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手のひらの天使・4
「あっ、ん……! あぁ……!」
「久し振りだろ。痛くねえか」
「平気です、……千代晴の熱くて、大きくて……大好きです……」
本人に煽っている自覚がないのが厄介であり、また最高に嬉しくもある。俺はヘルムートの華奢な腰を支え、一度奥深くまで挿入しようと腰を進めた。
そうすることでヘルムートの背中が反り、腰が浮く。中で俺のそれが締め付けられる。それは一瞬ヘルムートの電気が発生したのかと思ったほどの、強烈な刺激だった。
「あ、っふ……あぁっ……!」
腰を前後させて狭い内部を何度も擦りながら、涙を零して喘ぐヘルムートを見つめる。大きな地球色の瞳も俺を見上げていた。性的な高揚感もあるせいで、何だか視線で愛撫し合っているような気分になる。
「千代晴、あ、あぃ……愛して、ます……」
切れ切れに気持ちを口にしながら、ヘルムートが俺の方へ両手を伸ばした。
「俺も愛してるよ、ヘル。大好きだよ」
重なるように抱き合って、繋がったまま微笑み、キスをする――
寝室が青い光で包まれたのは、その時だった。
「えっ?」
ヘルムートが目を丸くさせ、俺もまた目を見開く。お互い顔を見合わせていたのは数舜で、すぐに俺達は「タマゴ」の方へと同時に視線を向けた。
水色の大きなタマゴが、殻の内側から青い光を発していた。柔らかく、だけど力強く、まるで部屋全体が海の中に沈んだかのような鮮やかな青さだ。産まれる――。瞬間的に理解して、俺は体を起こした。
「千代晴、タマゴがっ」
裸のままベッドから転がり落ちたヘルムートが床に膝をつき、ベッド横の棚の上に置いておいたタマゴに顔を近付けた。青い光に照らされたヘルムートの顔は笑っているような、焦っているような――とにかく興奮している様子で、俺もまたすぐに下着だけ穿いて慌ててベッドを降りた。
「う、産まれるのか……」
殻のてっぺんにヒビが入っている。小刻みにタマゴ全体が揺れている。
俺とヘルムートは強く手を握り合い、今しも殻を破って出て来ようとしている我が子に叫んだ。
「頑張れ、もう少しだぞ!」
「頑張ってください!」
てっぺんからヒビが広がって行き、ぱき、と小さな音をたてて殻の小さな破片が棚に落ちた。ぱきぱき、と続けて破片が落ちて行く。小さな穴から中の光が次々に漏れ、より一層強くなった青い光に、もうまともに目も開けていられない――。
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