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ああ、玉華殿 15
この男、イギリスでいったい何を学んできたんだ?
唖然とする俺を前に「ちなみにオカマやニューハーフはトランスセクシュアルあるいはトランスジェンダーに分類される。自分の性に違和感を持つ人たちのことだよ」などと、御丁寧に講義してくれた。
「ああもう、わかったよ。とにかく俺はどれにも含まれない、それだけ」
聖爾さんはつくづくと俺の全身を眺め回して「じゃあ、なぜ、いつも女の格好なんかしているの? ただのトランスヴェスタイト(女装趣味)? それにしては年季が入っているよね」と訊いた。
「違う! これは全部御袋のせいだ。女扱いはこりごりだし、男と結婚なんか絶対にしない! 親父をいくら脅しても無駄だぜ、わかったなっ!」
すると、それまで穏やかな顔をしていた彼の様子が一変し、不敵な表情になった。
「ふうん。そこまで言うなら、こっちにも考えがあるけど……まあ、そう簡単にコトが運ぶなんて期待していなかったし、ハードルは高いほど燃えるものだしね」
声色までもが変わっている。びっくりした俺は「考え、って?」と鸚鵡返しに訊いた。
「いいから、せいぜい楽しみにしていてくれたまえ」
な、何なんだ、こいつ? もしかしてとんでもない悪党なのか? そう思えるほど、彼の態度は底知れぬ恐ろしさを感じさせ、俺をビビらせたが『この父にしてこの子あり』、茂伸氏のキャラクターからすれば、彼の変貌ぶりは十分考えられる。
「さて、今日のところはここまでかな。家の連中にはうまく言っておくから、そちらもよろしく頼むよ」
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