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マジかっけー! 応援団団長・土方誠 1
俺たちが松の間に戻ると、急用が出来たので帰る、美佐緒さんとはまたの機会に会う約束をしたとか何とか、適当な言い訳をした聖爾さんはその場を切り上げさせた。
再会を約束したということは美佐緒さんも聖爾が気に入ったようだ、とりあえず見合いは成功した、といいように解釈した豊城家の両親は安堵。また、俺の正体がバレることなく見合いが終わって、親父たちは胸を撫で下ろしていたようだが、安心しちゃあいけない。
聖爾さん本人が茶番劇の黒幕だった以上、俺の作戦はまったく通用せず、それどころかこのまま話がトントン拍子に進めば、彼の思惑通りに結婚させられる羽目になる。
結婚相手が男だと承知の上で、となれば、俺を本物の女に仕立てる手間は省けるし、親父たちとしては願ったり叶ったりだろうが、四面楚歌になってしまった俺にとっては、これから先の方がもっと問題なのだ。
ところが、聖爾さんは特に約束を強要するわけではなく、俺のケータイの番号を聞きだそうともせずに「じゃあ、またね。お姫様」とだけ言い残して去り、彼に対する不安を抱えながらも翌月曜日を迎えた俺はいつものように小田急線に乗り込んだ。
俺の通う私立神奈川理科大学は我が家と同じ川崎市内にあるため、自宅から楽勝で通学出来る。
御袋は例によって「フェイス女子大なんかどう?」などと持ちかけてきたが、見かけはともかく、生物学的にオスである俺が女子大に入れるはずがない、よく考えて欲しい。
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