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ああ、玉華殿 12
さっきの猪おどしが遠くに響く。花の香りが漂い、涼しげなせせらぎの音も聞こえる落ち着いた雰囲気の中で、呆気に取られて何も言い返せないまま、俺は聖爾さんの次の言葉を待っていた。
「……ゲイに目覚めたのはもちろん、君と出逢ってからです」
ピンクの着物を着た可愛い女の子の存在が何年経っても忘れられない聖爾さんはある時、父親に内緒で俺について調べ上げたところ、それが綾辻家長女ではなく三男だとわかってショックを受けた、と語った。
それでも信じられずに、俺の姿を覗き見るため、こっそりと学校まで来たという話。俺自身はまったく気づかなかったけど、それってまるでストーカーじゃねえか。
やがて中学に入学した俺の学生服姿を見た時、あの子が正真正銘、男であるのは疑いのない事実。きれいさっぱり忘れて気持ちを切り替えようと、彼はストーカー行為をやめ、勉強やスポーツに打ち込み、本物の女性を好きになろうとしたらしい。
ところが、その後関心を向ける相手は男ばかり。俺を見守り続けているうちに、すっかりゲイ体質になったというのだ。
「ゲイに目覚めるのは中学生から二十歳ぐらいまでが多いそうですし、僕もその範疇だったんですね。でも、誰を好きになっても、結局は君への想いに辿り着く。一方で、そんな不道徳が許されるはずはない、このままではいけないという気持ちもありました」
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