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お見合いミッション発動 4
「この末っ子は女として扱ってもいい」という姑のお墨付きを貰って大喜びの御袋は女の子の服をとっかえひっかえ着せて、俺を着せ替え人形・ミサオちゃんに仕立て上げたって寸法だ。まさに格好のおもちゃ。
髪も長く伸ばして、リボンで結んだりなんかして、その格好で表に出たならば「なんて可愛いお嬢ちゃまなの」と声をかけられる始末。そんな時の御袋の嬉しそうな様子といったらなかった。三男が転じて長女、自慢の娘という存在だったわけだ。
しかし、成長するにつれ自我に目覚めた息子が女装はもちろん、稽古事の練習の要請にも応じなくなると、このままでは美佐緒がグレてしまうと案じた親父の助言によって、俺は女扱いの呪縛からなんとか逃れたのだが、いやはや、すっかり油断していた。御袋は諦めていなかったのだ、呪縛から逃れたと思ったのは俺の早合点だった。
「あら、諸悪の根源なんてイヤな言い方するのね。すぐそうやって口答えして、きっと聖爾さんもびっくりなさるわ、気をつけなきゃ」
「聖爾さんって……」
「だから、お見合いのお相手の豊城聖爾(ほうじょう せいじ)さん、ゆくゆくは豊城商事のあとを継ぐ御曹司よ。齢は二十二歳で、お金持ちだし頭もいいし、背が高くてとってもハンサムなんですって。そんな素敵な方とお会いできるなんて、なんてラッキーなの。美佐緒さん、くれぐれも嫌われないようにしてね」
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