3 / 6
櫂「薔薇摘む人」→圭吾「有罪」
プリントに丸を付け終わり、点数を書いて家庭教師先の教え子、櫂くんへと渡す。
採点の間そわそわしていた櫂くんは、点数を見た途端椅子がひっくり返る勢いで飛び上がって喜んだ。
「やった!」
慌てて椅子を直してやり、人差し指を立ててしーっしーっと落ち着くように促す。櫂くんは普段大人しい子で、声を荒げたりもしないしこちらの言うこともよく聞く子なので、この反応は意外だった。
けれど、プリントには〇ばかりで、×がないのを見ると喜びたくもなる。
「この通り解いてたら、今期の期末はいいとこ行ってるよ!」
そう言ってぱちんとウィンクすると、櫂くんは急に恥ずかしくなったのか、真っ赤な顔してもじもじと椅子に座った。
こほん、と咳払いをして、努めて落ち着こうとしているのが可愛らしくて、こちらもにやにやが止められない。
「期末!点数よかったら旅行行くことになってて!」
「ええ!そうなんだ!絶対行けるよ!頑張ったなぁ!」
嬉しそうに照れる姿は初めてで、いつもちょっと大人し目で、一歩引いたように接してくる子だったから新鮮だった。
きらきらとした目は年相応で、ほっとした。
「先生は旅行とかは?」
「えー?」
「それペアリングでしょ?」
「 っ!」
咄嗟に隠すがそんなのもう遅いってわかっている。
「見た?」
「見ました」
照れくさくて、指輪をした手を隠したままこくんと頷き、「恋人にもらったんだ」とそっと耳打ちした。
「おー……大人……」
「櫂くんも好きな人としたらいいよ」
「照れくさい かな」
その反応も分からないでもないので、そうだよね と笑い返す。
でも、こうやって離れていても相手と繋がっていられるんだと言う印のようで……
指を見る度に、秋良への思いが募るのを感じた。
END.
ともだちにシェアしよう!