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入部決定! 三曲同好会 2

 もしかしたらこいつも応援団なのかな? そう思った直後、その男が「ウォイッス!」とダミ声を出したため、驚いた俺は彼の視線の先を見た。まだ食堂に足を踏み入れてもいない、遥か彼方にこれまた黒い服の男。それが誰なのかわかるなんて、こいつ、日本野鳥の会にでも所属しているんじゃないのか。  ダミ声の男はどうやら応援団の一番下っぱ、つまり一年で、どんなに離れた場所でも先輩がいるとわかれば即、挨拶しなければならないという掟が彼らにはあると赤木から聞いていたけど、それって何だか大変そうだし、いきなり大声を聞かされる周りにも迷惑だ。  あっ、あれは土方さんだ! 挨拶を受けた黒服男、すなわち応援団の先輩が憧れの人だとわかったとたん、胸がドキドキしてきた。  土方さんは俺の横をすり抜け、下っぱクンに何やら話しかけたが、この団長を前にした彼の緊張が空気を介して伝わってくる。団員たちにとっては恐れ多い存在なのだ。  それにしても土方さんってば、間近で見るとますますカッコイイ。つい、うっとりと見惚れてしまう俺、すると、彼が一瞬こちらに視線を向けたような気がして、人の顔をジロジロ見ている礼儀知らずと思われたのではと、慌てて目を逸らした。  だが、知らないふりをしながらもドキドキがおさまらず、カレーも喉を通りそうにない。まだ何事かを話している土方さんに神経を集中、スプーンだけ動かしていたせいか、俺は自分の背後に近づいてきた人物に、まったく気づかずにいた。 「やあ、美佐緒さん。日曜日はどうも」

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