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となりのナハトくん・4
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「フレッシュサマーありますよ! 皆さん、お一つ貰ってって欲しいです!」
夏の売上げを少しでも伸ばそうと、衛さんが考えた「フレッシュサマーフェア」。イチゴにオレンジ、白桃と、みずみずしいフルーツをふんだんに使った見た目にも爽やかな、期間限定ケーキだ。
「味見してください! フルーツのケーキとっても美味しいです! キカンゲンテイですから、なくなったら今日はもう買えないですよ!」
ヘルムートは店頭で一口サイズにカットしたケーキの盆を持ち、道行く人達に笑いかけ叫んでいる。近所のおばちゃんやマダム達を中心に段々と人が集まり始め、試食用のケーキが飛ぶようになくなって行く。
「千代晴、次の味見のケーキ切ってください!」
「おう、待ってな!」
「フレッシュサマーありますよー!」
今日は俺以外のアルバイトの人達も二人出勤していて、店内は珍しく大忙しだ。フレッシュサマーのついでに似たようなフルーツ系のケーキも売れているし、流石は衛さんの「限定新作」パワー。
「ヘルムート君の声がよく通るから、遠くからも人が集まってくれたみたいだね」
同じ女子大に通う仲良しスタッフの二人・シホとカホが、今も店頭で叫ぶヘルムートを見て微笑んでいる。
「凄い真面目だよね。あんな大きい声、私は出せないもん」
「でも、炎天下で一生懸命呼び込みしてくれてるけど……熱中症とか大丈夫かな?」
「………」
手が空いた隙を見て店頭へ行き、盆を片手に叫んでいるヘルムートの肩を叩く。
「あ、千代晴っ! 休憩ですか?」
「いや、休憩はもう少し後だ。お前、そんな張り切ってて大丈夫か? 具合悪くなる前に交代してやるぞ」
ニヒヒと笑うヘルムートが、「頑張った証拠です!」と汗を拭いたハンカチをポケットに入れた。
「おれ平気ですっ。クーヘンの夏と比べたら、地球の夏ぜんぜん暑くないです! それにお仕事とっても楽しい、お客さんもいい人達です!」
「………」
「千代晴。おれがいっぱいお客さん呼びますから、衛さんのケーキいっぱい売ってください!」
「……ん。よっしゃ、任せろ!」
その屈託のない笑顔に、俺もニヒヒと笑ってやった。
「仕事終わったらソッコーで飯だな。ビールも飲みてえし、焼き鳥でも買って帰ろうぜ」
「やきとり。食べたいです! あ、あ……首が痒い……」
「虫除けスプレーもしねえでずっと外にいるから、蚊に喰われたんだろ。かくと痛くなるから我慢しろ」
「が、我慢します……!」
宇宙人の血を吸った蚊からはどんな子供が生まれるのだろう。
そんなことを考えつつもヘルムートが呼び込みを始めてから順調にストック分のケーキが減って行き、夕方には無事今日の分は完売となった。
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