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手のひらの天使・3

 しがみついてくるヘルムートの頬が赤くなっているのは、俺にねだっている証拠だ。単純な仕事疲れとタマゴが気になってここ最近はあまりセックスしていなかったから、今夜辺り俺から誘おうと思っていたところだった。 「久し振りだな、つやつやクラゲ肌」 「ひゃ、あっ……、あはは! くすぐったいです千代晴!」 「すぐ良くなるだろ?」 「……あ、ん……。あ、ほんとです……」  二十歳目前の男とは思えない、柔らかく艶やかな肌。愛撫していると一瞬、いたいけな子供に悪戯しているような気分にさえなる。  傷一つ付かないように、丁寧に愛撫を重ねて行く。ヘルムートの薄い腹に舌を這わせながら下着をゆっくりと下ろしたその時、俺は妙なことを思ってつい笑いそうになってしまった。  ――この感じ、まるでケーキのようだ。  綺麗なデコレーションが施された小さなケーキを、なるべく時間をかけて味わおうとする時。  透明フィルムにクリームが付いてしまうのが勿体なくて、なるべくそっと剥がそうとする時。 「ヘルはショートケーキだな」 「え……? ほんとですか……?」  恐らく俺の言葉の意味は伝わっていない。それでもヘルムートは嬉しそうにはにかんで、俺の愛撫に心地好さそうな声をあげてくれた。 「あっ、うぅ……千代晴……」 「気持ちいいか?」 「そこ、舐められると……ぞくぞくして……」  ヘルムートのペニスを口の中で蹂躙していると、俺自身も熱くなってくるのが分かる。自分で扱きながら更に舌を絡ませれば、ヘルムートが腰を浮かせてその先をねだってきた。 「ち、千代晴の……欲しいです……」  何度も体に教え込んできたお陰か、ヘルムートは確実にセックスの快楽を覚えたようだ。して欲しいことはちゃんと口に出して言うし、気持ち良ければ恥ずかしがらずに伝えてくれる。  下品とか、ビッチとか、そういうのとはまた違う。純粋に「良いものは良い」と俺だけに教えてくれているのだ。  俺は一度体を起こし、ヘルムートの両脚を持ち上げてから腰を入れた。すっかり俺の形を覚えたヘルムートのそこは、少し押し当てただけでねだるように吸い付いてくる。 「……ん」 「はぁ、……久し振りだからマジで……」 「気持ちいいです、千代晴……」 「い、挿れた瞬間にイくかも……」  こんな情けない台詞も、ヘルムートなら笑ってくれる。  俺は慎重にヘルムートの中を押し開きながら、上体を伏せて何度もその柔らかい頬にキスをした。

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