告するね?(苦笑) とりあえず俺、頑張るよ。 えっと… 全然締まらない感じでごめんー! でもみんなが笑ってくれて良かった! 最後に…どうか新しいドラマーを温かく迎えて下さい。そして、これからのLiT Jを君たちに託します。 10年間…本当に…ありがとうございましたっ!!」 最後はマイクを通さず、ステージから大声でそう叫んだ翔は男泣きをしながら深々と頭を下げ、最後はぐちゃぐちゃの笑顔でステージにも頭を下げてLiT Jを後にした。 ラストLIVEから1週間後にはもうドイツに旅立ったので、本当に凄まじい男だ。 そんな彼の現在は…? 珊瑚のアパートに着いた瞬間、玄関口で怒鳴られていた、 「おいっ! 何だよこの大量の荷物はっ! 俺がいる場所がねーだろ?! 部屋の狭さとこのアパートのボロさ考えろよ! 床が抜ける!」 「あ、ごめんー。 これでも絞ったんだよ?」 「ったく…! 中身知らねーけど、とにかく段ボールが邪魔だって… 何泊するつもりだよ…」 「えっと… そのことなんですけどね、珊瑚くん。」 「何? 俺はこれから仕事だからな。 帰ってくるのは三日後…多分。 それまでに通り道くらいは確保しとけよ?」 3ヶ月振りの再会で会うなり怒鳴られて、でも一応…珊瑚は頬にキスしてくれた。 胸ぐら掴まれてだけど… 「あ、はい。 え、もう仕事行くの? 少々お待ちを…!」 「さっきからその喋り方何なの? キャラ変なんだけど?」 「実はお願いがあって…」 緊張した様子の翔は深呼吸をすると、アパートの玄関口に勢いよく頭をつけて土下座をした。 さすがに驚く珊瑚… 「珊瑚…っ! 俺にこの国の永住権を与えて下さいっ!」 「…ハァー?」 これが彼のプロポーズだったらしい。 因みに後々使えるかと思い、チャイムを鳴らすところからスマホを三脚にセットして撮影済み。 その後、珊瑚に今回は一緒にここで暮らすためにドイツに来たことを説明する翔。 永住する覚悟で来たが、無職、無資格の翔に取れそうなビザが配偶者ビザしかないので、パートナー申請をして欲しいと泣きついたのだ。 「バンド辞めて新しいことするっては聞いてたけど…まさかこれのため?」 「言ったら反対するかと思って…押し掛けてきちゃった!へへ…っ!」 「…本気でバカなの?」 「えー? でももうさ、帰る飛行機の時間も次いつ逢えるかも気にしなくていーんだよ? 遠距離恋愛は終わりっ!」 「…終わり…? こんな、いきなり?」 「約束したでしょ? あと2年って… 一緒に暮らそ?」 翔は優しくそう言うと、幸せそうに微笑んだ。 「…っ!! まさか…、こーいうことかよ…っ!」 「珊瑚ーっ!」 「…待て。 バンド辞めたんだろ? 確か…出逢った時は俺のことをヒモにしたいみたいに言ってたけど…そんなあんたが、俺のヒモになりたいってこと?」 「仕事はちゃんと探すよっ! 家のことも何でもやる!」 ドイツ語も英語もほんの少ししか話せない翔にすぐに仕事が見つかる可能性はとても低い…。 「…頭痛い…。」 「大変! じゃあ今日の仕事は休んで、一緒にベッドに行こう! これからは病気の時も怪我した時も、すぐ駆け付けられるからね!」 「……離せっ! 俺は仕事に行く!!」 「養ってくれるんだっ! うん、じゃあ帰ってきたらラブラブしよー!」 そんな台詞にゲシっと長い足で蹴られた翔は、半ば強引に彼を引き止めてキスをした。 それでも珊瑚の頬がほんのり赤く染まり、微かに笑っていたのを見てホッとしたのだった。 End

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